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第3章
マタ王国の内戦6
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ラーミア国王は徒歩でここまでやってきたらしく、俺たちは並んで中心街の大通りを歩いていく事になった。
昨日と同じように、いかつい顔つきをしたお付きが二人後ろから付いてきている。
そして街の人々は国王に気付くと、道の端に寄り、頭を下げた。
そんな民衆を見て、
「僕はこういうの苦手なんだけどな…」
と寂しそうな表情を浮かべていたのが、俺には印象的であった。
道中、国王はおばば様からの手紙の内容を教えてくれた。
そこには俺たちが、ベトジアの街を救い、迷いの森に巣食う魔物を一掃した勇者一行である事が書かれていたらしい。
そして俺たちを国の賓客として、丁重に扱う様に指示されたとの事だ。
その手紙を読んだ国王は、他の者の迎えでは失礼があっては一大事だと思い、自ら俺たちを宿まで探しに来た。
この国には冒険者が宿泊する所は一箇所しかないようで、迷う事なく俺たちを見つけることが出来て良かった、と若い国王は屈託のない笑顔で喜んでいる。
サム爺は「八方美人」と評していたが、俺たちに見せる表情には、裏がありそうな腹黒い笑顔はないと俺は感じていた。
そんな経緯(いきさつ)を聞いているうちに、マタ王国の王城までたどり着く。
その城はアステリア王国の城に比べれば、随分とこじんまりしたものである。
敷地もさほど大きくはなく、ちょっとした貴族の館のような風貌に見えた。
「さあ、中へどうぞ!」
国王自ら中へと誘導してくれるとは、なんとも贅沢だ。
城の中へ入ると、真っ赤な絨毯が敷き詰められており、その両端にはメイドたちがずらりと整列し、一様に頭を下げて、俺たちを出迎えてくれた。
しかしメイドたちは揃いも揃って無表情で、笑顔の一つもない。
アステリアの時は、俺が城に入っただけで歓声が上がった事を思うと、少し違和感を感じざるを得ないような光景だ。
国王はその様子には慣れているのだろう、全く気にとめることなくズンズンと前に進んでいった。
そしていくつかの部屋と廊下を抜けると、ソファがいくつか置かれている比較的小さな部屋に入った。
「かけてくれたまえ!」
俺たちは誘(いざ)なわれるがままに、ソファに腰掛けた。
国王は俺たちに向かい合うように座ると、開口一番
「勇者様に折り入って頼みがあるんだが、聞いてはくれないか?」
と頭を下げた。
先ほどまでのにこやかな表情を一変させて、真剣な眼差しで俺を見つめる国王。
俺にはこの後に続く彼の言葉が、なんとなく分かっていた。
「この国の農民と商人の争いを収めてはくれないか?」
やはり…そうきたか…
俺は即答した。
「…断る」
あまりにあっさりとした俺の回答に、国王とティナは目を丸くしている。
国王が慌てるように続けた。
「し、しかし、君は勇者だから、この世界を平和に導いてくれるんだろう?
だったら、この国も救ってくれたっていいじゃないか!」
俺は国王を睨みつけた。
国王は俺の視線に顔を青ざめて、後ずさる。
「…甘ったれるな」
「な、なにを…言うんだ?」
「…この国のリーダーは…」
ダンッ!
