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第2章
サウスオーシャン海戦2
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「右前方に敵影!大砲かまえ!!うてぇーい!!」
ザンザが乗組員たちに指示を出す。
そして乗組員たちもそれに懸命に応えていた。
船から一斉に大砲が放たれる。
ドドーーン!!
「人間ども!そんな攻撃など効かんわ!勇者よ!出て参れ!!」
全くダメージを受ける事なく、大きな槍を持ったマーマンソルジャーが俺を挑発していた。
◇◇
俺たちが魚人の魔物の軍団と遭遇してから、すでに30分は経過していた。
俺は戦闘開始とともに船に結界をはり、物理と魔法の両方の攻撃を防ぐ事に専念していた。
おかげで船にはダメージがない。
しかし海中から突如出現したデビルオクトパスが吐き出した大量の墨により、船の視界は完全に塞がれている。
その上、どこからともなく耳に入ってきた歌声で乗組員の何人かが苦しみ出して、全く動けなくなってしまったのだ。
その為に船の進行は大きく遅れていた。
魚人たちの攻撃も苛烈を極め、このままでは陸にたどり着くまでに結界が破られてしまう可能性が高かった。
船からも大砲などで迎撃を試みてはいるが、焼け石に水な状態で、魔物たちの勢いを殺す事にはつながらなかった。
「…じり貧か…」
ドゴーン!!
大きな音とともに船が大きく揺れる。
いかに強固な結界をはっていても、強い物理攻撃による振動は伝わってくるのだ。
「キャア!」
目の前の人物が船の揺れに耐えかねて、倒れかかったのを俺は支えた。
その手には柔らかな、身に覚えのある感触…
「ありがとうございます、ご主人さま」
サヤだった。
客室で待機しておく様に申し付けたなずなのだが、なぜ甲板にいるのだろう。
そんな俺の疑問に彼女自ら答えた。
「ご主人さま、サヤも戦います!お手伝いをさせて下さい」
そんな彼女の申し出を俺は
「…お前では無理だ。帰れ」
とすぐさま否定した。
現に彼女のレベルは40近くまで上がっている。
しかしこの海の魔物たちは、おそらく60以上のレベルだ。
彼女ではダメージすらまともに与える事が出来ないと考えられた。
あっさりと俺に否定され、さすがにショックだったのか、小さくなって今にも泣きそうにしているサヤ。
俺はそんな彼女には目もくれず、目の前の魔法陣に魔力を注ぐ事に集中した。
俺の魔力も底抜けではない。
もってあと2時間だ。
それまでに陸地にたどり着く事が出来なければ、船は破壊されてしまうだろう。
それは俺たちの敗北を意味していた。
そんな切羽詰まった状況であるため、サヤに構っている余裕はないのだ。
もし彼女が前線に立って、命の危機にさらされたりでもしたら、確実に彼女か船のどちらかを守りきれないであろう。
彼女には申し訳ないが、船の中で待機してもらうことがここでは最善であると俺は考えていたのだ。
せめて周囲にいる魔物たちだけでも一掃する事が出来れば…と俺はもどかしい思いに駈られる。
そんな俺の様子を見て、心配そうにサヤが俺に寄り添ってきた。
「ご主人さま…」
俺はちらりとサヤを見る。
しかしなぜか彼女を見ると集中が乱されるのだ。
そんな俺の集中力の乱れはそのまま船へのダメージとつながる。
ドカーーン!!
またしても大きく船が揺れた。
身体ごと押し付けて俺にしがみつくサヤ。
「…サヤ…そろそろ戻れ」
と俺は命じた。
しかしサヤは意外な提案で俺の命令に反抗してきたのだ。
「ご主人さま…私が結界へ魔力を送ります。ご主人さまは前線で魔物を退治すると言うのはいかがでしょう」
俺は大きく目を見開いた。
結界の魔法など教えていないので、例え魔力を送るだけとは言え、彼女には出来ないのではないか…そう思った。
しかしそれも彼女は先手を打つように否定する。
「ご主人さまの魔力を送る様子を見て、サヤにも短時間であれば出来そうです」
「…どれくらいだ?」
と俺はサヤに聞く。
サヤは俺にしがみついたまま、真剣な眼差しで答えた。
「15分くらいは」
俺は片手で魔力を送りながら、残った手で彼女の頭をなでた。
サヤは嬉しそうに顔を赤らめていた。
「…10分だ」
「はい」
彼女に限界まで負担をさせたくない。
そんな思いで彼女が申し出た時間よりも短い時間で俺はこの場所に戻ってくる事を約束した。
「ご主人さま、ご無事で」
そうサヤは俺に告げると魔力を魔法陣に流す構えをした。
「…今だ」
という俺の合図とともに、魔力はサヤから流され始める。
これでようやく俺が魔物たちと直接対峙出来るようになった。
俺は腕をぐるりと回すと、殺気を一気に高める。
わずか10分…しかしそれだけあれば十分だ。
俺は甲板の先端まで疾風のごとく、一気に駆け出していった。
「…蹂躙の時間だ。覚悟しろ、魔族ども」
ザンザが乗組員たちに指示を出す。
そして乗組員たちもそれに懸命に応えていた。
船から一斉に大砲が放たれる。
ドドーーン!!
