6 / 79
第1章
アステリア王国防衛戦6
しおりを挟む
ゴブリンキングは両手にナイフを手にしている。
両方とも刃の色が紫色だ。
確実に毒が塗られているに違いない。
つまり、かすりでもしたら俺は死ぬ。
「…面白い」
俺は思わず笑みが溢れる。
この感覚…命をやりとりする、擦りきれる様な緊張感。
これこそが居心地の良い感覚だ。
なぜなら999年もの間、そこに身を置いていたのだから…
「行くぞ!ニンゲン!」
ゴブリンキングは丁寧にそう言うと、一気に距離を詰めてきた。
思いの外その出足は早い。
「ナイフ・シャワー!」
ゴブリンキングがスキルを放つ。
両方のナイフを器用に交互に繰り出して、避ける隙を与えない。
一撃の力はさほどないが、スピードを重視した良スキルだ。
しかし、スキルを放つタイミングが、俺に言わせれば、少し早すぎだ。
俺を射程に入れる前から放ってきているので、その動きを冷静に見極めやすい。
俺は少し距離を取ると、ゴブリンキングの片手めがけて蹴り上げた。
ガッッ!
手を蹴りが的確に捉える。
毒ナイフが宙に舞う。
それを俺は空中で拾うと、ゴブリンキングに向けて投げつけた。
ゴブリンキングの反応が少し遅れる。
そして俺の投擲は、彼の頬を少し掠めた。
猛毒が塗られていれば、ものの5秒で倒れるはずだ。
しかし、彼は倒れなかった。
やはり…そうきたか…流石は魔王の直属だけあって、甘くはないな。
「ヒャッヒャッヒャ!残念だったなぁ、ニンゲン!俺様には効かない毒が塗られているのさ、このナイフにはよう!」
そう言ってゴブリンキングはナイフの刃をペロリと舐めた。
そして、腰からもう一振りのナイフを手にする。
何本持っているかな…?あのナイフ。
そんなくだらない事を考えられる程、余裕が俺にはあった。
しかし、ゴブリンキングもまだ余裕の表情を浮かべている。
相手のレベルが自分より低く、魔力もスキルポイントも残っていなければ、誰でも勝てない理由を思いつける方が難しいと言うものだ。
「ヒャッヒャッヒャ!ところで、俺様にどう立ち向かうつもりだ?その腰の一振りか?」
俺は首を横に降る。
素早い動きのナイフ二刀に、多少大振りの短剣では、正直リスクが大きい。
最悪腕一本でも断たせて、かすり傷でも負わせれば、ゴブリンキングの勝利なのだ。
俺は短剣を使う事を断念せざるを得ない。
となると、残りの選択肢は一つだ。
「…素手」
ゴブリンキングもその回答は予想していたのであろう。
喜色で顔が歪む。
「ヒャッヒャッヒャ!そうか!ニンゲン!では、それで俺様を楽しませてくれよ!」
だから、俺のセリフを取るな…
ゴブリンとの戦闘が再開する。
彼は次は魔法を使ってくる。
「風の妖精よ!我に力を!我を疾風と化せ!『スピードブレイク』」
ゴブリンの身体を薄い緑色した空気が纏う。
『スピードブレイク』は、足の速さだけではなく、攻撃速度も高める補助魔法だ。
ただでさえ素早さの高いゴブリンキングがその特長をさらに高める。
戦略としては上出来だ。
「ヒャッヒャッヒャ!そ~ら!かわせるかなぁ!?」
ゴブリンキングが一気に差を詰めてくる。
そして変わらず射程の外からスキルを放ってくる。
「ナイフ・シャワー!!」
こいつ…これしか使えないのか…?
超スピードで繰り出されるナイフ技。
もはや目では追い付けない程、短時間にナイフが無数回繰り出される。
繰り返し思う。戦略としては『上出来』だ。
しかし、
『最良』ではない。
ゴブリンキングの射程に俺が入る。
俺は腰の剣を抜く。
「ヒャッヒャッヒャ!その『大振り』な剣と俺様の『超速』ナイフ、どちらが先に相手に届くかなぁ!?」
「…甘い」
俺は抜いた剣を…
盾の様に構えた。
攻撃に使うのではない。
守る為に。
かわすのは不可能。では、盾で受ければ良い。
「な!!?なに!?」
ガキィィィン!!
ナイフと剣のぶつかった瞬間、鉄同士が作り出す大きな音が周囲にこだまする。
そして、その瞬間こそ、ゴブリンキングの戦略が『下策』と変わった時であった。
俺はナイフを剣で受けた瞬間に、グンと前に剣を押しだす。
パワーに欠けるゴブリンキングはその瞬間、大きくよろめいた。
そう彼は自分の非力を捨てていたのだ。これこそが彼の戦略が『下策』である理由である。
大きくのけぞる瞬間を見逃さず、俺は広く空いた彼の腹に拳を繰り出す。
ドゴォォォォン!!!
俺の右手が彼の鳩尾にめり込んだ瞬間に、彼は派手に後方に吹き飛んだ。
両方とも刃の色が紫色だ。
確実に毒が塗られているに違いない。
つまり、かすりでもしたら俺は死ぬ。
「…面白い」
俺は思わず笑みが溢れる。
この感覚…命をやりとりする、擦りきれる様な緊張感。
これこそが居心地の良い感覚だ。
なぜなら999年もの間、そこに身を置いていたのだから…
「行くぞ!ニンゲン!」
ゴブリンキングは丁寧にそう言うと、一気に距離を詰めてきた。
思いの外その出足は早い。
「ナイフ・シャワー!」
ゴブリンキングがスキルを放つ。
両方のナイフを器用に交互に繰り出して、避ける隙を与えない。
一撃の力はさほどないが、スピードを重視した良スキルだ。
しかし、スキルを放つタイミングが、俺に言わせれば、少し早すぎだ。
俺を射程に入れる前から放ってきているので、その動きを冷静に見極めやすい。
俺は少し距離を取ると、ゴブリンキングの片手めがけて蹴り上げた。
ガッッ!
