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第2章
サウスオーシャン海戦1
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アステリア王国の大陸は世界地図では南東の端に位置している。
ポートの街からサウスオーシャンという海洋を越えると大きな大陸に出る。
俺たちはその航路を順調に進んでいた。
「そろそろですぜ、兄貴!」
そう俺に声をかけたのはサンザという乗組員のリーダーだ。
彼は元々海賊をしていたが、貿易商のケントに諭され改心し、今では船の舵取りから乗組員の教育までこなす。
非常に頼りになる男なのだ。
年齢は30を超えたくらいで、筋肉質でよく日に焼けた体、頬に海賊時代につけたという大きな傷があるのが特徴だ。
そのザンザが俺に忠告してきたのは、海の魔物が出現する海域の近くまで近付いてきたという事を教えてくれたのだ。
「…あとどれくらいだ?」
と俺は問う。
「そうだな…あと1時間といったところかな…」
とザンザは答えた。
「…ではそこからどれくらいで大陸に着く?」
「ふむ、順調にいけば2時間といったところだな」
「…そうか」
俺は魔王軍との海戦を予想していた。
しかもゴブリンキングやムクロのような無様な戦い方はしてこないだろうことも。
なぜなら彼らの敗戦と俺の強さはつぶさに魔王に知られているはずだからだ。
「…ザンザが魔物ならどうする?」
と俺は海の魔物がどう対抗してくるか聞いてみた。
ザンザはしばらく考えると
「船だな…俺が魔物なら船の破壊を狙う」
と答えた。
「…なぜ?」
「兄貴は強い、だが船はもろい。簡単な事さ」
「…なるほど」
つまり船を守りながら戦う事が求められる。
そして海上での戦いは自分から戦場に飛び出せない、つまり動きがかなり制限されるのだ。
正直、かなり不利と言わざるを得ない。
俺が苦い顔をしていると、ザンザがバッサリと切り捨てる様に言った。
「兄貴、海での戦いを挑んだら兄貴が負けだな」
俺は否定できずに余計に苦い顔をする。
「ガハハハ!兄貴でもそんな顔するんだな!」
「…うるさい」
俺が少しムッとすると、ザンザは笑いながらめじりを抑えて言った。
「すまん、すまん。大軍を相手に一歩も引かないどころか、あっさりと殲滅させちまった兄貴がビビっているのを見てつい可笑しくなっちまってな」
「…ビビってる…か…」
そうザンザには伝わっているのか…
そんな感情は999年の地獄の日々ですっかりなくなってしまったのだが…
俺は思わず苦笑いが漏れてしまう。
その様子不思議そうに見ていたザンザは
「どうします?兄貴?」
と尋ねてきた。
「…陸で戦う」
と俺は短く答える。
その答えにザンザがニヤリと笑った。
「よっしゃ!じゃあ全力疾走で大陸を目指すぜ!」
とその場を後にして操舵室の方へと急いでいった。
俺は船を守る結界をはる為の魔法陣を書く。
こうすれば小さな魔力で強い結界がはれるのだ。
魔法陣を書き終えて甲板に戻ってくる。
あと30分程で開戦のはずだ。
俺は操舵室のザンザをちらりと見た。
彼の方も俺を見ている。
俺は合図を送る様に頷いた。
彼は親指を立てて、その合図に答える。
圧倒的不利な戦場での進軍。
普通に考えればすぐに船は粉々となるであろう。
しかし俺は確信していた。
粉々になるのはヤツらの方だと…
「…行くぞ!押し通す!!」
◇◇
「マーマンキャンサーよ、勇者の動きはどうだ?」
そう問いかけたのは、巨大なイカのような魔物だ。
イカと同様に足が10本あるが、決定的に違うのはその足の先全てに目と大きな口、鋭い牙がある。
この魔物こそ魔王直属第13軍団の軍団長、クラーケンである。
「はい、クラーケン様。最前線のマーマンソルジャーによりますと、ポートの街を出て、真っ直ぐに西に向かっており、間もなく彼らの軍勢と対峙するとの事です」
そう答えたのはマーマンキャンサーと呼ばれた魚人だ。
全身が鱗で覆われているが、上半身は人間で下半身が魚の形をしている。
しかし足はあり、地上でも歩行する事は可能だ。
キャンサーと呼ばれる程、彼は魔法を得意とし頭も切れた。
クラーケンの側近として常に彼に伴っている。
「そうか…勇者と言えども海の上では赤子も同然、芸もなく真っ直ぐ突っ込んできたという訳か」
クラーケンは静かに答えた。
「いかがしますか?このままマーマンソルジャーに当たらせますか?」
「正面からは彼らでよい。海中からデビルオクトパスの軍勢を仕向けろ」
デビルオクトパスというのは大きなタコの魔物である。破壊力のある足を使った打撃が特徴的だ。
「さらにセイレーン部隊には遠隔で歌による精神攻撃を仕掛けるように指示を出せ」
「はい、仰せの通りに。クラーケン様は出撃されますかな?」
「いや、ゴブリンキングやムクロとは同じてつは踏まない。折りを見てそちと一緒に出撃するとしよう」
「かしこまりました」
マーマンキャンサーはそう言うとそのままクラーケンの元から去っていった。