俺は目の前のテーブルを両手で強く叩く。
そして大きな声で言った。
「…リーダーは貴様だ!この甘ったれが!」
俺に圧倒された国王は口を開けたまま、こちらを見ている。
しかし相当動揺しているようで、焦点が定まっていない。
俺は最後にとどめを指す様に言い捨てた。
「…貴様の決断と言葉以外では、この国は救えない」
思わずティナが助け舟を出そうと、俺の腕をつかんだ。
「ちょっと…言い過ぎよ…」
俺はその手を振りほどくと、
「…行くぞ」
と言って、固まっている国王を置き去りにして、その場を後にしようと立ちあがった。
…と、その時だった。
ティナの指輪がほのかに光り出す。
それを確認した瞬間に、
ガチャ…
とある男が国王がいる中にいるにも関わらず、ノックもせずに入ってきた。
その男は吐き気をもよおすような気味悪い笑顔を浮かべ、脂汗にまみれて照った大きな顔をこちらに向けた。
太った大きな体に、来ている服は窮屈そうだ。
「やあやあ、あなたが勇者様ですか。お初にお目にかかります、私は中心街の商人長にしてこの国の宰相をつとめます、パブロと申します」
パブロはそう言うと、俺に手を差し出した。
気持ち悪くて握りたくもないが、変なもめ事を起こしたくない為、渋々俺も手を差し出した。
ピリッ…
握手をした瞬間に、俺に電気のような魔力の流れが伝わる。
その瞬間、俺は確信した。
こいつ…
魔物だ。
パブロは俺に笑いかける。
「以後、お見知りおきを」
俺もニタリと笑い、
「…こちらこそ」
と返した。
握手を終えるとパブロが後ろを振り返る。
するとパブロのお付きのこれまた屈強な男二人に連れられて、エミリーが部屋に入ってきた。
「やっほー!昨日ぶり!」
「エミリーちゃん!よかったぁ!無事だったのね!」
「うん!もちろん、私はこの通り!無事だよ~!私、逃げ足だけは一級品なんだから!」
ティナとエミリーは再会を喜んでいるようだ。
俺は「無事」と言う言葉に反応する。
エミリーの背後には屈強な男が二人。
それはまるで、「お前が俺に手を出したら、この少女の命はない」というパブロの無言の脅迫な様に思えた。
パブロが俺の差すような視線をもろともせずに、
「今宵は私めの屋敷で歓迎のパーティーを催したいと思います。エミリーも喜んで参加するとのことですので、是非お越しくださいませ」
と笑顔で提案してきた。
しかしその目は笑っていない。
断れば、エミリーの命はないであろうことは明白だ。
俺は思わず漏らした。
「…面白い」
「では、今夜宿までお迎えに上がります」
「…お手並み拝見といこうか」
「ククク、勇者様、どうぞお手柔らかに」
俺はそれにはニタァとした笑顔を向けることで、答えとした。
昨日と同じように、いかつい顔つきをしたお付きが二人後ろから付いてきている。
そして街の人々は国王に気付くと、道の端に寄り、頭を下げた。
そんな民衆を見て、
「僕はこういうの苦手なんだけどな…」
と寂しそうな表情を浮かべていたのが、俺には印象的であった。
道中、国王はおばば様からの手紙の内容を教えてくれた。
そこには俺たちが、ベトジアの街を救い、迷いの森に巣食う魔物を一掃した勇者一行である事が書かれていたらしい。
そして俺たちを国の賓客として、丁重に扱う様に指示されたとの事だ。
その手紙を読んだ国王は、他の者の迎えでは失礼があっては一大事だと思い、自ら俺たちを宿まで探しに来た。
この国には冒険者が宿泊する所は一箇所しかないようで、迷う事なく俺たちを見つけることが出来て良かった、と若い国王は屈託のない笑顔で喜んでいる。
サム爺は「八方美人」と評していたが、俺たちに見せる表情には、裏がありそうな腹黒い笑顔はないと俺は感じていた。
そんな経緯(いきさつ)を聞いているうちに、マタ王国の王城までたどり着く。
その城はアステリア王国の城に比べれば、随分とこじんまりしたものである。
敷地もさほど大きくはなく、ちょっとした貴族の館のような風貌に見えた。
「さあ、中へどうぞ!」
国王自ら中へと誘導してくれるとは、なんとも贅沢だ。
城の中へ入ると、真っ赤な絨毯が敷き詰められており、その両端にはメイドたちがずらりと整列し、一様に頭を下げて、俺たちを出迎えてくれた。
しかしメイドたちは揃いも揃って無表情で、笑顔の一つもない。
アステリアの時は、俺が城に入っただけで歓声が上がった事を思うと、少し違和感を感じざるを得ないような光景だ。
国王はその様子には慣れているのだろう、全く気にとめることなくズンズンと前に進んでいった。
そしていくつかの部屋と廊下を抜けると、ソファがいくつか置かれている比較的小さな部屋に入った。
「かけてくれたまえ!」
俺たちは誘(いざ)なわれるがままに、ソファに腰掛けた。
国王は俺たちに向かい合うように座ると、開口一番
「勇者様に折り入って頼みがあるんだが、聞いてはくれないか?」
と頭を下げた。
先ほどまでのにこやかな表情を一変させて、真剣な眼差しで俺を見つめる国王。
俺にはこの後に続く彼の言葉が、なんとなく分かっていた。
「この国の農民と商人の争いを収めてはくれないか?」
やはり…そうきたか…
俺は即答した。
「…断る」
あまりにあっさりとした俺の回答に、国王とティナは目を丸くしている。
国王が慌てるように続けた。
「し、しかし、君は勇者だから、この世界を平和に導いてくれるんだろう?