手を蹴りが的確に捉える。
毒ナイフが宙に舞う。
それを俺は空中で拾うと、ゴブリンキングに向けて投げつけた。
ゴブリンキングの反応が少し遅れる。
そして俺の投擲は、彼の頬を少し掠めた。
猛毒が塗られていれば、ものの5秒で倒れるはずだ。
しかし、彼は倒れなかった。
やはり…そうきたか…流石は魔王の直属だけあって、甘くはないな。
「ヒャッヒャッヒャ!残念だったなぁ、ニンゲン!俺様には効かない毒が塗られているのさ、このナイフにはよう!」
そう言ってゴブリンキングはナイフの刃をペロリと舐めた。
そして、腰からもう一振りのナイフを手にする。
何本持っているかな…?あのナイフ。
そんなくだらない事を考えられる程、余裕が俺にはあった。
しかし、ゴブリンキングもまだ余裕の表情を浮かべている。
相手のレベルが自分より低く、魔力もスキルポイントも残っていなければ、誰でも勝てない理由を思いつける方が難しいと言うものだ。
「ヒャッヒャッヒャ!ところで、俺様にどう立ち向かうつもりだ?その腰の一振りか?」
俺は首を横に降る。
素早い動きのナイフ二刀に、多少大振りの短剣では、正直リスクが大きい。
最悪腕一本でも断たせて、かすり傷でも負わせれば、ゴブリンキングの勝利なのだ。
俺は短剣を使う事を断念せざるを得ない。
となると、残りの選択肢は一つだ。
「…素手」
ゴブリンキングもその回答は予想していたのであろう。
喜色で顔が歪む。
「ヒャッヒャッヒャ!そうか!ニンゲン!では、それで俺様を楽しませてくれよ!」
だから、俺のセリフを取るな…
ゴブリンとの戦闘が再開する。
彼は次は魔法を使ってくる。
「風の妖精よ!我に力を!我を疾風と化せ!『スピードブレイク』」
ゴブリンの身体を薄い緑色した空気が纏う。
『スピードブレイク』は、足の速さだけではなく、攻撃速度も高める補助魔法だ。
ただでさえ素早さの高いゴブリンキングがその特長をさらに高める。
戦略としては上出来だ。
「ヒャッヒャッヒャ!そ~ら!かわせるかなぁ!?」
ゴブリンキングが一気に差を詰めてくる。
そして変わらず射程の外からスキルを放ってくる。
「ナイフ・シャワー!!」
こいつ…これしか使えないのか…?
超スピードで繰り出されるナイフ技。
もはや目では追い付けない程、短時間にナイフが無数回繰り出される。
繰り返し思う。戦略としては『上出来』だ。
しかし、
『最良』ではない。
ゴブリンキングの射程に俺が入る。
俺は腰の剣を抜く。
「ヒャッヒャッヒャ!その『大振り』な剣と俺様の『超速』ナイフ、どちらが先に相手に届くかなぁ!?」
「…甘い」
俺は抜いた剣を…
盾の様に構えた。
攻撃に使うのではない。
守る為に。
かわすのは不可能。では、盾で受ければ良い。
「な!!?なに!?」
ガキィィィン!!
ナイフと剣のぶつかった瞬間、鉄同士が作り出す大きな音が周囲にこだまする。
そして、その瞬間こそ、ゴブリンキングの戦略が『下策』と変わった時であった。
俺はナイフを剣で受けた瞬間に、グンと前に剣を押しだす。
パワーに欠けるゴブリンキングはその瞬間、大きくよろめいた。
そう彼は自分の非力を捨てていたのだ。これこそが彼の戦略が『下策』である理由である。
大きくのけぞる瞬間を見逃さず、俺は広く空いた彼の腹に拳を繰り出す。
ドゴォォォォン!!!
俺の右手が彼の鳩尾にめり込んだ瞬間に、彼は派手に後方に吹き飛んだ。
0
お気に入りに追加
166
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――
金斬 児狐
ファンタジー
ある日、優秀だけど肝心な所が抜けている主人公は同僚と飲みに行った。酔っぱらった同僚を仕方無く家に運び、自分は飲みたらない酒を買い求めに行ったその帰り道、街灯の下に静かに佇む妹的存在兼ストーカーな少女と出逢い、そして、満月の夜に主人公は殺される事となった。どうしようもないバッド・エンドだ。
しかしこの話はそこから始まりを告げる。殺された主人公がなんと、ゴブリンに転生してしまったのだ。普通ならパニックになる所だろうがしかし切り替えが非常に早い主人公はそれでも生きていく事を決意。そして何故か持ち越してしまった能力と知識を駆使し、弱肉強食な世界で力強く生きていくのであった。
しかし彼はまだ知らない。全てはとある存在によって監視されているという事を……。
◆ ◆ ◆
今回は召喚から転生モノに挑戦。普通とはちょっと違った物語を目指します。主人公の能力は基本チート性能ですが、前作程では無いと思われます。
あと日記帳風? で気楽に書かせてもらうので、説明不足な所も多々あるでしょうが納得して下さい。
不定期更新、更新遅進です。
話数は少ないですが、その割には文量が多いので暇なら読んでやって下さい。
※ダイジェ禁止に伴いなろうでは本編を削除し、外伝を掲載しています。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる