出遅れ勇者の無双蹂躙~世界滅亡寸前からの逆襲~

友理潤

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第1章

アステリア王国防衛戦4

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俺は橋に向けて駆け出し、橋の手前から剣を振るった。
10mの長さもある剣だが、そこに重さはない。
短剣時と変わらない剣速と切れ味がゴブリンを襲う。

「ギャァァァ!!」

バタバタとゴブリンが俺から離れた場所で倒れていく。
小さなナイフが彼らの武器で、魔法が使えないゴブリンたちにとって、逃げ場のない橋の上は、まさに死地であった。

一薙てで眼前のゴブリン5体程が一気に絶命する。
一方的な俺の攻撃となすすべなくその刃の餌食となって、鮮血を吹き出し倒れていくゴブリンたち…
まさに俺にとっては爽快、見る人によっては凄惨な光景が繰り広げられていった。


「す、すごすぎですじゃ…」

城壁の上で、ドノバンは腰を抜かさんばかりに驚いている。

「これが勇者よ!」

既に驚きを通り越しているレイナは、まるで自分の事のように誇らしく、腕を組んでふんぞり返っていた。

そんなやりとりを尻目に、俺の蹂躙は続く。
ゴブリンは俺に近付く事も叶わずバタバタと屍を晒していく。
しかし、橋を渡りきるまであと少しという所まできた。その時…

「キヒヒッ!」

不気味な笑い声と共に、背後にゴブリンが現れた。

どうやら掘の中に潜んでいたらしい。
俺は最も警戒していた背後を取られてしまった。

「…小賢しい」


俺に切り抜ける策を考えさせる余裕を与えない様に、四方から一斉に襲いかかってくるゴブリンの群れ。

一太刀、二太刀までは何とかかわす。
三太刀目は剣で受け止めたが、四太刀目はかわしきれず、受け止められず、ゴブリンのナイフによる一撃が俺の腕を掠めた。

「…くっ」

鋭い痛みが走る。
しかし、傷は浅いようで、出血もあまりない。
もちろん腕は動く。
しかし、この様に連携されて攻撃されるとじり貧であることは目に見えて分かる。
ましてや、まだレベル1なのだ。あと数回この攻撃を喰らうだけで、俺は力尽きるのは火を見るより明らかであった。
そしてタイミングが悪い事に魔法剣を維持するだけの魔力が尽き、元の短い短剣に戻った。
俺はめんどくさそうに溜め息をついた。

「…仕方ない」

「ジェ、ジェイ…大丈夫かしら?」
「うーむ。こちらも出撃の準備だけはしておかねばならんかも知れないな」

レイナと王が心配そうにこちらを見ている。

この戦いが終われば、彼らも嫌と言う程思い知るだろう。
魔物との戦いにおいて、俺への心配は杞憂に過ぎないので、するだけ無駄だ…という事を。

「キヒヒ!死ね!」

ゴブリンたちが再び俺に襲いかかってくる。
四方からの同時攻撃…絶対に回避する事が出来ない、彼らの連携による必殺の攻撃であったに違いない。
俺はその一撃に対して真っ向からぶっ潰してやろうと考えた。

「…冥土の土産だ」

俺はギリギリまで彼らを引き付ける。
まさに彼らの凶刃が俺を捉えるその瞬間…

俺はスキルを放った。
スキルとは魔法とは異なった剣や拳による特有の技だ。
スキルはどれでも誰でも利用できるわけではない。
基本的にはそのスキルを利用できる者から伝授されるか、自分で編み出さない限りは扱う事が出来ない。

そして俺の利用できるスキルのほとんどが自分で編み出したものだった。


「スパイラル・スラッシュ」

俺はコマの様にグルンッと回転しながら、剣を振るった。
襲ってきた四方のゴブリンたちは横に両断され、鮮血が俺を中心として、マグマの様に吹き出した。
俺は動きを止める事なく、次のスキルを繰り出す。

「神速斬」

グンッと俺の駆ける速度が上がる。

目の前には既に僅かとなったゴブリンたち。
それら全てを疾風となって駆けながら切りつけた。


「橋のゴブリン…全てを…たった一人で片付けおったわい…」

ドノバンは既に驚きの余り、失神寸前だ。

俺は橋を渡りきった。

そして、城門の方をちらりと振り返る。

ゴブリンとパワードゴブリン、それにガーゴイル…
合わせて200以上の魔物の死骸が見るも無惨な姿をさらしていた。

「…次」

そう呟くと、城を背にして前方を睨む。

城の前は広い草原。

そこには1隊あたり200体ずつ、4隊に分かれたゴブリンの軍勢が待ち構えていた。
自分たちの200体もの仲間をわずかな時間で虐殺してきた一人の人間。
ゴブリンたちの恐れる感情が伝わってくるようだ。

綺麗に整列したその軍団は、何人たりとも身動きをする事なく、俺を見つめていた。
一陣の風が吹き抜ける。

さぁ、クズども。蹂躙の時間の開始だぜ。
俺はこれから起こるであろう魔物たちにとっての惨劇を想像し、喜びのあまりにブルっと一つ身震いした。


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