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第3章
マタ王国の内戦10
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突然の来訪者、しかもそれが血まみれでひどい風貌をした少女であったのだから、ラーミア国王は面食らっていたのは当たり前である。
彼は彼女を落ち着かせるために、彼女を近くの椅子に座らせようと試みた。
しかしエミリーは即座にそれを拒否して王に詰め寄った。
「このままでは国内で戦争が始まります!お願いです!皆を鎮めて下さい!」
彼女の瞳から大粒の涙がこぼれる。
その切羽詰まった彼女の姿にかけるべき言葉を見つけようと必死に思考を巡らせる国王。
しかし、ようやく出てきた国王の言葉は、エミリーをひどく落胆させるものであった。
「ひとまず宰相であるパブロの報告を待ってからだな…」
視線をそらしながら国王はエミリーに言い聞かせる。
エミリーは燃えるような怒りを含んだ視線を国王に向けて叫んだ。
「パブロは魔物なの!おぞましい化け物だったのです!だから絶対に彼の言うことを聞いてはダメです!」
このエミリーの妄言とも言える物言いに流石の国王も顔をしかめた。
「エミリーと言う名前だったかな?
今の発言は目上であるパブロを侮辱したように僕に聞こえたのだけど…違うかい?」
エミリーは愕然とした…
国王の決断力のなさ…にではない。
自分の語彙の少なさと説得力のなさにである。
しかし今更そんな事を嘆いていても仕方がない。
彼女は決断した。
もう自分がここで出来る事はない…と。
彼女は部屋を出ようと扉を開けた。
その時…
「おやおや、もうお帰りですか?」
なんとパブロが目の前に立ち、気味悪い笑顔をこちらに向けていた。
「そ、そんなありえない…」
屋敷で見たおぞましい姿ではなく、いつものスーツに蝶ネクタイの姿で、涼しい顔をしてパブロは立っていた。
エミリーは絶句して、思わず後ずさりを抑えきれない。
これほど短時間で、しかも服装まで整えて現れるなんて…
パブロは一見すると穏やかに、しかし彼女の動きから絶対に目を離さないようにして、国王に報告した。
「国王様、今宵勇者様を歓迎するパーティーを商人たちを私の屋敷に招いて催していたのはご存じでしたかな?」
突然話題をふられた国王がしどろもどろになって答える。
「あ、ああ…知っていたとも」
パブロは目線をエミリーに向けたまま続ける。
「その屋敷が農民たちの反乱によって火の海と化しました。
そこで多くの商人たちが焼け死にました」
国王の表情が驚愕に変わる。
「な、なんと…」
パブロの頬が涙で濡れ始めた。
「そして私の妻と子供は…
なんと勇者様と称した悪魔の手によって、殺されたのです…」
国王は驚きのあまりに腰を抜かしている。
まさかあの男と連れの女性は偽物の勇者だったのか…
彼の頭の中は猜疑心で満たされた。
さらにパブロは続けた。
「さらにもう一人…
そうこのエミリーだけは、どの商人よりも真っ先に難を逃れ、国王様をたぶらかせようと企てたのです」
エミリーはパブロには背中を向けずに叫んだ。
「でたらめよ!こいつこそ悪魔なんです!信じてください!国王様!」
「でたらめ?
いい加減にしなさい、エミリー。
君が昨日、農村部に偽勇者といたのを見た者がいるんだ。
大方、今回の襲撃の策でも練っていたのであろう。
むしろ放言を吐いているのは君の方だろう」
国王がエミリーに向ける視線が変わる。
彼女の身を心配していたものから、彼女を疑うものに…
「こともあろうことか、彼女の父親が私を襲ってきましてね。
私はとっさに持っていた小刀で彼を成敗したものだから、余計に私を害する気持ちが高まっているようです」
パブロのこの言葉に、エミリーの何かが切れた。
感情が爆発する。
「お父さんを…お父さんの名誉を傷つけるな~~!!」
エミリーは素手でパブロに殴りかかった。
その行為は全く意味がなく、むしろ自分の立場を決定的におとしめる事であろうことは、頭では理解できているつもりだ。
しかし彼女のハートはその理解を超えて、怒りと憎しみとともに爆発させた。
ガシッ!
