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男 レムラーリア②
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獣人の森冒険団のギーオが地面で苦しみ泣き叫ぶと、その後で命乞いをした。
「……頼む。許してくれっー。俺達とコユキはまだ出会った出会ったばかりなんだ。ずっと虐げて来たわけじゃねー。」
コルネリアスもギーオに続き涙と鼻水を垂らしながら、春人に向かって祈り始める。
「そうです。お願いです。助けて下さい。ちゃんとお金なら返しますから。」
そのコルネリアスの言葉に、春人は反応した。眉間にしわを寄せている。
「は? お前等、コユキから金も奪ったのか? ここで殺しておかねーと次の被害はくいとめられねーよな。」
春人が一刺し指をコルネリアスの足に向けるとコルネリアスの右足が吹き飛んだ。
それを見てアンドレアは恐れ戦いている。ここで言葉を間違えたら、あの悪魔に殺されるかも知れないと思ったのだ。だからと言って何も言わなければ、同じく命は無いだろうとあらゆるパターンで頭を働かせた。
「……私達が間違えていました。もう二度と馬鹿な真似はしません。これからは真面目に働いて、生きるのに必要な分以外は孤児院などに寄付をします。」
「クズの言葉を俺が信じると思うか? あ?」
アンドレアの答えは不正解だった。むしろこの理性を失っている春人に、悪人は正解を出せない。だがアンドレアに右手を向けようとすると、うららがその間に移動した。春人の目の前へと。
「春人。もうこれで十分でしょ?」
「邪魔だ。どけよ。うらら。」
「女性を傷つけるつもりなの? あなたもあのクズ達と同類になるのよ。」
「だから何だ? 俺はこれでよーく分かったよ。ずっと、俺達が転移させられた最初から、この世界は弱肉強食だったんだ。それを今思い知った。ここでクズを放って置けば、第二第三のコユキのような被害者が出て、その子が泣く事になる。」
「春人。もしかして……スキルに支配されているわね? でも、その考えは優しい春人をベースにしてる。」
うららが春人に近づき、手を握りしめる。
「お願いよ。春人。あなたは、こんな暴力的な人じゃない。こっちに帰って来て。」
「うるさ――。」
変化のない春人にうららが唇を合わせると、春人の眼の色がやっと元の色に戻る。表情も禍々しいものから、恥ずかしがる若い男のものになった。
「なっ! いきなり何をするんだよ。うららっ。」
「良かった。戻ったわね。怒りで豹変してたから、別の気持ちで満たせば戻るかなと思って。」
「……う。完全に俺が悪いな。ごめん。なんか取り乱した。でも、もう大丈夫だ。」
春人が獣人の森冒険団の方を向く。ただし、その表情は先程までの怒りが薄れている。
「お前等、コユキから巻き上げた金を返して、ギルドか国に自分のした犯罪を打ち明けると約束すれば許してやる。」
それでも獣人の森冒険団の恐怖はそのままだった。
「はいっ。すみませんでした。誓います。」「分かりました。どうか助けて下さい。」「すみませんでした。私はあなたがおっしゃる事なら何でもします。」
獣人の森冒険団の三人完全服従の気持ちしかない。急いでコユキにお金を支払い、土下座をしてコユキにも許しをこう。
一通り謝った所で、春人は獣人の森冒険団の傷口を【応急処置】のスキルで癒してあげる。
だが、コユキにとっては、謝られても今更の事だった。もう二度と春人達には信用して貰えない。そうであれば、明日からも同じような孤独と地獄のような日々が待っているのだ。なので何も言わずに呆然としていた。
――しかし、本当の絶望はこれからだった。
その時、一同の前にコユキと同じくらいの年齢の見た目をした少女が現れた。
「おかしな力を感じたから来てみれば、お前とお前。お主等は人間ではないな?」
春人とうららがそれに答える。
「いいや。ただの人間だが。……人間じゃないのはお前の方だろ。」
「お嬢ちゃん。人を化け物扱いしちゃだめなのよ。」
春人はその存在をこれ以上ないくらいに危険視している。うららは鑑定系のスキルがないので然程、気にしていない。
「ほう。我にそのような無礼な言葉をかけるか。我はレムレースだ。」
