52 / 79
第3章
迷いの森救出戦3
しおりを挟む◇◇
「とうとう勇者くんが来たのねぇ」
迷いの森の奥でアルラウネは嬉しそうに微笑んでいる。
彼女は元来好戦的なタイプであった。
しかし長い間、彼女が直接手を下した相手はない。
なぜなら彼女の城とも言えるこの森を抜けて、彼女の元までにたどり着いた者がいないのだ。
それでも「殺したい」という欲求を満たすだけの為に、時折冒険者をわざと彼女の元に誘って『遊んだ』事はあった。
しかし冒険者が全く現れなくなった最近ではそれさえもなくなった。
その為、自分を脅かそうという勇者の出現を彼女は心の底から喜んでいる。
「ああ~、早くここまで来てくれないかなぁ…」
彼女は恋い焦がれる想い人を待つ心境で、上空を見上げた。
そこにキノコ型の魔物であるマタンゴクイーンがやってくる。
「勇者一行、森の中程まで入って来ました。
いかがしましょう?アルラウネ様」
マタンゴクイーンの問いかけに少し考え込むアルラウネ。
そして指示を出した。
「手加減は無用よん。
ダンスキャロットちゃんたち、サボテンボールくんたちをマンドラゴラちゃんが率いて一斉に攻撃。
勇者の周りの雑魚共をまずは狙いなさい」
「はい、その様に申しつけます」
「それからトレントくんたちは、少しずつ勇者くんをここまで引き寄せる様に動きなさい。
勇者くんが森の泉まで来たら、あなたも含め一斉に攻撃ね。私もそれを見て動くわ。
とにかく戦闘を切らさない事。
レベルアップとか言う汚い事されたら回復されちゃうもんね」
「人質はいかがなさいますか?」
「ここに連れて来なさい。たっぷり可愛がってあげるわ」
「かしこまりました。既にここにおります」
猿ぐつわをされた少女のパトラが別のマタンゴに連れてこられた。
「ん~!ん~!」
アルラウネがその猿ぐつわを外す様に合図を送る。
猿ぐつわが外され、パトラが解放される。
泣き叫ぶかと思っていたが、黙ってアルラウネを睨み付けている。
「フフフ、健気なお嬢さんねぇ。好きよ、そういうの」
シュルッ!
「きゃっ!」
アルラウネは長いツルを伸はしパトラに巻き付ける。
そして自分の側まで彼女を引き寄せた。
それでもパトラは泣くまいと我慢している様だ。
そんな彼女を見てアルラウネはますます彼女を気に入っていた。
可愛がり甲斐がある…と。
「あなたのお友達も来ているようよ。
小さな男の子」
今まで気丈にしていたパトラの表情が青ざめる。
「まさか…ゲンくんが!?」
その反応にアルラウネは楽しそうに
「名前までは知らないわ…フフフ。
その男の子の事…どうしちゃおうかなぁ」
パトラは完全に取り乱している。
「やめて!私の事は好きにすればいいじゃない!
だからゲンには手を出さないで!」
アルラウネはこの少女をさらに絶望へと誘(いざな)ってやろうと考えた。
「マタンゴクイーンちゃん、その男の子は生かしたままここに連れてきてね。
この女の子の目の前で八つ裂きにしてあげるから」
「やめて!やめてぇ!!」
「ああ、いいわぁ。その叫び声。もっと聞かせて頂戴」
そう言うとアルラウネはペロリとパトラを舐めた。
「さぁ、始めましょう。勇者と私のゲームを。フフフ」
◇◇
マタンゴクイーンがアルラウネの元を去ると、辺りは静寂包まれる。
「あなたはそのゲンくんが好きなの?」
アルラウネはパトラにたずねた。
パトラは一瞬戸惑ったような表情を浮かべたが、コクリと頷いた。
「そうなんだぁ~。いいなぁ、私は恋なんてした事ないから。
好きな相手が出来たら食べちゃいそうだし」
パトラから血の気が引く。
それを見てアルラウネは
「フフフ、冗談よ」
と笑って誤魔化した。
「ああ、私も恋しい勇者様に早く会いたいわ~。そしたら色々と燃えちゃいそう。フフフ」
そうアルラウネが薄気味悪い笑顔を浮かべた時だった。
ドサッ…
と何かが落ちる音がした。
もしかしたらゲンという少年をマタンゴクイーンが運んできたのか?