彼女の両手がいつの間にかパブロの横に待機していた、彼の付き人の大男二人によってしっかりとつかまれた。
「離せ!私はコイツを許さない!やめて!!」
パブロは冷ややかな目で、暴れるエミリーを眺めている。
「追って処分を下します。
それまでは牢獄で頭を冷やしていなさい。連れていけ。」
と沙汰を下した。
「ぐぬぬっ…お前なんか…勇者様が私の無念を晴らしてくれるはず!」
エミリーはパブロを睨み付けていたが、彼は勝ち誇ったような顔つきで彼女を見ていた。
暴れるエミリーを大男の二人が外へ連れていく。
すれ違い様、パブロはボソリとエミリーに告げた。
「勇者のお供の女には、背中に致命傷を与えましたから。
今ごろ火の海の中で、息絶えていることでしょう」
その言葉で彼女は悟っていた。
もう絶体絶命という次元ではない…
完全に負けた…と。
そして背中からパブロから国王への進言が聞こえてきた。
「国王様、軍隊を派遣することをお許し下さい。
農民たちの暴動を沈めて参りましょう」
彼は彼女を落ち着かせるために、彼女を近くの椅子に座らせようと試みた。
しかしエミリーは即座にそれを拒否して王に詰め寄った。
「このままでは国内で戦争が始まります!お願いです!皆を鎮めて下さい!」
彼女の瞳から大粒の涙がこぼれる。
その切羽詰まった彼女の姿にかけるべき言葉を見つけようと必死に思考を巡らせる国王。
しかし、ようやく出てきた国王の言葉は、エミリーをひどく落胆させるものであった。
「ひとまず宰相であるパブロの報告を待ってからだな…」
視線をそらしながら国王はエミリーに言い聞かせる。
エミリーは燃えるような怒りを含んだ視線を国王に向けて叫んだ。
「パブロは魔物なの!おぞましい化け物だったのです!だから絶対に彼の言うことを聞いてはダメです!」
このエミリーの妄言とも言える物言いに流石の国王も顔をしかめた。
「エミリーと言う名前だったかな?
今の発言は目上であるパブロを侮辱したように僕に聞こえたのだけど…違うかい?」
エミリーは愕然とした…
国王の決断力のなさ…にではない。
自分の語彙の少なさと説得力のなさにである。
しかし今更そんな事を嘆いていても仕方がない。
彼女は決断した。
もう自分がここで出来る事はない…と。
彼女は部屋を出ようと扉を開けた。
その時…
「おやおや、もうお帰りですか?」
なんとパブロが目の前に立ち、気味悪い笑顔をこちらに向けていた。
「そ、そんなありえない…」
屋敷で見たおぞましい姿ではなく、いつものスーツに蝶ネクタイの姿で、涼しい顔をしてパブロは立っていた。
エミリーは絶句して、思わず後ずさりを抑えきれない。
これほど短時間で、しかも服装まで整えて現れるなんて…
パブロは一見すると穏やかに、しかし彼女の動きから絶対に目を離さないようにして、国王に報告した。
「国王様、今宵勇者様を歓迎するパーティーを商人たちを私の屋敷に招いて催していたのはご存じでしたかな?」
突然話題をふられた国王がしどろもどろになって答える。
「あ、ああ…知っていたとも」
パブロは目線をエミリーに向けたまま続ける。
「その屋敷が農民たちの反乱によって火の海と化しました。
そこで多くの商人たちが焼け死にました」
国王の表情が驚愕に変わる。
「な、なんと…」
パブロの頬が涙で濡れ始めた。
「そして私の妻と子供は…
なんと勇者様と称した悪魔の手によって、殺されたのです…」
国王は驚きのあまりに腰を抜かしている。
まさかあの男と連れの女性は偽物の勇者だったのか…
彼の頭の中は猜疑心で満たされた。
さらにパブロは続けた。
「さらにもう一人…
そうこのエミリーだけは、どの商人よりも真っ先に難を逃れ、国王様をたぶらかせようと企てたのです」
エミリーはパブロには背中を向けずに叫んだ。
「でたらめよ!こいつこそ悪魔なんです!信じてください!国王様!」
「でたらめ?
いい加減にしなさい、エミリー。
君が昨日、農村部に偽勇者といたのを見た者がいるんだ。
大方、今回の襲撃の策でも練っていたのであろう。
むしろ放言を吐いているのは君の方だろう」
国王がエミリーに向ける視線が変わる。
彼女の身を心配していたものから、彼女を疑うものに…
「こともあろうことか、彼女の父親が私を襲ってきましてね。
私はとっさに持っていた小刀で彼を成敗したものだから、余計に私を害する気持ちが高まっているようです」
パブロのこの言葉に、エミリーの何かが切れた。
感情が爆発する。
「お父さんを…お父さんの名誉を傷つけるな~~!!」
エミリーは素手でパブロに殴りかかった。
その行為は全く意味がなく、むしろ自分の立場を決定的におとしめる事であろうことは、頭では理解できているつもりだ。
しかし彼女のハートはその理解を超えて、怒りと憎しみとともに爆発させた。
ガシッ!
彼女の両手がいつの間にかパブロの横に待機していた、彼の付き人の大男二人によってしっかりとつかまれた。
「離せ!私はコイツを許さない!やめて!!」
パブロは冷ややかな目で、暴れるエミリーを眺めている。
「追って処分を下します。
それまでは牢獄で頭を冷やしていなさい。連れていけ。」
と沙汰を下した。
「ぐぬぬっ…お前なんか…勇者様が私の無念を晴らしてくれるはず!」
エミリーはパブロを睨み付けていたが、彼は勝ち誇ったような顔つきで彼女を見ていた。
暴れるエミリーを大男の二人が外へ連れていく。
すれ違い様、パブロはボソリとエミリーに告げた。
「勇者のお供の女には、背中に致命傷を与えましたから。
今ごろ火の海の中で、息絶えていることでしょう」
その言葉で彼女は悟っていた。
もう絶体絶命という次元ではない…
完全に負けた…と。
そして背中からパブロから国王への進言が聞こえてきた。
「国王様、軍隊を派遣することをお許し下さい。
農民たちの暴動を沈めて参りましょう」
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