獣人の森冒険団の面々は、それを見てその場にへたり込んだ。彼等はラグエル浸食地帯の伝承を知っている。決して足を踏み入れてはいけない魔物にとって神聖な場所だという事を。それを知っていて迷信に過ぎないとたかをくくって、この場所に春人達を呼び寄せたのだ。
しかし、少女の形容し難い禍々しい威圧感と、自らを名乗ったそれが、嫌でも結び付けてしまう。そして、この世界の神話に出て来る邪悪な存在とその少女の存在が獣人の森冒険団の中で一致した。それは先程、春人に感じていた恐怖を更に上回る絶望だった。
「……まさか。おとぎ話の類ではないのか。……レムレース様が実在したと?」
その言葉を聞いて、春人がギーオに訊ねる。
「なんか知ってるのか? レムレースって何だ?」
「はいっ? 知らないんですか? このレムリア大陸の神話に出て来る名前です。レムレース様は、この世界の闇、その全てと言われる邪神です。……例えば世界中で月のはじめに行われているレムラーリアの祭り。世界にとってはその1日に、レムレース様を慰め、家庭内からレムレース様を追い払うとされる祭りが開催されます。一日中踊りあかし時を楽しみ、世界の人類全員でその邪気を払うのです。」
獣人の森冒険団の面々はこれ以上ないくらいに絶望している。ただし、春人はそうではなかった。すっとんきょうに絶望の空気をぶち壊す。
「え? あれって神なの?」
「本物のレムレース様ならそうなります。」
「あんたは神なのか?」
「そうだ。」
「んー。でも、邪神なんだよな? 悪い神なのか?」
「そうだ。」
「世界を悪で満たそうとか考えてる?」
「そうだ。」
「そう考えていて、まだ、そうはなっていないよな。って事は、良い神もいるのか?」
「この世界に神は我以外いない。だが、我は神の作りし無龍と何度も衝突しているのお。原初の頃より殺し合いを続けている。」
「なるほど。倒せる存在って事ね。安心した。」
「は? お主等が我に殺される事は変わりないと思うぞ。」
「因みにだけど、目的はなんなの?」
「この世界を我の指揮下において、人々が争い憎しみあうような地獄に作り変え、それを見て楽しむ事だ。」
「それなら、世界の滅亡は望んでいないって認識で良いかな? 具体的には何がしたいの?」
「うん。それはそうだ。世界が滅亡したら我は一人になるからな。それでは何も楽しめぬ。しかし、具体的にか。我の計画をよく聞いてくれたな。まず、第一に魔族優位の世界につくりかえて――」
レムレースの話が長くなりそうだったので春人はそれを止めた。
「あー。もう良いや。うらら。鑑定してもうららよりもレムの方が強い。何があっても絶対に手を出すなよ。庇いきれない。」
「えー。戦闘だけは自信あったんだけどな。分かった。」
「レム。とりあえず俺の事を殺して見なよ。」
「え?」
邪神レムレースはイラついていた。自分の存在を軽く扱い、その上で軽々しく愛称で呼ばれた。レムレースにとってはこの扱いは初めての経験だった。うららがびっくりしているほんの一瞬で邪神レムレースが春人近づき強烈な攻撃をする。春人のHPは1で留まり、そして、回復した。あまりの威力で春人の上半身が剥き出しになる。春人は平然とした表情で邪神に話しかける。
「レム。鑑定系のスキルを持ってるかな? あと二回、俺を殺したら大変な事になるから気を付けてね。」
邪神レムレースは、その言葉と、それよりももっと大きく春人の体に埋め込まれた魔石に驚いている。
「お前のエーテル体は混沌宝石を核にしているというのか。まさか?」
「レム。早く鑑定しないと、間違って殺したらやばいと思うよ。」
「……完全破壊の天賦の才だと。混沌のエネルギーを核にしているものが、そんなものを使ったら、この世界は一瞬で消えるだろう。それこそ、我という存在が魂ごと消えてなくなる。」
「そういう事だ。」
邪神はそれを理解し膝から崩れ落ちる。
春人は死の直前に最上位の天賦の才の唯一のスキル【完全破壊】が自動的に発動される。この最上位の天賦の才はスキルが一つしか存在しない代わりに、とても凶悪な結果を生みだす。それをした場合、この星の生物は全て魂ごと破壊されるのだ。生き残るのはHPを1残した春人のみとなる。それは、春人が万が一の為に、無料の特典で取得しておいた100億円で獲得出来る最高で最強のスキルだった。邪神やその同列の神ではこれに対抗する術はない。
また先程のような暴走状態の時に限り胸の混沌宝石や【完全破壊】のスキルから溢れ出る何かが使用出来る。ただし、その力は強すぎて、人格を暴力的なものに変えてしまうのだ。
