出遅れ勇者の無双蹂躙~世界滅亡寸前からの逆襲~

友理潤

文字の大きさ
上 下
5 / 79
第1章

アステリア王国防衛戦5

しおりを挟む
スタ…スタ…スタ…

一体のゴブリンがその軍勢の先頭までゆっくりとその歩を進めてきた。

他のゴブリンとは風貌が全く異なっている。
背は180cm程の細身。
いかにも軽い素材でできた金属製のプレートで胸を覆い、頭は冠だけを着け、顔は晒している。
顔立ちもどこか人間に近い。
肌の色は、他のゴブリンと同じくくすんだ緑色だ。

風貌だけでなく雰囲気も威圧感も他のモブどもとは一味違っていた。

そして大声で言い放った。

「俺様はゴブリンキング!
魔王様直属の第20軍の軍団長であり、ゴブリンを束ねる王だ!」

ゴブリンキングは、思いの外高い声で、そう名乗った。
存外礼儀正しかった為に、少し拍子抜けだ。

「貴様…ニンゲンよ!貴様は何者だ!?」

ふん!冥土の土産にでも俺の名前を持って行ってもらうか。
そんな風に啖呵を切るやと思いきや、出てきた言葉はやはり唯の一言だった。

「…勇者だ」

「なにぃ?勇者だと?
ウッヒャッヒャ~!
これは笑わせてくれる!」

ゴブリンキングは心底可笑しそうに腹を抱えて笑っている。

「勇者など、この1,000年もの間、何人現れた?
10年に一人は『勇者』を語っては、魔王軍に挑み、無惨になぶり殺されていたではないか!」

そうだったのか…所謂『偽物』というのが、様々な時代で『勇者』を名乗っていたのか…

「そりゃそうだよなぁ!ニンゲン!
この城から旅立つ勇者は、みんな『レベル1』だ。
この辺り一帯をこの100年間任された俺たちゴブリンの平均レベルは『30』。
そりゃあ、旅立った瞬間に殺されるわぁなぁ~!ヒャッヒャッヒャ~!」

なるほど。
魔王も馬鹿ではないと言うことか。

勇者の出現は必然。
であれば、その勇者が弱い内に叩く。
戦略としては、ごく基本的な事と言える。

それに引き換え、何の策もなく、勇者だけに頼って、ただ滅びるのを座して待つ人間…
少し寂しい気がする。


「…で、貴様のレベルはいくつだ!?」

「…1」

「…な、なんだと…『レベル1』で、俺様の子分100体と、第4軍団デビルエンパイア様のガーゴイルを100体を、たったの一人で倒したというのか!?」

「…悪いか?」

「ありえん!ありえん!ありえん!そんな事あってはなら~~ん!」

ゴブリンキングはかなり混乱している様だ。
今ならサクッと倒せてしまえそうだが、距離が離れすぎていて無理だ。

「まぁ良い…ところで、貴様の魔力はあとどれくらいあるのだ?」

俺の余力を知りたいという訳か…

「…0」

俺は素直に答えた。ぶっきらぼうに。

ゴブリンキングの顔に余裕が戻る。

「ヒャッヒャッヒャ!では聞くが、スキルポイントは?」

スキルポイントと言うのは、魔法剣や神速斬などを利用する際に必要となる体力の様なものだ。
これがなくなるとスキルは放てない。

「…0」

「ウヒャッヒャ~!!残念だったなぁ!ニンゲン!
ここまでたどり着くのが精一杯だったと言う事か!?」

「…さて…」

「まぁ良い。この俺様と話が出来たと言う事が冥土の土産になると言うものだ!」

そのセリフ…俺が言いたかったやつだ…
こいつ許さん。俺は沸々と燃えてきた。

そして、ゴブリンキングはいつの間にか手にしていた『生首』を俺の足元に投げた。

まだ20代前半の青年だ。
金髪で整った顔立ちが、高貴な身分であることを物語っている。

「…誰だ?」

「ヒャッヒヤッヒャ!そいつを知らないのか?じゃあ『外者』である事は間違いないようだな!」

その時、俺の背後から、凄まじい女の絶叫がこだました。

「キャァァァァ!!!」

何事かと振り返ると、レイナが真っ青な顔で『生首』を凝視していた。

「お兄様~~~~!!!」

「ヒャッヒャヒャ!!そうさ!その首はアステリア第一王子の首さぁ!
意地らしくも俺様に単身で挑んできたから、その首だけは食わずにとって置いてやったのさ!」

なるほど…首以外は…食ったのか…

「次は貴様の番だ!
俺様が直々に相手してやる!
俺様に勝てば、軍は引いてやる!
良い条件だと思わんか!?
ヒャッヒャッヒャ!」

「…かかってこい」

俺は挑発するように手招きした。

少しは楽しませてくれよ!?
『キング』なんだから!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――

金斬 児狐
ファンタジー
 ある日、優秀だけど肝心な所が抜けている主人公は同僚と飲みに行った。酔っぱらった同僚を仕方無く家に運び、自分は飲みたらない酒を買い求めに行ったその帰り道、街灯の下に静かに佇む妹的存在兼ストーカーな少女と出逢い、そして、満月の夜に主人公は殺される事となった。どうしようもないバッド・エンドだ。  しかしこの話はそこから始まりを告げる。殺された主人公がなんと、ゴブリンに転生してしまったのだ。普通ならパニックになる所だろうがしかし切り替えが非常に早い主人公はそれでも生きていく事を決意。そして何故か持ち越してしまった能力と知識を駆使し、弱肉強食な世界で力強く生きていくのであった。  しかし彼はまだ知らない。全てはとある存在によって監視されているという事を……。  ◆ ◆ ◆  今回は召喚から転生モノに挑戦。普通とはちょっと違った物語を目指します。主人公の能力は基本チート性能ですが、前作程では無いと思われます。  あと日記帳風? で気楽に書かせてもらうので、説明不足な所も多々あるでしょうが納得して下さい。  不定期更新、更新遅進です。  話数は少ないですが、その割には文量が多いので暇なら読んでやって下さい。    ※ダイジェ禁止に伴いなろうでは本編を削除し、外伝を掲載しています。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

処理中です...