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第一章 誕生日おめでとう
第16話 雨のち歌
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3つの卵はふかふかの羽の上
卵のピヨとルヴナンとレアールは白鳥の背に乗って泉を越えていた
ぽつぽつ、と卵を叩く音が三つの卵の殻にした
「雨だ……」
ルヴナンが空の方へ卵を傾けて言う
その殻を叩く音で、ピヨは初めて雨を体感した
風とは違う、少しびっくりするような痛みに近いひんやりした感覚だった
流れていく小さな粒を受け、卵にあたる音がトントントンとリズムを刻む
ピヨはその音のリズムがなんだか楽しくなって、卵を揺らし、いつもルヴナン達が歌うように、自然と歌いだした
ぽつぽつと 雨が降る
雨は塊になって 粒となり
大きな卵のように膨らんで
大きな水の塊に
そう歌いだすと、レアールが怖ろし気な低温で、ピヨの後ろから忍び寄って呻くように歌いだした
雨の塊は 青く深い影となり
怖ろしい深き塊となって すべてを飲み込む
青の中は熱く 煮えるようだ
中に入れば何度叫んでも 響かない
怖ろし気な 影 影 影
青い影
ピヨが歌で卵をプルプルし出すのを見て、レアールが意地悪げに笑った
やや呆れてルヴナンがレアールの歌の途中から入って歌を独占した
雨の形はまん丸で
美しさと輝きを与える 宝玉の形
僕たちの殻を叩いては 優しき母の歌声のように
早く出ておいでと囁くのさ
ピヨはじぃんとルヴナンのアルトな美声に酔いしれた
レアールがつまらなさそうにちぇっと言う
ルヴナンが怖がっていたピヨに、優しく言った
「ピヨ、いつの間にか歌えるようになったんだね」
そうだ! と、ピヨ驚いた。そう、ピヨはいつの間にか歌えるようになっていた
いつかルヴナンのように歌えたらと思っていたピヨ
そのルヴナンの美声の少しに近づけた気がしてピヨはなんだか誇らしい気持ちだ
レアールが意地悪気に誉めそやし、ルヴナンは歌のアンコールをピヨにする
ピヨは照れ臭くなって なんだか卵の殻が熱くなるのを感じてしまった
そして、アンコールに答えて歌いだす
ぽつぽつと、雨が降る……
3つの卵が白鳥の羽の上で、ハーモニーを奏でて一緒に歌ったのだった
卵のピヨとルヴナンとレアールは白鳥の背に乗って泉を越えていた
ぽつぽつ、と卵を叩く音が三つの卵の殻にした
「雨だ……」
ルヴナンが空の方へ卵を傾けて言う
その殻を叩く音で、ピヨは初めて雨を体感した
風とは違う、少しびっくりするような痛みに近いひんやりした感覚だった
流れていく小さな粒を受け、卵にあたる音がトントントンとリズムを刻む
ピヨはその音のリズムがなんだか楽しくなって、卵を揺らし、いつもルヴナン達が歌うように、自然と歌いだした
ぽつぽつと 雨が降る
雨は塊になって 粒となり
大きな卵のように膨らんで
大きな水の塊に
そう歌いだすと、レアールが怖ろし気な低温で、ピヨの後ろから忍び寄って呻くように歌いだした
雨の塊は 青く深い影となり
怖ろしい深き塊となって すべてを飲み込む
青の中は熱く 煮えるようだ
中に入れば何度叫んでも 響かない
怖ろし気な 影 影 影
青い影
ピヨが歌で卵をプルプルし出すのを見て、レアールが意地悪げに笑った
やや呆れてルヴナンがレアールの歌の途中から入って歌を独占した
雨の形はまん丸で
美しさと輝きを与える 宝玉の形
僕たちの殻を叩いては 優しき母の歌声のように
早く出ておいでと囁くのさ
ピヨはじぃんとルヴナンのアルトな美声に酔いしれた
レアールがつまらなさそうにちぇっと言う
ルヴナンが怖がっていたピヨに、優しく言った
「ピヨ、いつの間にか歌えるようになったんだね」
そうだ! と、ピヨ驚いた。そう、ピヨはいつの間にか歌えるようになっていた
いつかルヴナンのように歌えたらと思っていたピヨ
そのルヴナンの美声の少しに近づけた気がしてピヨはなんだか誇らしい気持ちだ
レアールが意地悪気に誉めそやし、ルヴナンは歌のアンコールをピヨにする
ピヨは照れ臭くなって なんだか卵の殻が熱くなるのを感じてしまった
そして、アンコールに答えて歌いだす
ぽつぽつと、雨が降る……
3つの卵が白鳥の羽の上で、ハーモニーを奏でて一緒に歌ったのだった
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