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男 食物連鎖①
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「武器はジロウさんが無料で作ってくれる。だから、俺達は他の冒険者よりも武器が充実している。アルペンルートの街に着いたら防具を揃えたいなー。」
「なるほど。パーティーに鍛冶師がいるといろいろと便利なんだね。」
春人は、この旅が満足出来た場合のお礼を武器にでもしようと思っていたので、その選択肢が1つ消えていた。
「俺達が他のパーティーより優れている点はジロウさんがいる事だと言っても過言ではないよ。武器の制作や金銭面での交渉。ジロウさんは戦闘以外での本当のリーダーなんだ。だから、俺達は少しでもお金を払いたいんだけど、それは拒むんだ。ジロウさんが武器を売ったお金も俺達に良い武器を作る為に使っていて、パーティーに還元してくれる。」
「それは当たり前だ。俺のパーティー内での役割りがそれなんだからな。パーティー内でお金を取ったら俺だけ儲けが多いじゃないか。休憩中ではなく、みんなが見張りの仕事をしている間なんかに俺が鍛冶をやらせて貰っているんだぞ。」
ジロウの言葉にヴァンサンが肩の前に両手を広げて、呆れている。
「こんな感じ。」
「ぷぷっ。ジロウさんは頑固そうだけど、良い人なんだな。」
春人達が会話を楽しんでいると、斥候役のシンが声をあげる。
「おっ。遠くからゴブリンが6匹やって来るぞ。だが、いつもと様子が違うな。あれはこの辺の雑魚モンスターではない。」
モンスターがゴブリンと聞いて、春人は雑魚を想像した。春人がやっていたゲームではゴブリンは初級のモンスターである事が多い。だが、この異世界ではどうやら雑魚ではないらしい。
「その口ぶりからすると、ゴブリンは強いモンスターという事だな。ヴァンサン達だけで平気なのか?」
ヴァンサンがそれに答える。
「脅威度E+のゴブリンは皮ランクパーティーと同等だ。しかし、モンスターの群れは脅威度が半分上がる。あれは脅威度Dだ。でも俺達にはジロウさんの武器がある。今なら問題はないのさ。パーティーでの戦闘ってやつを見せてやるぜ。」
「危なくなったら言ってくれよ。戦闘を見るのは想定内のモンスターの時で良いんだ。」
「では、危なくなったら言うよ。ゴブリンは醜悪なモンスター。あれを見たら放置する事は絶対に出来ない。」
ヴァンサンの言葉に春人がうららを見る。
「うららは観戦しながら、準備もしておいてくれ。」
「うん。分かったわ。」
そうしている間に、ゴブリン達は肉眼でよく見える場所まで迫っていた。ヴァンサンが真の友情に指示を出す。
「今回は俺が一人で突っ込む。リアが手前を釣り敵を全員で倒してくれ。マリナは俺が持て余しているゴブリンからいつものを頼む。」
「わかったわ。」「りょうかいよ。」
「真の友情行くぞっ!」
「「「おう。」」」
ヴァンサンが一人でゴブリン達の集団に突っ込んでいく。ゴブリンを通過する時に、華麗に槍スキルを当てている。ゴブリン達の動きから、それが全てのゴブリンを引き付ける為だった事が春人にも理解出来た。ただ、ヴァンサンは言うほど手こずってはいない。危なげなくゴブリン達を全ていなしている。
「【火鳥】」
一番手前のゴブリンに、リアが火属性魔法を放つと、一匹のゴブリンがリア目掛けて走り出す。春人はヴァンサンがゴブリンを醜悪と言っていた意味を理解する。リアを獲物と認識し、それを見る目がヴァンサン相手とはまるで違うのだ。
「うっ。」
春人は見るに堪えなかった。思わずそのゴブリンから目を背ける。春人の視線はマリナに移った。マリナは、ヴァンサンが戦っている手前のゴブリンに何かを投げつけると、ゴブリンが眠り始める。睡眠罠は、スキルで生成し敵に投げつけるタイプのものだった。
現在、ヴァンサンが引き付けている敵は四匹、一匹が眠り、一匹はリアの方に向かって来ている。
だが、その後の戦闘はあっけないものだった。マリナが睡眠罠を生成し、一匹ずつに投げつける。リアが魔法で釣った敵をヴァンサン以外の全員で討伐する。
リアが釣ったゴブリンの敵意は最初にリアにあり、続いて攻撃するレンに向かう。レンは鎌での中距離攻撃なので、ゴブリンがレンに届く前に後ろから別の者が斬りつける。狼狽えるゴブリンにリアが遠隔から強烈な威力の【火玉】を放ち、再びゴブリンがリアに狙いを定める。そんな連続攻撃を受けてはゴブリンはひとたまりもない。
