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第3章
迷いの森救出戦1
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◇◇
「ヤツは『迷いの森』にさらって行ったに違いないのじゃ」
町長のおばば様は確信を持って俺たちに告げた。
「…なぜ分かる?」
「それはのぅ…」
町長のおばば様はそう言って語り出した。
それによれば、トレントウォーリアーは迷いの森の主である、アルラウネと言う魔物の手下なのだそうだ。
だからアルラウネの元へと逃げていったのではないか、とおばば様は推理していた。
ちなみにその魔物の指示で、森の魔物は、畑や木造の家を攻撃出来ないとの事だ。
なんでも、森に住む者として、同じ植物や木で出来ている物を傷つける事を、アルラウネは嫌っているらしい。
トレントウォーリアーが思わず、畑にいたニワトリを襲った時に、彼自身の口から漏らしていたのを、おばば様が聞いたそうだ。
にわかに信じ難い話だが、他に手掛かりがある訳ではない。
おばば様の言う通りに『迷いの森』へと向かうのが最善だろう。
それに次の目的地へも『迷いの森』を通らなくてはならないのだから、不謹慎ではあるが、一石二鳥と言うやつだ。
パトラを助けたその足でそのままマタ王国に向かおう、そう思っていた。
しかしその為には、この街の住民に頼まなくてはいけない事がある。
「…同行者が欲しい」
「しかしこの街の者では勇者様の足手まといになるかと…」
おばば様は恐縮する。
「…俺が守る」
「はぁ…しかし一体なぜ?」
「…パトラを助けた後…街まで…」
口下手な俺ではここまでしか言葉にならない。
すかさずティナが助け舟を出してくれた。
「そう言う事ね!
『迷いの森』でパトラちゃんを助けた後、私たちはそのままマタ王国へ向けて森を抜けるわ。
だからパトラちゃんを連れて、街まで一緒に帰ってくれる人が欲しいってわけね!?」
俺は黙って頷く。
ティナは俺の意図を汲み取れた事が嬉しかった様で、顔を紅潮させている。
「しかし『迷いの森』に進んで行こうとするような気骨ある人間がこと街にいるかのぅ…」
そうおばば様がうつむいた時、
バン!
と扉からゲン少年が入ってきた。
「俺に行かせてくれ!おばば様!」
みな瞳を大きくしてゲンを見つめる。
「ゲン!お前は盗み聞きしとったのかぁ!お主みたいなしみったれでは、勇者様のお付きなど無理じゃ!
早く家に帰れ!」
おばば様がこぶしを振り上げてゲンを追い払おうとする。
しかしゲンは引かなかった。
「嫌だい!おいらはパトラを助けるんだ!」
ガンとして動かないと言うように仁王立ちしている。
その瞳は決意に燃えて、そこにいる全員を睨みつけていた。
ゲンに対しティナがたずねる。
「ゲンくんはどうしてそんなにパトラちゃんを助けたいのかな?もしかして好きなの?」
ティナが目を細めてゲンを覗き込む。
そんなティナの下世話な問いかけにも、ゲンは毅然と答えた。
「そんなんじゃないやい!
おいらはパトラに約束したんだ!
おいらが森で見つけてきた死んじゃいそうな子猫を助けた時に。
おいらじゃ子猫は世話出来ないから…
パトラが子猫を世話してくれる代わりに、おいらが何があってもパトラを守ってやるって。
だから今度はおいらが守ってやる番なんだ!」
俺はゲンの言い分を聞きながら、パトラを助けた時の事を思い起こしていた。
あの時、彼女自身の命をかけてまで子猫を救おうとしていたのは、もしかしたらゲンとの約束があったからなのかもしれない。
この二人の『約束』への執念は、二人が互いを思いやる『絆』の強さを表しているように、俺には思えた。
俺はヒョイとある物をゲンに投げる。
「おおっと…!わぁ!?」
ゲンはそれを受け取ったものの、その重量感によろめく。
俺が投げたのはナイフであった。
サヤが杖を武器とする前に利用していた物だ。
生活で使う物よりも刃渡りは長く、殺傷能力を高めたので、重量もある。
ゲンにとっては初めての武器であったに違いない。
それを手にして青くなっている。
俺は彼の覚悟を問うように言った。
「…自分の身…守れ」
ゲンが驚いたように俺を見て、
「これって…つまり…」
と、とまどっている。
俺は彼の疑問に答えることなく、その場で立ち上がった。
「…明日は早い」
俺はそう言うと、おばば様が用意してくれた、今夜の寝床へと向かっていく。
それを見たティナが
「明日は早いから、もう寝ろよってさ。
寝坊したら置いていっちゃうぞ~」
とゲンに向かって言った。
そしてポンと彼の頭を軽く叩くと、そのまま彼女も寝床へと向かっていった。
