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第32話 貴様、いつか覚えてろよ! ってセリフは小物臭がハンパないな
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「うがああああああ!!」
腹に強烈な一撃を食らったトラビスは、豪快に吹き飛ばされていく。
――ドサッ。
ちょうどニックの隣で仰向けになって倒れた彼は、そのままピクリとも動かなくなった。
ニックのひたいから冷たい汗が垂れている。
「き、君はいったい何者なんだ……?」
「互いのことはどうでもいいんじゃなかったのか? ここで大人しく引き下がるか、それともあくまで強引に押し通るつもりか、どっちなんだ?」
「くっ……」
「あ、言っておくが、そこにいるサンたちも俺と同じくらい強いからな。オートテイムっていう便利なスキルもある。おまえ一人でどうにかなる相手だといいんだが、どうだろう?」
「貴様ぁぁぁ……!」
ニックはしばらく悔しそうに俺を睨みつけていたが、どうにもならないのを察したようだ。
「いつか覚えてろよ!!」
と、小物臭がハンパない捨て台詞を吐いて、俺たちに背を向けた。
あ、でもこのまま帰ってもらったら困るんだよな。
俺は慌てて声をかけたのだった。
「待て待て、そこの腐った死体は持って帰ってくれ」
こうして望まぬ再会は、事なきを得て終わった。
もう、二度とくるな、とまじで思う。
後で塩をまいておくか。
いやいや、塩は貴重だからやめておこう。
◇◇
「ご主人様! ご無事で何よりです」
「ご主人さまぁ! かっちょいいー!!」
「……素敵だった」
「ピート! すっごーい!」
ルナ、エアリス、カーリー、ピピの4人が駆け寄ってきて、口々に褒めてきた。
みな目がキラキラ輝いている。
表裏なく、純粋な気持ちで褒めてもらえると、すごく嬉しいものなんだなとあらためて気づいた。
……が、サンだけはちょっと離れたところで、頬を膨らませて恨めしそうな目を俺に向けている。
俺に対して怒っているみたいだ。
でも彼女に怒られる理由なんてあったけ?
「サン?」
「……どうしてですか?」
ふいっと顔をそらした彼女の目に涙がたまっている。
「いや、何がだ?」
「どうして私を使役してくれなかったんですか!?」
サンがぐいっと身を乗り出して大きな声をあげた。
「もし……もしトラビスが、私たちの知っているよりもずっと強くなってたら、ピートさんはやられてたかもしれないんですよ!!」
彼女は俺のことが心配でたまらなかったのか。
いままで戦闘の時はいつも彼女が横か前に立って、俺を守ってくれてたんだもんな。
しかし今の俺はサンよりも強くなってしまった。
だからむしろ俺がサンを守らなきゃ、って気持ちが強くて、戦闘から彼女を遠ざけたのだ。
でもそれがサンにとってはショックだったのだろうな。
――ピートさん。心配しないでください。私があなたを守りますから。
モンスターハウスで俺を救ってくれた時にかけられた言葉が脳裏によみがえる。
サンにとって俺を守ることが、生きる意味なのだ。生きがいなのだ。
それを俺は何も考えずに奪おうとしていたことに、今さらになって気づかされた。
「ごめんよ。サン」
「私……私、ピートさんの身に何かあったら……」
それ以上言葉が出てこないサンを、俺は優しく抱きしめた。
「うああああああ!!」
ぐりぐりと顔を俺の胸に押しつけながら泣きじゃくるサン。
その様子に胸がキュンと締め付けられる。
これからはサンとともに戦おう。
いや、彼女だけじゃないな。
ルナ、エアリス、カーリー、それからピピ、ガイとコツ。
仲間になってくれたみんなとともに戦うんだ。
そんな風に決意を固めた俺は、サンが泣き止むまで、そっと背中をなで続けたのだった。
腹に強烈な一撃を食らったトラビスは、豪快に吹き飛ばされていく。
――ドサッ。
ちょうどニックの隣で仰向けになって倒れた彼は、そのままピクリとも動かなくなった。
ニックのひたいから冷たい汗が垂れている。
「き、君はいったい何者なんだ……?」
「互いのことはどうでもいいんじゃなかったのか? ここで大人しく引き下がるか、それともあくまで強引に押し通るつもりか、どっちなんだ?」
「くっ……」
「あ、言っておくが、そこにいるサンたちも俺と同じくらい強いからな。オートテイムっていう便利なスキルもある。おまえ一人でどうにかなる相手だといいんだが、どうだろう?」
「貴様ぁぁぁ……!」
ニックはしばらく悔しそうに俺を睨みつけていたが、どうにもならないのを察したようだ。
「いつか覚えてろよ!!」
と、小物臭がハンパない捨て台詞を吐いて、俺たちに背を向けた。
あ、でもこのまま帰ってもらったら困るんだよな。
俺は慌てて声をかけたのだった。
「待て待て、そこの腐った死体は持って帰ってくれ」
こうして望まぬ再会は、事なきを得て終わった。
もう、二度とくるな、とまじで思う。
後で塩をまいておくか。
いやいや、塩は貴重だからやめておこう。
◇◇
「ご主人様! ご無事で何よりです」
「ご主人さまぁ! かっちょいいー!!」
「……素敵だった」
「ピート! すっごーい!」
ルナ、エアリス、カーリー、ピピの4人が駆け寄ってきて、口々に褒めてきた。
みな目がキラキラ輝いている。
表裏なく、純粋な気持ちで褒めてもらえると、すごく嬉しいものなんだなとあらためて気づいた。
……が、サンだけはちょっと離れたところで、頬を膨らませて恨めしそうな目を俺に向けている。
俺に対して怒っているみたいだ。
でも彼女に怒られる理由なんてあったけ?
「サン?」
「……どうしてですか?」
ふいっと顔をそらした彼女の目に涙がたまっている。
「いや、何がだ?」
「どうして私を使役してくれなかったんですか!?」
サンがぐいっと身を乗り出して大きな声をあげた。
「もし……もしトラビスが、私たちの知っているよりもずっと強くなってたら、ピートさんはやられてたかもしれないんですよ!!」
彼女は俺のことが心配でたまらなかったのか。
いままで戦闘の時はいつも彼女が横か前に立って、俺を守ってくれてたんだもんな。
しかし今の俺はサンよりも強くなってしまった。
だからむしろ俺がサンを守らなきゃ、って気持ちが強くて、戦闘から彼女を遠ざけたのだ。
でもそれがサンにとってはショックだったのだろうな。
――ピートさん。心配しないでください。私があなたを守りますから。
モンスターハウスで俺を救ってくれた時にかけられた言葉が脳裏によみがえる。
サンにとって俺を守ることが、生きる意味なのだ。生きがいなのだ。
それを俺は何も考えずに奪おうとしていたことに、今さらになって気づかされた。
「ごめんよ。サン」
「私……私、ピートさんの身に何かあったら……」
それ以上言葉が出てこないサンを、俺は優しく抱きしめた。
「うああああああ!!」
ぐりぐりと顔を俺の胸に押しつけながら泣きじゃくるサン。
その様子に胸がキュンと締め付けられる。
これからはサンとともに戦おう。
いや、彼女だけじゃないな。
ルナ、エアリス、カーリー、それからピピ、ガイとコツ。
仲間になってくれたみんなとともに戦うんだ。
そんな風に決意を固めた俺は、サンが泣き止むまで、そっと背中をなで続けたのだった。
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