「……頼む。許してくれっー。俺達とコユキはまだ出会った出会ったばかりなんだ。ずっと虐げて来たわけじゃねー。」
コルネリアスもギーオに続き涙と鼻水を垂らしながら、春人に向かって祈り始める。
「そうです。お願いです。助けて下さい。ちゃんとお金なら返しますから。」
そのコルネリアスの言葉に、春人は反応した。眉間にしわを寄せている。
「は? お前等、コユキから金も奪ったのか? ここで殺しておかねーと次の被害はくいとめられねーよな。」
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それを見てアンドレアは恐れ戦いている。ここで言葉を間違えたら、あの悪魔に殺されるかも知れないと思ったのだ。だからと言って何も言わなければ、同じく命は無いだろうとあらゆるパターンで頭を働かせた。
「……私達が間違えていました。もう二度と馬鹿な真似はしません。これからは真面目に働いて、生きるのに必要な分以外は孤児院などに寄付をします。」
「クズの言葉を俺が信じると思うか? あ?」
アンドレアの答えは不正解だった。むしろこの理性を失っている春人に、悪人は正解を出せない。だがアンドレアに右手を向けようとすると、うららがその間に移動した。春人の目の前へと。
「春人。もうこれで十分でしょ?」
「邪魔だ。どけよ。うらら。」
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「だから何だ? 俺はこれでよーく分かったよ。ずっと、俺達が転移させられた最初から、この世界は弱肉強食だったんだ。それを今思い知った。ここでクズを放って置けば、第二第三のコユキのような被害者が出て、その子が泣く事になる。」
「春人。もしかして……スキルに支配されているわね? でも、その考えは優しい春人をベースにしてる。」
うららが春人に近づき、手を握りしめる。
「お願いよ。春人。あなたは、こんな暴力的な人じゃない。こっちに帰って来て。」
「うるさ――。」
変化のない春人にうららが唇を合わせると、春人の眼の色がやっと元の色に戻る。表情も禍々しいものから、恥ずかしがる若い男のものになった。
「なっ! いきなり何をするんだよ。うららっ。」
「良かった。戻ったわね。怒りで豹変してたから、別の気持ちで満たせば戻るかなと思って。」
「……う。完全に俺が悪いな。ごめん。なんか取り乱した。でも、もう大丈夫だ。」
春人が獣人の森冒険団の方を向く。ただし、その表情は先程までの怒りが薄れている。
「お前等、コユキから巻き上げた金を返して、ギルドか国に自分のした犯罪を打ち明けると約束すれば許してやる。」
それでも獣人の森冒険団の恐怖はそのままだった。
「はいっ。すみませんでした。誓います。」「分かりました。どうか助けて下さい。」「すみませんでした。私はあなたがおっしゃる事なら何でもします。」
獣人の森冒険団の三人完全服従の気持ちしかない。急いでコユキにお金を支払い、土下座をしてコユキにも許しをこう。
一通り謝った所で、春人は獣人の森冒険団の傷口を【応急処置】のスキルで癒してあげる。
だが、コユキにとっては、謝られても今更の事だった。もう二度と春人達には信用して貰えない。そうであれば、明日からも同じような孤独と地獄のような日々が待っているのだ。なので何も言わずに呆然としていた。
――しかし、本当の絶望はこれからだった。
その時、一同の前にコユキと同じくらいの年齢の見た目をした少女が現れた。
「おかしな力を感じたから来てみれば、お前とお前。お主等は人間ではないな?」
春人とうららがそれに答える。
「いいや。ただの人間だが。……人間じゃないのはお前の方だろ。」
「お嬢ちゃん。人を化け物扱いしちゃだめなのよ。」
春人はその存在をこれ以上ないくらいに危険視している。うららは鑑定系のスキルがないので然程、気にしていない。
「ほう。我にそのような無礼な言葉をかけるか。我はレムレースだ。」
獣人の森冒険団の面々は、それを見てその場にへたり込んだ。彼等はラグエル浸食地帯の伝承を知っている。決して足を踏み入れてはいけない魔物にとって神聖な場所だという事を。それを知っていて迷信に過ぎないとたかをくくって、この場所に春人達を呼び寄せたのだ。
