生まれることも飛ぶこともできない殻の中の僕たち

はるかず

文字の大きさ
上 下
14 / 23
第一章 誕生日おめでとう

第14話 蛇だったらどうしよう

しおりを挟む
ころころ3つの卵と一羽は、美しくなる泉を目指して旅をしていた

しばらく一緒にいると、あひるが疲れたと言い出した
ピヨは疲れるというのが分からず、先を急ごうと言った
ルヴナンがピヨを制して、どこかで休もうと言った

「お昼寝がしたい、お母さんがいたらお昼寝している時間なんだ」

あひるが地団太を踏んでジタバタした
ピヨは寝るというのが分からなかった
伝えると、相変わらずレアールが、寝たことがないの?と嗤って言った
少し卵を膨らませて怒るピヨだったが
ルヴナンが草むらに寝そべって休もうと言ったので、喧嘩はしない事にした

草むらに寝っ転がった
3つと一羽で日向ぼっこをする

ピヨは意識がぼんやりしてきて……
ピヨはぽかぽか陽気の中眠ってしまった
それが初めての夢を見た時だった

ピヨは恐ろしい夢を見た。
夢で出てきたのは長くとぐろを巻く黒い影の気配だった。

影はピヨを飲み込んだ。あっけなく、するりとピヨは飲み込まれた
喰われた後に、蛇の腹から卵として生まれてしまう
ピヨはもうピヨじゃない。お母さんの子でもない。ピヨは喰われて蛇の子になってしまったのだ
黒い影の卵になってしまったピヨ。蛇の子のピヨ。ピヨはもう……

ハッとなってピヨは意識が戻った
ピヨは自身が影の卵になっていないことを感覚で理解しホッとする
今あったことが現実でない事と、まだ残る緊張にドキマギしていた

みんなが起きだし、そして互いに夢の話題になった
ピヨは今見たリアルな影の物語が、夢と言うものであることを知った
ルヴナンは美しい白鳥になる夢を見、レアールは家族と再会した夢を
あひるは母親が泉で待っていてくれた夢を
互いに幸せな夢を見たことに、喜び、泣いた
ピヨだけが夢の内容を言えなかった

他の三匹からピヨの夢の話題が振られると、ピヨは戸惑った

ピヨは自分が鶏の子だと思っていた
でももしたら蛇かもしれないという恐怖に怯えていた
それくらい影から生まれるときの夢がリアルだったからだ
ずるりと影から出てくる感覚、影の卵になってしまう恐ろしさ
夢と醒めた後、何が違うのかピヨには分からなかった

「夢って本当になったりしない?」

不安を2つの卵とあひるに伝えるピヨ
自分が黒い影の卵になったのではないかと言った

「そんなことないよ、白くて可愛いたまごだよ」

あひるがピヨに伝える
ピヨは驚いた
自分に色があったことに驚いた
きっと卵が割れた瞬間に、世界に色がつくと思っていたからだ
この時、ピヨは初めて自分が白い卵であることを知ったのだった
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

児童絵本館のオオカミ

火隆丸
児童書・童話
閉鎖した児童絵本館に放置されたオオカミの着ぐるみが語る、数々の思い出。ボロボロの着ぐるみの中には、たくさんの人の想いが詰まっています。着ぐるみと人との間に生まれた、切なくも美しい物語です。

R:メルヘンなおばけやしき

stardom64
児童書・童話
ある大雨の日、キャンプに訪れた一人の女の子。 雨宿りのため、近くにあった洋館で一休みすることに。 ちょっぴり不思議なおばけやしきの探検のおはなし☆

シャルル・ド・ラングとピエールのおはなし

ねこうさぎしゃ
児童書・童話
ノルウェジアン・フォレスト・キャットのシャルル・ド・ラングはちょっと変わった猫です。人間のように二本足で歩き、タキシードを着てシルクハットを被り、猫目石のついたステッキまで持っています。 以前シャルル・ド・ラングが住んでいた世界では、動物たちはみな、二本足で立ち歩くのが普通なのでしたが……。 不思議な力で出会った者を助ける謎の猫、シャルル・ド・ラングのお話です。

ボクんちの先生。もとい、先生んちのボク。

紫 李鳥
児童書・童話
先生には、ある口癖があります。さて、それはなんでしょう?

ローズお姉さまのドレス

有沢真尋
児童書・童話
最近のルイーゼは少しおかしい。 いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。 話し方もお姉さまそっくり。 わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。 表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成

お姫様の願い事

月詠世理
児童書・童話
赤子が生まれた時に母親は亡くなってしまった。赤子は実の父親から嫌われてしまう。そのため、赤子は血の繋がらない女に育てられた。 決められた期限は十年。十歳になった女の子は母親代わりに連れられて城に行くことになった。女の子の実の父親のもとへ——。女の子はさいごに何を願うのだろうか。

処理中です...