睡眠がモンスターに行き渡ると、そこにヴァンサンも加わり、ヴァンサンが常に盾でゴブリンを引き付ける役に徹する。すると、今度は全員が本気で攻撃をするので、最初よりも簡単にゴブリン達は倒れていった。
途中で最初に睡眠罠を仕掛けたゴブリンが目を覚ましたが、その頃には他のゴブリン達が討伐された後だった。
あざやかなパーティー戦を見た春人やうららは、心から感動していた。一人で集団に飛び込むヴァンサンと、スキルで罠を作成出来る冒険者のマリナ。その作戦のキモになった釣り役の魔術師リア。
他の者達もモンスターの敵意を奪ったり、奪わなかったりの駆け引きが絶妙だった。
春人とうららは集団戦の奥深さに声をあげて喜んだ。それぞれに役割があり戦略の幅は無限にあるようにも感じられたのだ。
「ブラボッー!! 最高だよ。真の友情。」「本当に凄いわっー!」
パチパチパチパチッ
春人とうららが拍手で称える。ヴァンサンは恥ずかしそうに頭を掻いていた。ヴァンサンが恥ずかしそうに黙っているので、レン(サブ)が戦闘の説明をする。
「俺達にはゴブリンの集団はまだ早い。けど、ヴァンサンは守りの堅い騎士ってだけでなく、Lv39で限りなく銅ランクに近いんだ。だから、俺達には格上でもヴァンサンがいればなんとかなる。それに俺達の武器はジロウさんが作ってくれた力作。ちょっと強い程度なら問題ないんだよ。」
春人が興奮してレンの言葉に返事をする。
「いいや。ぜんぜん格上相手ではなかった。本当に驚いたよ。俺はずっとボッチだったから、パーティー戦は素直に感動した。ヴァンサンももちろん凄いけど、みんなの連携や強弱をつけた駆け引きマリナの補助も圧巻だった。とても勉強になった。戦闘補助なら俺にもやれる事はあるなってね。」
うららもそれに同意している。
「うんうん。私だけで戦うよりも、ああやって連携した方がずっと楽しい。」
コユキだけが、二人が感動している意味が分からなかった。ゆえに沈黙する。パーティーが各役割を全うし連携して動くのは当然の事だ。コユキは今までたくさんの冒険者パーティーに雇われて来たからよく分かる。その最高峰が獣人の森冒険団でリーダーは鋼ランクのギーオだった。
しかし、春人は個人の力でそのギーオ達を圧倒した。得体の知れない力で、いとも簡単にギーオの左腕を吹き飛ばし、コルネリアス右足を爆破したのだ。先程のゴブリンなど、鋼ランクのギーオ一人だけで十分。むしろコルネリアスだけでも簡単に討伐出来る。
それはうららも同じで、ラグエル浸食地帯から街に向かう途中で見せたモンスター退治。ギーオの戦闘技術など足元にも及ばなかった。素早さ、威力共に常人とは次元が違うのだ。
だからコユキは、なんで二人が感動しているのかまったく分からない。
――今更、パーティーの戦闘技術を学ぶ必要があるのだろうか。――
コユキは言葉を呑み込んでいた。今まで契約で荷物持ちをやって来て、世界各国でどのパーティーにいても秘密厳守は当然だった。コユキには、その性がまだ染みついている。それに二人の異常は気にしても意味が無いのだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ここからは、後書きです。興味のない場合は読み飛ばして下さい。
冒険者証
≪ カード ≫
紙:白 木:木目 皮:蛇柄
≪ プレート ≫
銅以上は冒険者証がランク材質の薄いプレートになる。
冒険者ランクと討伐推奨モンスター表
レベル:必ずしも必要ではなく強さの目安
討伐するモンスターの危険度
{ P(パーティー):モンスターのランク
S(ソロ):モンスターのランク }
白金Lv95以上 P:A+ S:A
黄金Lv90以上 P:A S:B+
白銀Lv80以上 P:B+ S:B
青銅Lv70以上 P:B S:C+
鋼Lv60以上 P:C+ S:C
鉄Lv50以上 P:C S:D~D+
銅Lv40以上 P:D S:E+
皮Lv30以上 P:E+ S:E
木Lv20以上 S:F
紙S:G 登録した駆け出し冒険者
白金以上の推奨レベルはLv100以上になるので、Lv100で成長の止まる純粋な人種では通常は到達出来ない。
ヴァンサンはLv39で銅に近く、加えて防御に適した職業や才能を持っている。しかし、真の友情は総じて才能が弱く、格上を殲滅するだけの攻撃威力がなかった。