それにしては早すぎる。
彼女この場を去ってから10分程しか経っていないからだ。
「むっ?何かしら?」
アルラウネは音のした方を注視する。
すると声が聞こえてきた。
「…お望み通りに燃やしてやるよ」
アルラウネは突然の訪問者にこれまでにないくらい驚いた。
「ま、まさか…あなたが勇者?」
「…ああ」
「私の可愛い魔物ちゃん達はどうしたのかしら?」
「…片付けた。全部」
「う、うそよ!そんなわけ…」
そこまで言いかけた時、先ほど落とされたモノがしゃべり出した。
「も、申し訳ございません…アルラウネ様…あまりの強さに…」
それは見る影もなくなったマタンゴクイーンであった…
「…さあ、始めるか。伐採の時間だ」
「とうとう勇者くんが来たのねぇ」
迷いの森の奥でアルラウネは嬉しそうに微笑んでいる。
彼女は元来好戦的なタイプであった。
しかし長い間、彼女が直接手を下した相手はない。
なぜなら彼女の城とも言えるこの森を抜けて、彼女の元までにたどり着いた者がいないのだ。
それでも「殺したい」という欲求を満たすだけの為に、時折冒険者をわざと彼女の元に誘って『遊んだ』事はあった。
しかし冒険者が全く現れなくなった最近ではそれさえもなくなった。
その為、自分を脅かそうという勇者の出現を彼女は心の底から喜んでいる。
「ああ~、早くここまで来てくれないかなぁ…」
彼女は恋い焦がれる想い人を待つ心境で、上空を見上げた。
そこにキノコ型の魔物であるマタンゴクイーンがやってくる。
「勇者一行、森の中程まで入って来ました。
いかがしましょう?アルラウネ様」
マタンゴクイーンの問いかけに少し考え込むアルラウネ。
そして指示を出した。
「手加減は無用よん。
ダンスキャロットちゃんたち、サボテンボールくんたちをマンドラゴラちゃんが率いて一斉に攻撃。
勇者の周りの雑魚共をまずは狙いなさい」
「はい、その様に申しつけます」
「それからトレントくんたちは、少しずつ勇者くんをここまで引き寄せる様に動きなさい。
勇者くんが森の泉まで来たら、あなたも含め一斉に攻撃ね。私もそれを見て動くわ。
とにかく戦闘を切らさない事。
レベルアップとか言う汚い事されたら回復されちゃうもんね」
「人質はいかがなさいますか?」
「ここに連れて来なさい。たっぷり可愛がってあげるわ」
「かしこまりました。既にここにおります」
猿ぐつわをされた少女のパトラが別のマタンゴに連れてこられた。
「ん~!ん~!」
アルラウネがその猿ぐつわを外す様に合図を送る。
猿ぐつわが外され、パトラが解放される。
泣き叫ぶかと思っていたが、黙ってアルラウネを睨み付けている。
「フフフ、健気なお嬢さんねぇ。好きよ、そういうの」
シュルッ!
「きゃっ!」
アルラウネは長いツルを伸はしパトラに巻き付ける。
そして自分の側まで彼女を引き寄せた。
それでもパトラは泣くまいと我慢している様だ。
そんな彼女を見てアルラウネはますます彼女を気に入っていた。
可愛がり甲斐がある…と。
「あなたのお友達も来ているようよ。
小さな男の子」
今まで気丈にしていたパトラの表情が青ざめる。
「まさか…ゲンくんが!?」
その反応にアルラウネは楽しそうに
「名前までは知らないわ…フフフ。
その男の子の事…どうしちゃおうかなぁ」
パトラは完全に取り乱している。
「やめて!私の事は好きにすればいいじゃない!