しかし、少女の形容し難い禍々しい威圧感と、自らを名乗ったそれが、嫌でも結び付けてしまう。そして、この世界の神話に出て来る邪悪な存在とその少女の存在が獣人の森冒険団の中で一致した。それは先程、春人に感じていた恐怖を更に上回る絶望だった。
「……まさか。おとぎ話の類ではないのか。……レムレース様が実在したと?」
その言葉を聞いて、春人がギーオに訊ねる。
「なんか知ってるのか? レムレースって何だ?」
「はいっ? 知らないんですか? このレムリア大陸の神話に出て来る名前です。レムレース様は、この世界の闇、その全てと言われる邪神です。……例えば世界中で月のはじめに行われているレムラーリアの祭り。世界にとってはその1日に、レムレース様を慰め、家庭内からレムレース様を追い払うとされる祭りが開催されます。一日中踊りあかし時を楽しみ、世界の人類全員でその邪気を払うのです。」
獣人の森冒険団の面々はこれ以上ないくらいに絶望している。ただし、春人はそうではなかった。すっとんきょうに絶望の空気をぶち壊す。
「え? あれって神なの?」
「本物のレムレース様ならそうなります。」
「あんたは神なのか?」
「そうだ。」
「んー。でも、邪神なんだよな? 悪い神なのか?」
「そうだ。」
「世界を悪で満たそうとか考えてる?」
「そうだ。」
「そう考えていて、まだ、そうはなっていないよな。って事は、良い神もいるのか?」
「この世界に神は我以外いない。だが、我は神の作りし無龍と何度も衝突しているのお。原初の頃より殺し合いを続けている。」
「なるほど。倒せる存在って事ね。安心した。」
「は? お主等が我に殺される事は変わりないと思うぞ。」
「因みにだけど、目的はなんなの?」
「この世界を我の指揮下において、人々が争い憎しみあうような地獄に作り変え、それを見て楽しむ事だ。」
「それなら、世界の滅亡は望んでいないって認識で良いかな? 具体的には何がしたいの?」
「うん。それはそうだ。世界が滅亡したら我は一人になるからな。それでは何も楽しめぬ。しかし、具体的にか。我の計画をよく聞いてくれたな。まず、第一に魔族優位の世界につくりかえて――」
レムレースの話が長くなりそうだったので春人はそれを止めた。
「あー。もう良いや。うらら。鑑定してもうららよりもレムの方が強い。何があっても絶対に手を出すなよ。庇いきれない。」
「えー。戦闘だけは自信あったんだけどな。分かった。」
「レム。とりあえず俺の事を殺して見なよ。」
「え?」
邪神レムレースはイラついていた。自分の存在を軽く扱い、その上で軽々しく愛称で呼ばれた。レムレースにとってはこの扱いは初めての経験だった。うららがびっくりしているほんの一瞬で邪神レムレースが春人近づき強烈な攻撃をする。春人のHPは1で留まり、そして、回復した。あまりの威力で春人の上半身が剥き出しになる。春人は平然とした表情で邪神に話しかける。
「レム。鑑定系のスキルを持ってるかな? あと二回、俺を殺したら大変な事になるから気を付けてね。」
邪神レムレースは、その言葉と、それよりももっと大きく春人の体に埋め込まれた魔石に驚いている。
「お前のエーテル体は混沌宝石を核にしているというのか。まさか?」
「レム。早く鑑定しないと、間違って殺したらやばいと思うよ。」
「……完全破壊の天賦の才だと。混沌のエネルギーを核にしているものが、そんなものを使ったら、この世界は一瞬で消えるだろう。それこそ、我という存在が魂ごと消えてなくなる。」
「そういう事だ。」
邪神はそれを理解し膝から崩れ落ちる。
春人は死の直前に最上位の天賦の才の唯一のスキル【完全破壊】が自動的に発動される。この最上位の天賦の才はスキルが一つしか存在しない代わりに、とても凶悪な結果を生みだす。それをした場合、この星の生物は全て魂ごと破壊されるのだ。生き残るのはHPを1残した春人のみとなる。それは、春人が万が一の為に、無料の特典で取得しておいた100億円で獲得出来る最高で最強のスキルだった。邪神やその同列の神ではこれに対抗する術はない。
また先程のような暴走状態の時に限り胸の混沌宝石や【完全破壊】のスキルから溢れ出る何かが使用出来る。ただし、その力は強すぎて、人格を暴力的なものに変えてしまうのだ。
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