この欠点はパーティーに加入したレンジロウの武器で補う事が出来るようになる。真の友情は、レンジロウが加入した事で少し上のモンスターを安定して狩る事が出来るようになった。
「なるほど。パーティーに鍛冶師がいるといろいろと便利なんだね。」
春人は、この旅が満足出来た場合のお礼を武器にでもしようと思っていたので、その選択肢が1つ消えていた。
「俺達が他のパーティーより優れている点はジロウさんがいる事だと言っても過言ではないよ。武器の制作や金銭面での交渉。ジロウさんは戦闘以外での本当のリーダーなんだ。だから、俺達は少しでもお金を払いたいんだけど、それは拒むんだ。ジロウさんが武器を売ったお金も俺達に良い武器を作る為に使っていて、パーティーに還元してくれる。」
「それは当たり前だ。俺のパーティー内での役割りがそれなんだからな。パーティー内でお金を取ったら俺だけ儲けが多いじゃないか。休憩中ではなく、みんなが見張りの仕事をしている間なんかに俺が鍛冶をやらせて貰っているんだぞ。」
ジロウの言葉にヴァンサンが肩の前に両手を広げて、呆れている。
「こんな感じ。」
「ぷぷっ。ジロウさんは頑固そうだけど、良い人なんだな。」
春人達が会話を楽しんでいると、斥候役のシンが声をあげる。
「おっ。遠くからゴブリンが6匹やって来るぞ。だが、いつもと様子が違うな。あれはこの辺の雑魚モンスターではない。」
モンスターがゴブリンと聞いて、春人は雑魚を想像した。春人がやっていたゲームではゴブリンは初級のモンスターである事が多い。だが、この異世界ではどうやら雑魚ではないらしい。
「その口ぶりからすると、ゴブリンは強いモンスターという事だな。ヴァンサン達だけで平気なのか?」
ヴァンサンがそれに答える。
「脅威度E+のゴブリンは皮ランクパーティーと同等だ。しかし、モンスターの群れは脅威度が半分上がる。あれは脅威度Dだ。でも俺達にはジロウさんの武器がある。今なら問題はないのさ。パーティーでの戦闘ってやつを見せてやるぜ。」
「危なくなったら言ってくれよ。戦闘を見るのは想定内のモンスターの時で良いんだ。」
「では、危なくなったら言うよ。ゴブリンは醜悪なモンスター。あれを見たら放置する事は絶対に出来ない。」
ヴァンサンの言葉に春人がうららを見る。
「うららは観戦しながら、準備もしておいてくれ。」
「うん。分かったわ。」
そうしている間に、ゴブリン達は肉眼でよく見える場所まで迫っていた。ヴァンサンが真の友情に指示を出す。
「今回は俺が一人で突っ込む。リアが手前を釣り敵を全員で倒してくれ。マリナは俺が持て余しているゴブリンからいつものを頼む。」
「わかったわ。」「りょうかいよ。」
「真の友情行くぞっ!」
「「「おう。」」」
ヴァンサンが一人でゴブリン達の集団に突っ込んでいく。ゴブリンを通過する時に、華麗に槍スキルを当てている。ゴブリン達の動きから、それが全てのゴブリンを引き付ける為だった事が春人にも理解出来た。ただ、ヴァンサンは言うほど手こずってはいない。危なげなくゴブリン達を全ていなしている。
「【火鳥】」
一番手前のゴブリンに、リアが火属性魔法を放つと、一匹のゴブリンがリア目掛けて走り出す。春人はヴァンサンがゴブリンを醜悪と言っていた意味を理解する。リアを獲物と認識し、それを見る目がヴァンサン相手とはまるで違うのだ。
「うっ。」
春人は見るに堪えなかった。思わずそのゴブリンから目を背ける。春人の視線はマリナに移った。マリナは、ヴァンサンが戦っている手前のゴブリンに何かを投げつけると、ゴブリンが眠り始める。睡眠罠は、スキルで生成し敵に投げつけるタイプのものだった。
現在、ヴァンサンが引き付けている敵は四匹、一匹が眠り、一匹はリアの方に向かって来ている。
だが、その後の戦闘はあっけないものだった。マリナが睡眠罠を生成し、一匹ずつに投げつける。リアが魔法で釣った敵をヴァンサン以外の全員で討伐する。
リアが釣ったゴブリンの敵意は最初にリアにあり、続いて攻撃するレンに向かう。レンは鎌での中距離攻撃なので、ゴブリンがレンに届く前に後ろから別の者が斬りつける。狼狽えるゴブリンにリアが遠隔から強烈な威力の【火玉】を放ち、再びゴブリンがリアに狙いを定める。そんな連続攻撃を受けてはゴブリンはひとたまりもない。
睡眠がモンスターに行き渡ると、そこにヴァンサンも加わり、ヴァンサンが常に盾でゴブリンを引き付ける役に徹する。すると、今度は全員が本気で攻撃をするので、最初よりも簡単にゴブリン達は倒れていった。
