出遅れ勇者の無双蹂躙~世界滅亡寸前からの逆襲~

友理潤

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第3章

迷いの森救出戦9

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「…ゲン!パトラにつかまれ!」

俺はそう指示を出すとゲンの背中を押した。

ドゴン!

「ぐげぇ!!」

一気にパトラの方へ吹き飛ぶゲン。

バタンッ!

そしてパトラの目の前で彼は前のめりに転んだ。

「ゲンくん、大丈夫?」

「いててて…」

と、顔を抑えながらゲンは立ち上がる。

「やい!ちっとは優しく出来ないのかよ!!?」

「…いいからつかまれ!」

俺の厳しい口調に、ゲンはパトラの手を取る。

「…違う!抱きつけ!」

「なっ!?そんな恥ずかしい事、出来るかよ!」

「ゲンくん!私は大丈夫だから!」

と、むしろパトラの方から抱きついた。
二人とも顔を赤らめている。

そんな事はお構いなしで、俺は次の指示を送った。

「…二人で先に街の方へ」

これにはゲンがすぐに答えた。

「分かった!まかせとけ!」

それを聞いて俺は頷き、魔法を唱えた。

「風神よ!荒れろ!吹き飛ばせ!風上位魔法!『ブロウンバイストーム』!」


この魔法は暴風で目の前の敵や味方を吹き飛ばす事が出来る魔法だ。

俺はゲンとパトラに向かって、その魔法を放った。

ゴォォォォ!!

暴風が彼らを襲い、そのまま遥か彼方へと吹き飛ばしていった。

「うわぁぁぁ!そっちの方向じゃないぞ!バカ勇者!!」

とゲンの文句が遠くから聞こえていた。

俺は目の前の敵に目を移した。

こんな隙を与えても全く手を出そうとして来ない。
いや、正確には出来ないのだ。
もっとも手を出してきたところで、返り討ちにする気でいたので、俺は少し残念な気持ちになっていた。

「…がっかりさせるなよ…クズ野郎」

俺は恨み節でアルラウネに文句をたれる。
しかし彼女はそれどころではないようだ。

彼女の足元と言える大きな花弁は、すでに枯れたような、くすんだ茶色に変色し、彼女自身も艶やかな女性の上半身は、若々しさの欠片もない老人のようになっていた。

「ハァ…ハァ…」

屈辱にまみれた形相で俺を睨み付けるアルラウネ。
そして最後の力を振り絞るように
「グアアアア!!」
と叫んだ。

ドゴッ!!

足元から無数のツルが伸びてくる。

彼女の最後の猛攻が始まりだった。

「シネェェェェ!!!」

ツルが一斉に俺とティナへと襲いかかってくる。

「…斬り開け!ティナ!」

「分かったわ!えええい!
一の太刀!地空真波斬(ちくうしんはざん)!!
いっけぇぇぇ!!」

ティナの渾身の一撃が前方に衝撃波となって炸裂する。

ドゴォォ!!!

まさに地面と空気を切り裂く一撃は、前方のツルを一掃していった。
目の前の空間がポカリと空く。

グン!

俺その隙を逃さずに、一気にアルラウネの元へと飛び出した。

茂みの様に視界を遮っていた大量のツルを抜けた先には、アルラウネの上半身の前であった。

しかし彼女はそれを待ち構えていたかの様に、魔法を唱える準備を整えていた。

「残念ね…私の勝ちよ…シネ!」

アルラウネは無防備な俺に魔法を放つ…

かに見えた…

しかし実際には何も起こらなかった。

「…魔力切れ…お前の負け」

「ば…バカな!!?」

俺は拳(こぶし)に魔力を込める。

「…燃え尽きろ」

「やめてぇ!助けてぇ!!」

必死に命ごいをするアルラウネを無視して、俺はスキルを放つ。

「炎の魔法拳!イフリートスマッシャー!!」

ドゴォォォォン!!

俺の渾身のパンチがアルラウネの鳩尾(みぞおち)にめり込んだ。

「グハァァァァ!!」

ボゥッ!!

そして穴の空いた腹から出た業火が、肉を焼く異臭を放ちながら彼女の全身を包んだ。

「ギャァァァ!嫌だ!死にたくない!アツイアツイアツイアツイアツイ」

「…ティナ、とどめだ」

「はい!」

ティナは一気に駆けつけてきて刀を構えた。

「天空流!二の太刀!皇龍刺突(こうりゅうしとつ)!!!」

ドン!!

彼女の綺麗に伸びた突きは、アルラウネの心臓を貫いた。

「グァァァ!!」

周囲に響くアルラウネの断末魔。

そして最期に彼女は
「この仇は魔王様がきっと…」
と言い残して、力尽きた。

「やったわね!ジェイ!!」

ぴょんと跳ねて抱きついてくるティナ。

「…ぬるすぎる」

と、俺は漏らして彼女の亡骸が灰になるのを見つめていた。

この戦いを終えて、俺のレベルは95、ティナはなんと60くらいから80まで上がっていた。


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