クラーケンは静かに
「勇者よ、海の王者の力を思い知るがいい」
と闘志を燃やしていた。
ポートの街からサウスオーシャンという海洋を越えると大きな大陸に出る。
俺たちはその航路を順調に進んでいた。
「そろそろですぜ、兄貴!」
そう俺に声をかけたのはサンザという乗組員のリーダーだ。
彼は元々海賊をしていたが、貿易商のケントに諭され改心し、今では船の舵取りから乗組員の教育までこなす。
非常に頼りになる男なのだ。
年齢は30を超えたくらいで、筋肉質でよく日に焼けた体、頬に海賊時代につけたという大きな傷があるのが特徴だ。
そのザンザが俺に忠告してきたのは、海の魔物が出現する海域の近くまで近付いてきたという事を教えてくれたのだ。
「…あとどれくらいだ?」
と俺は問う。
「そうだな…あと1時間といったところかな…」
とザンザは答えた。
「…ではそこからどれくらいで大陸に着く?」
「ふむ、順調にいけば2時間といったところだな」
「…そうか」
俺は魔王軍との海戦を予想していた。
しかもゴブリンキングやムクロのような無様な戦い方はしてこないだろうことも。
なぜなら彼らの敗戦と俺の強さはつぶさに魔王に知られているはずだからだ。
「…ザンザが魔物ならどうする?」
と俺は海の魔物がどう対抗してくるか聞いてみた。
ザンザはしばらく考えると
「船だな…俺が魔物なら船の破壊を狙う」
と答えた。
「…なぜ?」
「兄貴は強い、だが船はもろい。簡単な事さ」
「…なるほど」
つまり船を守りながら戦う事が求められる。
そして海上での戦いは自分から戦場に飛び出せない、つまり動きがかなり制限されるのだ。
正直、かなり不利と言わざるを得ない。
俺が苦い顔をしていると、ザンザがバッサリと切り捨てる様に言った。
「兄貴、海での戦いを挑んだら兄貴が負けだな」
俺は否定できずに余計に苦い顔をする。
「ガハハハ!兄貴でもそんな顔するんだな!」
「…うるさい」
俺が少しムッとすると、ザンザは笑いながらめじりを抑えて言った。
「すまん、すまん。大軍を相手に一歩も引かないどころか、あっさりと殲滅させちまった兄貴がビビっているのを見てつい可笑しくなっちまってな」
「…ビビってる…か…」
そうザンザには伝わっているのか…
そんな感情は999年の地獄の日々ですっかりなくなってしまったのだが…
俺は思わず苦笑いが漏れてしまう。
その様子不思議そうに見ていたザンザは
「どうします?兄貴?」
と尋ねてきた。
「…陸で戦う」
と俺は短く答える。
その答えにザンザがニヤリと笑った。
「よっしゃ!じゃあ全力疾走で大陸を目指すぜ!」
とその場を後にして操舵室の方へと急いでいった。
俺は船を守る結界をはる為の魔法陣を書く。
こうすれば小さな魔力で強い結界がはれるのだ。
魔法陣を書き終えて甲板に戻ってくる。
あと30分程で開戦のはずだ。
俺は操舵室のザンザをちらりと見た。
彼の方も俺を見ている。
俺は合図を送る様に頷いた。
彼は親指を立てて、その合図に答える。
圧倒的不利な戦場での進軍。
普通に考えればすぐに船は粉々となるであろう。
しかし俺は確信していた。
粉々になるのはヤツらの方だと…
「…行くぞ!押し通す!!」
◇◇
「マーマンキャンサーよ、勇者の動きはどうだ?」
そう問いかけたのは、巨大なイカのような魔物だ。
イカと同様に足が10本あるが、決定的に違うのはその足の先全てに目と大きな口、鋭い牙がある。
この魔物こそ魔王直属第13軍団の軍団長、クラーケンである。
「はい、クラーケン様。最前線のマーマンソルジャーによりますと、ポートの街を出て、真っ直ぐに西に向かっており、間もなく彼らの軍勢と対峙するとの事です」
そう答えたのはマーマンキャンサーと呼ばれた魚人だ。
全身が鱗で覆われているが、上半身は人間で下半身が魚の形をしている。
しかし足はあり、地上でも歩行する事は可能だ。
キャンサーと呼ばれる程、彼は魔法を得意とし頭も切れた。
クラーケンの側近として常に彼に伴っている。
「そうか…勇者と言えども海の上では赤子も同然、芸もなく真っ直ぐ突っ込んできたという訳か」
クラーケンは静かに答えた。
「いかがしますか?このままマーマンソルジャーに当たらせますか?」
「正面からは彼らでよい。海中からデビルオクトパスの軍勢を仕向けろ」
デビルオクトパスというのは大きなタコの魔物である。破壊力のある足を使った打撃が特徴的だ。
「さらにセイレーン部隊には遠隔で歌による精神攻撃を仕掛けるように指示を出せ」
「はい、仰せの通りに。クラーケン様は出撃されますかな?」
「いや、ゴブリンキングやムクロとは同じてつは踏まない。折りを見てそちと一緒に出撃するとしよう」
「かしこまりました」
マーマンキャンサーはそう言うとそのままクラーケンの元から去っていった。
クラーケンは静かに
「勇者よ、海の王者の力を思い知るがいい」
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