途中で最初に睡眠罠を仕掛けたゴブリンが目を覚ましたが、その頃には他のゴブリン達が討伐された後だった。
あざやかなパーティー戦を見た春人やうららは、心から感動していた。一人で集団に飛び込むヴァンサンと、スキルで罠を作成出来る冒険者のマリナ。その作戦のキモになった釣り役の魔術師リア。
他の者達もモンスターの敵意を奪ったり、奪わなかったりの駆け引きが絶妙だった。
春人とうららは集団戦の奥深さに声をあげて喜んだ。それぞれに役割があり戦略の幅は無限にあるようにも感じられたのだ。
「ブラボッー!! 最高だよ。真の友情。」「本当に凄いわっー!」
パチパチパチパチッ
春人とうららが拍手で称える。ヴァンサンは恥ずかしそうに頭を掻いていた。ヴァンサンが恥ずかしそうに黙っているので、レン(サブ)が戦闘の説明をする。
「俺達にはゴブリンの集団はまだ早い。けど、ヴァンサンは守りの堅い騎士ってだけでなく、Lv39で限りなく銅ランクに近いんだ。だから、俺達には格上でもヴァンサンがいればなんとかなる。それに俺達の武器はジロウさんが作ってくれた力作。ちょっと強い程度なら問題ないんだよ。」
春人が興奮してレンの言葉に返事をする。
「いいや。ぜんぜん格上相手ではなかった。本当に驚いたよ。俺はずっとボッチだったから、パーティー戦は素直に感動した。ヴァンサンももちろん凄いけど、みんなの連携や強弱をつけた駆け引きマリナの補助も圧巻だった。とても勉強になった。戦闘補助なら俺にもやれる事はあるなってね。」
うららもそれに同意している。
「うんうん。私だけで戦うよりも、ああやって連携した方がずっと楽しい。」
コユキだけが、二人が感動している意味が分からなかった。ゆえに沈黙する。パーティーが各役割を全うし連携して動くのは当然の事だ。コユキは今までたくさんの冒険者パーティーに雇われて来たからよく分かる。その最高峰が獣人の森冒険団でリーダーは鋼ランクのギーオだった。
しかし、春人は個人の力でそのギーオ達を圧倒した。得体の知れない力で、いとも簡単にギーオの左腕を吹き飛ばし、コルネリアス右足を爆破したのだ。先程のゴブリンなど、鋼ランクのギーオ一人だけで十分。むしろコルネリアスだけでも簡単に討伐出来る。
それはうららも同じで、ラグエル浸食地帯から街に向かう途中で見せたモンスター退治。ギーオの戦闘技術など足元にも及ばなかった。素早さ、威力共に常人とは次元が違うのだ。
だからコユキは、なんで二人が感動しているのかまったく分からない。
――今更、パーティーの戦闘技術を学ぶ必要があるのだろうか。――
コユキは言葉を呑み込んでいた。今まで契約で荷物持ちをやって来て、世界各国でどのパーティーにいても秘密厳守は当然だった。コユキには、その性がまだ染みついている。それに二人の異常は気にしても意味が無いのだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ここからは、後書きです。興味のない場合は読み飛ばして下さい。
冒険者証
≪ カード ≫
紙:白 木:木目 皮:蛇柄
≪ プレート ≫
銅以上は冒険者証がランク材質の薄いプレートになる。
冒険者ランクと討伐推奨モンスター表
レベル:必ずしも必要ではなく強さの目安
討伐するモンスターの危険度
{ P(パーティー):モンスターのランク
S(ソロ):モンスターのランク }
白金Lv95以上 P:A+ S:A
黄金Lv90以上 P:A S:B+
白銀Lv80以上 P:B+ S:B
青銅Lv70以上 P:B S:C+
鋼Lv60以上 P:C+ S:C
鉄Lv50以上 P:C S:D~D+
銅Lv40以上 P:D S:E+
皮Lv30以上 P:E+ S:E
木Lv20以上 S:F
紙S:G 登録した駆け出し冒険者
白金以上の推奨レベルはLv100以上になるので、Lv100で成長の止まる純粋な人種では通常は到達出来ない。
ヴァンサンはLv39で銅に近く、加えて防御に適した職業や才能を持っている。しかし、真の友情は総じて才能が弱く、格上を殲滅するだけの攻撃威力がなかった。
この欠点はパーティーに加入したレンジロウの武器で補う事が出来るようになる。真の友情は、レンジロウが加入した事で少し上のモンスターを安定して狩る事が出来るようになった。
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