俺は背中にゲンの喜ぶ様を感じながら、部屋を後にした。
「ヤツは『迷いの森』にさらって行ったに違いないのじゃ」
町長のおばば様は確信を持って俺たちに告げた。
「…なぜ分かる?」
「それはのぅ…」
町長のおばば様はそう言って語り出した。
それによれば、トレントウォーリアーは迷いの森の主である、アルラウネと言う魔物の手下なのだそうだ。
だからアルラウネの元へと逃げていったのではないか、とおばば様は推理していた。
ちなみにその魔物の指示で、森の魔物は、畑や木造の家を攻撃出来ないとの事だ。
なんでも、森に住む者として、同じ植物や木で出来ている物を傷つける事を、アルラウネは嫌っているらしい。
トレントウォーリアーが思わず、畑にいたニワトリを襲った時に、彼自身の口から漏らしていたのを、おばば様が聞いたそうだ。
にわかに信じ難い話だが、他に手掛かりがある訳ではない。
おばば様の言う通りに『迷いの森』へと向かうのが最善だろう。
それに次の目的地へも『迷いの森』を通らなくてはならないのだから、不謹慎ではあるが、一石二鳥と言うやつだ。
パトラを助けたその足でそのままマタ王国に向かおう、そう思っていた。
しかしその為には、この街の住民に頼まなくてはいけない事がある。
「…同行者が欲しい」
「しかしこの街の者では勇者様の足手まといになるかと…」
おばば様は恐縮する。
「…俺が守る」
「はぁ…しかし一体なぜ?」
「…パトラを助けた後…街まで…」
口下手な俺ではここまでしか言葉にならない。
すかさずティナが助け舟を出してくれた。
「そう言う事ね!
『迷いの森』でパトラちゃんを助けた後、私たちはそのままマタ王国へ向けて森を抜けるわ。
だからパトラちゃんを連れて、街まで一緒に帰ってくれる人が欲しいってわけね!?」
俺は黙って頷く。
ティナは俺の意図を汲み取れた事が嬉しかった様で、顔を紅潮させている。
「しかし『迷いの森』に進んで行こうとするような気骨ある人間がこと街にいるかのぅ…」
そうおばば様がうつむいた時、
バン!
と扉からゲン少年が入ってきた。
「俺に行かせてくれ!おばば様!」
みな瞳を大きくしてゲンを見つめる。
「ゲン!お前は盗み聞きしとったのかぁ!お主みたいなしみったれでは、勇者様のお付きなど無理じゃ!
早く家に帰れ!」
おばば様がこぶしを振り上げてゲンを追い払おうとする。
しかしゲンは引かなかった。
「嫌だい!おいらはパトラを助けるんだ!」
ガンとして動かないと言うように仁王立ちしている。
その瞳は決意に燃えて、そこにいる全員を睨みつけていた。
ゲンに対しティナがたずねる。
「ゲンくんはどうしてそんなにパトラちゃんを助けたいのかな?もしかして好きなの?」
ティナが目を細めてゲンを覗き込む。
そんなティナの下世話な問いかけにも、ゲンは毅然と答えた。
「そんなんじゃないやい!
おいらはパトラに約束したんだ!
おいらが森で見つけてきた死んじゃいそうな子猫を助けた時に。
おいらじゃ子猫は世話出来ないから…
パトラが子猫を世話してくれる代わりに、おいらが何があってもパトラを守ってやるって。
だから今度はおいらが守ってやる番なんだ!」
俺はゲンの言い分を聞きながら、パトラを助けた時の事を思い起こしていた。
あの時、彼女自身の命をかけてまで子猫を救おうとしていたのは、もしかしたらゲンとの約束があったからなのかもしれない。
この二人の『約束』への執念は、二人が互いを思いやる『絆』の強さを表しているように、俺には思えた。
俺はヒョイとある物をゲンに投げる。
「おおっと…!わぁ!?」
ゲンはそれを受け取ったものの、その重量感によろめく。
俺が投げたのはナイフであった。
サヤが杖を武器とする前に利用していた物だ。
生活で使う物よりも刃渡りは長く、殺傷能力を高めたので、重量もある。
ゲンにとっては初めての武器であったに違いない。
それを手にして青くなっている。
俺は彼の覚悟を問うように言った。
「…自分の身…守れ」
ゲンが驚いたように俺を見て、
「これって…つまり…」
と、とまどっている。
俺は彼の疑問に答えることなく、その場で立ち上がった。
「…明日は早い」
俺はそう言うと、おばば様が用意してくれた、今夜の寝床へと向かっていく。
それを見たティナが
「明日は早いから、もう寝ろよってさ。
寝坊したら置いていっちゃうぞ~」
とゲンに向かって言った。
そしてポンと彼の頭を軽く叩くと、そのまま彼女も寝床へと向かっていった。
俺は背中にゲンの喜ぶ様を感じながら、部屋を後にした。
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