出遅れ勇者の無双蹂躙~世界滅亡寸前からの逆襲~

友理潤

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第3章

迷いの森救出戦3

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◇◇
「とうとう勇者くんが来たのねぇ」

迷いの森の奥でアルラウネは嬉しそうに微笑んでいる。
彼女は元来好戦的なタイプであった。
しかし長い間、彼女が直接手を下した相手はない。
なぜなら彼女の城とも言えるこの森を抜けて、彼女の元までにたどり着いた者がいないのだ。
それでも「殺したい」という欲求を満たすだけの為に、時折冒険者をわざと彼女の元に誘って『遊んだ』事はあった。
しかし冒険者が全く現れなくなった最近ではそれさえもなくなった。
その為、自分を脅かそうという勇者の出現を彼女は心の底から喜んでいる。

「ああ~、早くここまで来てくれないかなぁ…」

彼女は恋い焦がれる想い人を待つ心境で、上空を見上げた。
そこにキノコ型の魔物であるマタンゴクイーンがやってくる。

「勇者一行、森の中程まで入って来ました。
いかがしましょう?アルラウネ様」

マタンゴクイーンの問いかけに少し考え込むアルラウネ。
そして指示を出した。

「手加減は無用よん。
ダンスキャロットちゃんたち、サボテンボールくんたちをマンドラゴラちゃんが率いて一斉に攻撃。
勇者の周りの雑魚共をまずは狙いなさい」

「はい、その様に申しつけます」

「それからトレントくんたちは、少しずつ勇者くんをここまで引き寄せる様に動きなさい。
勇者くんが森の泉まで来たら、あなたも含め一斉に攻撃ね。私もそれを見て動くわ。
とにかく戦闘を切らさない事。
レベルアップとか言う汚い事されたら回復されちゃうもんね」

「人質はいかがなさいますか?」

「ここに連れて来なさい。たっぷり可愛がってあげるわ」

「かしこまりました。既にここにおります」

猿ぐつわをされた少女のパトラが別のマタンゴに連れてこられた。

「ん~!ん~!」

アルラウネがその猿ぐつわを外す様に合図を送る。
猿ぐつわが外され、パトラが解放される。
泣き叫ぶかと思っていたが、黙ってアルラウネを睨み付けている。

「フフフ、健気なお嬢さんねぇ。好きよ、そういうの」

シュルッ!

「きゃっ!」

アルラウネは長いツルを伸はしパトラに巻き付ける。
そして自分の側まで彼女を引き寄せた。
それでもパトラは泣くまいと我慢している様だ。
そんな彼女を見てアルラウネはますます彼女を気に入っていた。
可愛がり甲斐がある…と。

「あなたのお友達も来ているようよ。
小さな男の子」

今まで気丈にしていたパトラの表情が青ざめる。

「まさか…ゲンくんが!?」

その反応にアルラウネは楽しそうに
「名前までは知らないわ…フフフ。
その男の子の事…どうしちゃおうかなぁ」

パトラは完全に取り乱している。

「やめて!私の事は好きにすればいいじゃない!
だからゲンには手を出さないで!」

アルラウネはこの少女をさらに絶望へと誘(いざな)ってやろうと考えた。

「マタンゴクイーンちゃん、その男の子は生かしたままここに連れてきてね。
この女の子の目の前で八つ裂きにしてあげるから」

「やめて!やめてぇ!!」

「ああ、いいわぁ。その叫び声。もっと聞かせて頂戴」

そう言うとアルラウネはペロリとパトラを舐めた。

「さぁ、始めましょう。勇者と私のゲームを。フフフ」

◇◇
マタンゴクイーンがアルラウネの元を去ると、辺りは静寂包まれる。
「あなたはそのゲンくんが好きなの?」

アルラウネはパトラにたずねた。
パトラは一瞬戸惑ったような表情を浮かべたが、コクリと頷いた。

「そうなんだぁ~。いいなぁ、私は恋なんてした事ないから。
好きな相手が出来たら食べちゃいそうだし」

パトラから血の気が引く。
それを見てアルラウネは
「フフフ、冗談よ」
と笑って誤魔化した。

「ああ、私も恋しい勇者様に早く会いたいわ~。そしたら色々と燃えちゃいそう。フフフ」

そうアルラウネが薄気味悪い笑顔を浮かべた時だった。

ドサッ…

と何かが落ちる音がした。
もしかしたらゲンという少年をマタンゴクイーンが運んできたのか?
それにしては早すぎる。
彼女この場を去ってから10分程しか経っていないからだ。

「むっ?何かしら?」

アルラウネは音のした方を注視する。
すると声が聞こえてきた。

「…お望み通りに燃やしてやるよ」

アルラウネは突然の訪問者にこれまでにないくらい驚いた。

「ま、まさか…あなたが勇者?」

「…ああ」

「私の可愛い魔物ちゃん達はどうしたのかしら?」

「…片付けた。全部」

「う、うそよ!そんなわけ…」

そこまで言いかけた時、先ほど落とされたモノがしゃべり出した。

「も、申し訳ございません…アルラウネ様…あまりの強さに…」

それは見る影もなくなったマタンゴクイーンであった…

「…さあ、始めるか。伐採の時間だ」


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