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第3章
マタ王国の内戦18
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「農民のみな!もう安全だ!山から降りてくるがいい!共にこの喜びを分かち合おうではないか!」
俺の魔法に包まれた国王の言葉は、裏山の隅にまで届く。
ワァァァ!!
農民たちは大歓声を上げ喜びを露わにすると、雪崩のように山から下りてきた。
押し寄せる歓喜の波。
それを両手を広げ受け入れる姿勢の兵士たち。
さらに…
ウワァァァァ!!
俺の背後から聞こえる歓喜の雄叫び。
商人たちが、我れ先へと必死に走ってくるのが、はっきりと分かった。
おそらく国王の裁きと俺たちの活躍を伝えに行った者がいたのだろう。
恐怖に震え、自宅で怯えていた商人たちは、それを聞いて大挙として押し寄せてきたのだ。
二つの波が国王を中心にぶつかった時、マタの国は一つになった。
「う…うん…これは…?」
俺の回復魔法で目を覚ましたティナは、状況を理解出来ずに目をパチクリさせていた。
「…俺たちが勝ったんだ」
俺は相変わらず足りない言葉をティナに向ける。
しかしティナには十分に伝わったようだ。
彼女は満面な笑みを浮かべ、俺に抱きついてきた。
彼女の柔らかな感触が、俺の胸を高鳴らせる。
そんな俺などお構いなしにティナは、
「あはは!やったぁ!!」
と無邪気に喜んでいた。
その時…
ティナの指輪が仄かに光を灯した…
賢者が持ち寄ったと言うこの指輪…
不思議な指輪だ。
周囲が歓喜で浮かれる中、その指輪に対しての疑問が俺の心を完全にとらえ始める。
この指輪が光を発するのはなぜだ?
もし…遠く離れた賢者が発するメッセージだとしたらどうだ?
彼ならマタ王国の人に何を伝える?
そこまで想像を巡らせたところで、俺はこの指輪が光を放った場面を思い起こす。
パブロと最初に出会った時…
そして、エミリーを助けに行った時…
それらの共通点…
まさか…
魔物…
離れた賢者のメッセージ…
「魔物が潜んでいるぞ」
という事なら納得できる。
もしそうだとすると、この近くにまだ魔物がいるという事になる。
まだ人間に紛れ込んでいるのか…
誰なんだ…?
俺は魔力を探る。
もちろん「エネミー・サーチ」の魔法は先ほどから使っている。
しかし全く察知は出来ない。
俺はもう少し頭を巡らせる。
もし俺が魔物だとしたら何を狙うだろうか…「魔物だとしたら」など考えたくもないが仕方ない。
狙うもの…狙う者…!
国王か!!
俺は群衆の中から、国王を探す。
既に彼は馬を降りて人々に揉みくちゃにされていて、どこにいるか検討もつかない。
「…くそっ!」
俺の尋常ではない様子に気付いたティナが心配そうに俺に寄り添う。
「どうしたの?ジェイ…何か様子がおかしいわ」
「…王が危ない」
「えっ!?どういう事?」
「…一緒に探してくれ」
最初は怪訝そうにしていたティナだったが、俺のただならぬ雰囲気に気圧されたのか、
「う、うん!分かったわ!
国王さまぁ!!」
と大きな声を出して彼女も国王を探し始めた。
その時ふと思い出した事があった…
もう一ヶ所、ティナの指輪が光った場面を…
そしてその場にいた人物も…
「…あいつか!!」
国王よりも見つけやすいその人物を探す。
すると…
少し離れた場所にその人物を見つけた。
その人物が進む先には…
国王だ!
