上 下
23 / 88

第23話 ピートさん、今夜は私と同じベッドで寝ませんか?

しおりを挟む
◇◇

「ふぃー!! くったぁ!」
「美味しかったです!」

 食事を終えたサンたち。みな幸せそうに目をとろんとさせている。
 しかしよく食べるなぁ……。
 でかいイノシシ1頭をあっという間にたいらげたうえに、保存用にとってあったドラゴンの燻製まで『別腹』とか言って全部食っちゃうんだもんな。
 こりゃ、明日からの狩りは気合いを入れて取り掛からないといけないな。

「おなかいっぱいでねむく……むにゃむにゃ」

 ピピはこてんと横になったかと思うと、もう小さな寝息を立てはじめている。

「ピートさん、どうしましょう?」
「叩き起こして追い出すわけにもいかないしな。今日は俺のベッドで寝かせよう」
「ピートさんはどうするんです?」
「あ、俺? そこらへんで適当に横になるから平気だよ」
「で、でしたら、あの……」

 サンが続きを言いづらそうにもじもじしている。

「ん? どうした? 顔がリンゴみたいに真っ赤だぞ。熱でもあるのか?」
「ち、違います! 私はただ……」
「ただ?」
「……ピートさん、私たちのサイズにあわせて大きなベッドを作ってくれたでしょ?」

 そう言われれば確かにそうだったな。
 ゴーレムは大人の男性2人分くらいの大きさだからな。
 ベッドもキングサイズじゃないと、横になった時に体がはみ出てしまう。
 と言っても、ゴーレムは立って寝る習性があるから、サンたちは一度もベッドを使ったことがないと聞いていたが……。

「それがどうしたんだ?」
「だ、だから……。あの、ええっとね。い、今なら2人で1つのベッドでも平気かなって……」
「えっ……。それってまさか……」

 同じベッドで一緒に寝ようってこと……?
 ゴクリと唾を飲み込み、サンを見つめる。
 ゴツゴツしたゴーレムだった時はまったく意識してなかったけど、サンは女の子なんだよな。
 彼女が人間の姿に変わった今、同じ屋根の下で同年代の女の子と暮らしていることが、よりリアリティをもって感じられ、胸がドキドキしてきた。

「ピートさん……。あの……だから……」

 あらためてサンを見つめる。
 ほどよい弾力のありそうな胸やお尻、すらっとした足、やせすぎでもなく太っているとも言えない絶妙な丸みを帯びた体つき――。
 もし彼女と並んで寝たら……思わずゴクリと唾を飲み込む。
 ……と、サンと目が合った瞬間。

「もうっ! それ以上は言わせないでくださいっ!」

 サンが顔を隠しながら俺の肩をポンと軽く押した。
 ほんと軽くだよ。
 それこそ仲の良い友達に頼み事をした際に「頼んだよ」って言いながら肩に手を乗せるみたいな、それくらいのノリだったのに――。

「うああああ!!」

 ふわりと体が浮いたかと思うと、一気に壁際まで吹っ飛ばされたのだ。

 ――ドォォン!!

 壁に打ち付けられ、後頭部をしこたま打つ。

「ピートさん!!」

 サンの慌てる声が遠くに聞こえる。
 おかげでよく分かったよ。
 人間の姿に変わってもゴーレムの頃とステータスは変わらないんだな……ガクッ。 
 
 

 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

身バレしないように奴隷少女を買ってダンジョン配信させるが全部バレて俺がバズる

ぐうのすけ
ファンタジー
呪いを受けて冒険者を休業した俺は閃いた。 安い少女奴隷を購入し冒険者としてダンジョンに送り込みその様子を配信する。 そう、数年で美女になるであろう奴隷は配信で人気が出るはずだ。 もしそうならなくともダンジョンで魔物を狩らせれば稼ぎになる。 俺は偽装の仮面を持っている。 この魔道具があれば顔の認識を阻害し更に女の声に変える事が出来る。 身バレ対策しつつ収入を得られる。 だが現実は違った。 「ご主人様は男の人の匂いがします」 「こいつ面倒見良すぎじゃねwwwお母さんかよwwww」 俺の性別がバレ、身バレし、更には俺が金に困っていない事もバレて元英雄な事もバレた。 面倒見が良いためお母さんと呼ばれてネタにされるようになった。 おかしい、俺はそこまで配信していないのに奴隷より登録者数が伸びている。 思っていたのと違う! 俺の計画は破綻しバズっていく。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!

ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。 なのに突然のパーティークビ宣言!! 確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。 補助魔法師だ。 俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。 足手まといだから今日でパーティーはクビ?? そんな理由認められない!!! 俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな?? 分かってるのか? 俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!! ファンタジー初心者です。 温かい目で見てください(*'▽'*) 一万文字以下の短編の予定です!

大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います

騙道みりあ
ファンタジー
 魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。  その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。  仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。  なので、全員殺すことにした。  1話完結ですが、続編も考えています。

召喚アラサー女~ 自由に生きています!

マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。 牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子 信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。 初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった *** 異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います

処理中です...