「人間ども!そんな攻撃など効かんわ!勇者よ!出て参れ!!」
全くダメージを受ける事なく、大きな槍を持ったマーマンソルジャーが俺を挑発していた。
◇◇
俺たちが魚人の魔物の軍団と遭遇してから、すでに30分は経過していた。
俺は戦闘開始とともに船に結界をはり、物理と魔法の両方の攻撃を防ぐ事に専念していた。
おかげで船にはダメージがない。
しかし海中から突如出現したデビルオクトパスが吐き出した大量の墨により、船の視界は完全に塞がれている。
その上、どこからともなく耳に入ってきた歌声で乗組員の何人かが苦しみ出して、全く動けなくなってしまったのだ。
その為に船の進行は大きく遅れていた。
魚人たちの攻撃も苛烈を極め、このままでは陸にたどり着くまでに結界が破られてしまう可能性が高かった。
船からも大砲などで迎撃を試みてはいるが、焼け石に水な状態で、魔物たちの勢いを殺す事にはつながらなかった。
「…じり貧か…」
ドゴーン!!
大きな音とともに船が大きく揺れる。
いかに強固な結界をはっていても、強い物理攻撃による振動は伝わってくるのだ。
「キャア!」
目の前の人物が船の揺れに耐えかねて、倒れかかったのを俺は支えた。
その手には柔らかな、身に覚えのある感触…
「ありがとうございます、ご主人さま」
サヤだった。
客室で待機しておく様に申し付けたなずなのだが、なぜ甲板にいるのだろう。
そんな俺の疑問に彼女自ら答えた。
「ご主人さま、サヤも戦います!お手伝いをさせて下さい」
そんな彼女の申し出を俺は
「…お前では無理だ。帰れ」
とすぐさま否定した。
現に彼女のレベルは40近くまで上がっている。
しかしこの海の魔物たちは、おそらく60以上のレベルだ。
彼女ではダメージすらまともに与える事が出来ないと考えられた。
あっさりと俺に否定され、さすがにショックだったのか、小さくなって今にも泣きそうにしているサヤ。
俺はそんな彼女には目もくれず、目の前の魔法陣に魔力を注ぐ事に集中した。
俺の魔力も底抜けではない。
もってあと2時間だ。
それまでに陸地にたどり着く事が出来なければ、船は破壊されてしまうだろう。
それは俺たちの敗北を意味していた。
そんな切羽詰まった状況であるため、サヤに構っている余裕はないのだ。
もし彼女が前線に立って、命の危機にさらされたりでもしたら、確実に彼女か船のどちらかを守りきれないであろう。
彼女には申し訳ないが、船の中で待機してもらうことがここでは最善であると俺は考えていたのだ。
せめて周囲にいる魔物たちだけでも一掃する事が出来れば…と俺はもどかしい思いに駈られる。
そんな俺の様子を見て、心配そうにサヤが俺に寄り添ってきた。
「ご主人さま…」
俺はちらりとサヤを見る。
しかしなぜか彼女を見ると集中が乱されるのだ。
そんな俺の集中力の乱れはそのまま船へのダメージとつながる。
ドカーーン!!
またしても大きく船が揺れた。
身体ごと押し付けて俺にしがみつくサヤ。
「…サヤ…そろそろ戻れ」
と俺は命じた。
しかしサヤは意外な提案で俺の命令に反抗してきたのだ。
「ご主人さま…私が結界へ魔力を送ります。ご主人さまは前線で魔物を退治すると言うのはいかがでしょう」
俺は大きく目を見開いた。
結界の魔法など教えていないので、例え魔力を送るだけとは言え、彼女には出来ないのではないか…そう思った。
しかしそれも彼女は先手を打つように否定する。
「ご主人さまの魔力を送る様子を見て、サヤにも短時間であれば出来そうです」
「…どれくらいだ?」
と俺はサヤに聞く。
サヤは俺にしがみついたまま、真剣な眼差しで答えた。
「15分くらいは」
俺は片手で魔力を送りながら、残った手で彼女の頭をなでた。
サヤは嬉しそうに顔を赤らめていた。
「…10分だ」
「はい」
彼女に限界まで負担をさせたくない。
そんな思いで彼女が申し出た時間よりも短い時間で俺はこの場所に戻ってくる事を約束した。
「ご主人さま、ご無事で」
そうサヤは俺に告げると魔力を魔法陣に流す構えをした。
「…今だ」
という俺の合図とともに、魔力はサヤから流され始める。
これでようやく俺が魔物たちと直接対峙出来るようになった。
俺は腕をぐるりと回すと、殺気を一気に高める。
わずか10分…しかしそれだけあれば十分だ。
俺は甲板の先端まで疾風のごとく、一気に駆け出していった。
「…蹂躙の時間だ。覚悟しろ、魔族ども」
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