「…まずい!」
俺は近づこうと必死に人々を掻き分けて進んだ。
しかしなかなか距離が縮まらない。
そうこうしているうちに、その人物が国王の目の前までやってきた。
何も知らない国王は彼を迎え入れ、ハグをしようと近寄っている。
その瞬間…
その人物は俺を見た…
ニタァリと笑って、声に出さずに口を動かす。
ざ・ん・ね・ん
と…
「…くっ!!」
殺られる…そう俺が諦めた瞬間だった。
「トォマァソォォン!!!」
鉄砲玉のように、一直線に突っ込んでくる少女が、その人物の名を叫んだ。
見覚えのあるその華奢な姿に、大きな声…
エミリーだ。
その顔は土だらけで黒く、髪には木の葉がいくつもついていた。
しかしその瞳は、先ほどまでとは異なった使命ではあるが、燃える輝きを放っていた。
彼女のあまりの勢いに道を開ける人々。
当のトマソンも驚き、その顔をエミリーの方へと向けた。
ドォォォン!!
勢いそのままに、エミリーはトマソンの足へタックルをかます。
「うおっ!!」
膝に大きな衝撃を受けたトマソンは、彼女と一体となって国王の前から姿を消し、地面に転がった。
「くっそぉ!小娘が!邪魔しやがって!」
トマソンは倒れたまま、そのエミリーの方へ顔を向けていきりたった。
彼女が彼に言い返す。
「うるさい!!魔物め!!正体を現せ!!」
そのエミリーの言葉に周囲がざわついた。
「な、なにをデタラメな事を…!?」
依然倒れながら動揺しているトマソンをエミリーはじっと睨み付けていた。
そんな中、俺はようやくトマソンの元へとたどり着く。
エミリーの鋭い眼光に呑まれているトマソン…
俺は彼の肩を思いっきり踏みつけた。
ドンッ!!
「がぁっ!!」
彼は仰向けになり、頭を地面にうちつける。
俺は彼の肩を踏みつけたまま、彼の顔を真上から覗き込んだ。
彼の表情は驚きと恐怖で引きつっている。
「ひぃ!お、俺は善良な農民だぞ!何をするんだ!?」
俺はニタリと笑って、往生際の悪い彼に吐き捨てた。
「…ざ・ん・ね・ん」
そして恐怖のあまり大きく開かれたトマソンの口の中に剣を突き立て、そのまま頭を貫いた。
エミリーの燃える瞳は、トマソンが完全に絶命するまで、彼の姿をとらえ続けていた。
俺の魔法に包まれた国王の言葉は、裏山の隅にまで届く。
ワァァァ!!
農民たちは大歓声を上げ喜びを露わにすると、雪崩のように山から下りてきた。
押し寄せる歓喜の波。
それを両手を広げ受け入れる姿勢の兵士たち。
さらに…
ウワァァァァ!!
俺の背後から聞こえる歓喜の雄叫び。
商人たちが、我れ先へと必死に走ってくるのが、はっきりと分かった。
おそらく国王の裁きと俺たちの活躍を伝えに行った者がいたのだろう。
恐怖に震え、自宅で怯えていた商人たちは、それを聞いて大挙として押し寄せてきたのだ。
二つの波が国王を中心にぶつかった時、マタの国は一つになった。
「う…うん…これは…?」
俺の回復魔法で目を覚ましたティナは、状況を理解出来ずに目をパチクリさせていた。
「…俺たちが勝ったんだ」
俺は相変わらず足りない言葉をティナに向ける。
しかしティナには十分に伝わったようだ。
彼女は満面な笑みを浮かべ、俺に抱きついてきた。
彼女の柔らかな感触が、俺の胸を高鳴らせる。
そんな俺などお構いなしにティナは、
「あはは!やったぁ!!」
と無邪気に喜んでいた。
その時…
ティナの指輪が仄かに光を灯した…
賢者が持ち寄ったと言うこの指輪…
不思議な指輪だ。
周囲が歓喜で浮かれる中、その指輪に対しての疑問が俺の心を完全にとらえ始める。
この指輪が光を発するのはなぜだ?
もし…遠く離れた賢者が発するメッセージだとしたらどうだ?
彼ならマタ王国の人に何を伝える?