だからゲンには手を出さないで!」
アルラウネはこの少女をさらに絶望へと誘(いざな)ってやろうと考えた。
「マタンゴクイーンちゃん、その男の子は生かしたままここに連れてきてね。
この女の子の目の前で八つ裂きにしてあげるから」
「やめて!やめてぇ!!」
「ああ、いいわぁ。その叫び声。もっと聞かせて頂戴」
そう言うとアルラウネはペロリとパトラを舐めた。
「さぁ、始めましょう。勇者と私のゲームを。フフフ」
◇◇
マタンゴクイーンがアルラウネの元を去ると、辺りは静寂包まれる。
「あなたはそのゲンくんが好きなの?」
アルラウネはパトラにたずねた。
パトラは一瞬戸惑ったような表情を浮かべたが、コクリと頷いた。
「そうなんだぁ~。いいなぁ、私は恋なんてした事ないから。
好きな相手が出来たら食べちゃいそうだし」
パトラから血の気が引く。
それを見てアルラウネは
「フフフ、冗談よ」
と笑って誤魔化した。
「ああ、私も恋しい勇者様に早く会いたいわ~。そしたら色々と燃えちゃいそう。フフフ」
そうアルラウネが薄気味悪い笑顔を浮かべた時だった。
ドサッ…
と何かが落ちる音がした。
もしかしたらゲンという少年をマタンゴクイーンが運んできたのか?
それにしては早すぎる。
彼女この場を去ってから10分程しか経っていないからだ。
「むっ?何かしら?」
アルラウネは音のした方を注視する。
すると声が聞こえてきた。
「…お望み通りに燃やしてやるよ」
アルラウネは突然の訪問者にこれまでにないくらい驚いた。
「ま、まさか…あなたが勇者?」
「…ああ」
「私の可愛い魔物ちゃん達はどうしたのかしら?」
「…片付けた。全部」
「う、うそよ!そんなわけ…」
そこまで言いかけた時、先ほど落とされたモノがしゃべり出した。
「も、申し訳ございません…アルラウネ様…あまりの強さに…」
それは見る影もなくなったマタンゴクイーンであった…
「…さあ、始めるか。伐採の時間だ」
0
お気に入りに追加
166
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――
金斬 児狐
ファンタジー
ある日、優秀だけど肝心な所が抜けている主人公は同僚と飲みに行った。酔っぱらった同僚を仕方無く家に運び、自分は飲みたらない酒を買い求めに行ったその帰り道、街灯の下に静かに佇む妹的存在兼ストーカーな少女と出逢い、そして、満月の夜に主人公は殺される事となった。どうしようもないバッド・エンドだ。
しかしこの話はそこから始まりを告げる。殺された主人公がなんと、ゴブリンに転生してしまったのだ。普通ならパニックになる所だろうがしかし切り替えが非常に早い主人公はそれでも生きていく事を決意。そして何故か持ち越してしまった能力と知識を駆使し、弱肉強食な世界で力強く生きていくのであった。
しかし彼はまだ知らない。全てはとある存在によって監視されているという事を……。
◆ ◆ ◆
今回は召喚から転生モノに挑戦。普通とはちょっと違った物語を目指します。主人公の能力は基本チート性能ですが、前作程では無いと思われます。
あと日記帳風? で気楽に書かせてもらうので、説明不足な所も多々あるでしょうが納得して下さい。
不定期更新、更新遅進です。
話数は少ないですが、その割には文量が多いので暇なら読んでやって下さい。
※ダイジェ禁止に伴いなろうでは本編を削除し、外伝を掲載しています。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる