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第1章 早速追われる!なぜならバグだもの

幕間 シェリー

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ごきげんよう、シェリーかしら。

私は、普通の村の普通の家に生まれた普通の女の子。

でも、今年で10歳だから、もう立派なレディかしら。

私の好きな事は、本を読むこと。
好きなじゃんるは、王子さまとお姫さまが出てくる、ふぁんたじーなやつね。

そんなお姫さまに憧れて、色々とお勉強中なの。

ぬいぐるみ(あいぼう)を相手に、その日もダンスの練習をしていたのだけど、
一通のお手紙が届いたの。

私のパパとママ宛てのお手紙だったのだけど、
立派な封筒がとても印象的で、なぜか覚えていたのよ。

どんな内容だかは分からないけど、読んだ瞬間、ママが自分の顔を覆っていたわ。
肩も震えていて、パパが抱きしめてたの。
とっても不思議な光景だったかしら。


それからしばらくして、ママが私に「送り人」に私がスカウトされたって教えてくれたわ!
とっても名誉な事だって、パパも言ってくれたの!

でも、ママが少し哀しい顔をするのはなぜかしら?

私が家を出るまでの1週間は夢のようだったわ。

豪勢な食事に、あたらしいぬいぐるみ、綺麗なお洋服――

まるで一生分のプレゼントを貰ったみたい。
そんなにすごいことなのね!送り人になるって。

でも、ママ…
どうして、時折哀しい顔するの?
どうして、時々泣いちゃうの?


いよいよ出発の時――

パパとママだけじゃなくて、街の多くの人が私を見送りにきてくれたわ。

ママは良く寝られなかったみたいで、あまり顔色が良くないの。
娘の晴れ舞台なのに、失礼しちゃうわ。

パパとママにお別れのキスをして、私は街を後にしたの。

◆◆

「シェリー…行っちゃったわね…」
「ああ、そして、もうすぐ僕らの記憶からも行ってしまうんだね…」

シェリーの母親が膝から崩れ落ちる。

娘を死地へと送り届けるという、あまりに残酷な行為の重さに耐えきれなくなったように…

◆◆

私が最初に送り届ける方は、ミーナお姉さまから聞いた印象とは、全然違ってましたわ!

なんてやる気のない御仁なのかしら!?

折角の私の晴れ舞台、お仕事なんだもん!
私のプライドにかけて、「穏やかに」この世界から送ってみせますわ!

◆◆

その御仁は、随分と元気を取り戻していただいたようですわ。
流石私ね。お姫さまになる以上は、みなに希望を与えられなくっちゃ。

それにしても、この御仁とは、話が合って、楽しい。

出来れば、この先もずっとおしゃべりしていたい気持ちになる。
でもダメ!この御仁を無事に送り届けるのが、私のお仕事なのかしら!

…でも、それまでの間は、楽しい気分でもバチは当たらないわよね?

ああ、私にもお兄ちゃんがいたら、こんな感じだったのかしら…

◆◆

怖い!怖い!怖い!

なんでこんな目に合わないといけないのかしら?

私はいつも良い子にしてたのに、どうして殺されなければならないの?

もう走れない…もうダメかしら…

誰か――王子さま!私を助けて!


ガシッ!


――私、抱きしめられてる…

ああ、王子さまが助けに来てくれたのね…

と思って目を開けたら、お兄ちゃんじゃない…つまんないの。

でも、もしかしたら、お兄ちゃんが、本当は王子さまだったりして…?

ううん、それは勘違いかしら。

だって、お兄ちゃん、すごく弱いもの。

◆◆

――森を抜けた…
絶対に無理だと思ってたのよ。
絶対に死ぬんだと思ってたのよ。

それなのに、私は生きている。

お兄ちゃんを信じたら、
お兄ちゃんのおかげで、
私は生き延びた。

でも、お兄ちゃんがいない。

森を出たら、また会おうって約束したのに…

お兄ちゃんと出会って、まだ少ししかしてないのに、
お兄ちゃんは私との約束を何度破っただろう…

全く失礼しちゃうわ!
私は嘘つきが、一番嫌いなのよ!

でも、その嘘つきに会いたくて仕方ない。

森に戻れば、会えるかしら…?

そんな事を考えていたの…


バシャッ!


泥で真黒になった、男が森から転がって出てきた。

泥だらけでボロボロで汚らしかったわ。

でも、私は迷わず、その男に飛びついたの!

だって、その男は―――私の王子さまだから!


「おにいちゃ~~~ん!」

◆◆

私はこの日、お兄ちゃんと王子さまと、いっぺんに会えたの。

色々あって、大変だったけど、とってもハッピーだわ!
流石、私は幸運に恵まれているわね!




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