だったら、この国も救ってくれたっていいじゃないか!」
俺は国王を睨みつけた。
国王は俺の視線に顔を青ざめて、後ずさる。
「…甘ったれるな」
「な、なにを…言うんだ?」
「…この国のリーダーは…」
ダンッ!
俺は目の前のテーブルを両手で強く叩く。
そして大きな声で言った。
「…リーダーは貴様だ!この甘ったれが!」
俺に圧倒された国王は口を開けたまま、こちらを見ている。
しかし相当動揺しているようで、焦点が定まっていない。
俺は最後にとどめを指す様に言い捨てた。
「…貴様の決断と言葉以外では、この国は救えない」
思わずティナが助け舟を出そうと、俺の腕をつかんだ。
「ちょっと…言い過ぎよ…」
俺はその手を振りほどくと、
「…行くぞ」
と言って、固まっている国王を置き去りにして、その場を後にしようと立ちあがった。
…と、その時だった。
ティナの指輪がほのかに光り出す。
それを確認した瞬間に、
ガチャ…
とある男が国王がいる中にいるにも関わらず、ノックもせずに入ってきた。
その男は吐き気をもよおすような気味悪い笑顔を浮かべ、脂汗にまみれて照った大きな顔をこちらに向けた。
太った大きな体に、来ている服は窮屈そうだ。
「やあやあ、あなたが勇者様ですか。お初にお目にかかります、私は中心街の商人長にしてこの国の宰相をつとめます、パブロと申します」
パブロはそう言うと、俺に手を差し出した。
気持ち悪くて握りたくもないが、変なもめ事を起こしたくない為、渋々俺も手を差し出した。
ピリッ…
握手をした瞬間に、俺に電気のような魔力の流れが伝わる。
その瞬間、俺は確信した。
こいつ…
魔物だ。
パブロは俺に笑いかける。
「以後、お見知りおきを」
俺もニタリと笑い、
「…こちらこそ」
と返した。
握手を終えるとパブロが後ろを振り返る。
するとパブロのお付きのこれまた屈強な男二人に連れられて、エミリーが部屋に入ってきた。
「やっほー!昨日ぶり!」
「エミリーちゃん!よかったぁ!無事だったのね!」
「うん!もちろん、私はこの通り!無事だよ~!私、逃げ足だけは一級品なんだから!」
ティナとエミリーは再会を喜んでいるようだ。
俺は「無事」と言う言葉に反応する。
エミリーの背後には屈強な男が二人。
それはまるで、「お前が俺に手を出したら、この少女の命はない」というパブロの無言の脅迫な様に思えた。
パブロが俺の差すような視線をもろともせずに、
「今宵は私めの屋敷で歓迎のパーティーを催したいと思います。エミリーも喜んで参加するとのことですので、是非お越しくださいませ」
と笑顔で提案してきた。
しかしその目は笑っていない。
断れば、エミリーの命はないであろうことは明白だ。
俺は思わず漏らした。
「…面白い」
「では、今夜宿までお迎えに上がります」
「…お手並み拝見といこうか」
「ククク、勇者様、どうぞお手柔らかに」
俺はそれにはニタァとした笑顔を向けることで、答えとした。
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