そこまで想像を巡らせたところで、俺はこの指輪が光を放った場面を思い起こす。
パブロと最初に出会った時…
そして、エミリーを助けに行った時…
それらの共通点…
まさか…
魔物…
離れた賢者のメッセージ…
「魔物が潜んでいるぞ」
という事なら納得できる。
もしそうだとすると、この近くにまだ魔物がいるという事になる。
まだ人間に紛れ込んでいるのか…
誰なんだ…?
俺は魔力を探る。
もちろん「エネミー・サーチ」の魔法は先ほどから使っている。
しかし全く察知は出来ない。
俺はもう少し頭を巡らせる。
もし俺が魔物だとしたら何を狙うだろうか…「魔物だとしたら」など考えたくもないが仕方ない。
狙うもの…狙う者…!
国王か!!
俺は群衆の中から、国王を探す。
既に彼は馬を降りて人々に揉みくちゃにされていて、どこにいるか検討もつかない。
「…くそっ!」
俺の尋常ではない様子に気付いたティナが心配そうに俺に寄り添う。
「どうしたの?ジェイ…何か様子がおかしいわ」
「…王が危ない」
「えっ!?どういう事?」
「…一緒に探してくれ」
最初は怪訝そうにしていたティナだったが、俺のただならぬ雰囲気に気圧されたのか、
「う、うん!分かったわ!
国王さまぁ!!」
と大きな声を出して彼女も国王を探し始めた。
その時ふと思い出した事があった…
もう一ヶ所、ティナの指輪が光った場面を…
そしてその場にいた人物も…
「…あいつか!!」
国王よりも見つけやすいその人物を探す。
すると…
少し離れた場所にその人物を見つけた。
その人物が進む先には…
国王だ!
「…まずい!」
俺は近づこうと必死に人々を掻き分けて進んだ。
しかしなかなか距離が縮まらない。
そうこうしているうちに、その人物が国王の目の前までやってきた。
何も知らない国王は彼を迎え入れ、ハグをしようと近寄っている。
その瞬間…
その人物は俺を見た…
ニタァリと笑って、声に出さずに口を動かす。
ざ・ん・ね・ん
と…
「…くっ!!」
殺られる…そう俺が諦めた瞬間だった。
「トォマァソォォン!!!」
鉄砲玉のように、一直線に突っ込んでくる少女が、その人物の名を叫んだ。
見覚えのあるその華奢な姿に、大きな声…
エミリーだ。
その顔は土だらけで黒く、髪には木の葉がいくつもついていた。
しかしその瞳は、先ほどまでとは異なった使命ではあるが、燃える輝きを放っていた。
彼女のあまりの勢いに道を開ける人々。
当のトマソンも驚き、その顔をエミリーの方へと向けた。
ドォォォン!!
勢いそのままに、エミリーはトマソンの足へタックルをかます。
「うおっ!!」
膝に大きな衝撃を受けたトマソンは、彼女と一体となって国王の前から姿を消し、地面に転がった。
「くっそぉ!小娘が!邪魔しやがって!」
トマソンは倒れたまま、そのエミリーの方へ顔を向けていきりたった。
彼女が彼に言い返す。
「うるさい!!魔物め!!正体を現せ!!」
そのエミリーの言葉に周囲がざわついた。
「な、なにをデタラメな事を…!?」
依然倒れながら動揺しているトマソンをエミリーはじっと睨み付けていた。
そんな中、俺はようやくトマソンの元へとたどり着く。
エミリーの鋭い眼光に呑まれているトマソン…
俺は彼の肩を思いっきり踏みつけた。
ドンッ!!
「がぁっ!!」
彼は仰向けになり、頭を地面にうちつける。
俺は彼の肩を踏みつけたまま、彼の顔を真上から覗き込んだ。
彼の表情は驚きと恐怖で引きつっている。
「ひぃ!お、俺は善良な農民だぞ!何をするんだ!?」
俺はニタリと笑って、往生際の悪い彼に吐き捨てた。
「…ざ・ん・ね・ん」
そして恐怖のあまり大きく開かれたトマソンの口の中に剣を突き立て、そのまま頭を貫いた。
エミリーの燃える瞳は、トマソンが完全に絶命するまで、彼の姿をとらえ続けていた。
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