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二章 Aルート(通常)

雨乞い

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俺が戦闘態勢をとると、奴も必然的に戦闘態勢に入った。

「安心しろ、上之手。お前は殺さず人形にしてやるからな。」

「いくら体が機械だからとは言え、心が人間ならばやはり貴様には裁きを下さねば。」

 互いに互いの言葉をぶつけ合い、最後の戦いが始まろうとしていた。

 (とは言ったものの、奴の黒玉に対する理解力とあの超スピードはなかなかに厄介だな。それに俺を操作する条件がわからないまま戦闘を続けることも得策ではない。)

 そのためにもまずは対象を操作するまでの条件を把握する必要がある。俺は神の知恵で思考をフル回転させる。

 (手がかりはさっきの頭へのタッチだ、明らかに不自然な行動だった。それに、強化を施したルカスやゼラをも操作できたということはそこまで難しい条件ではないはず。)

 俺が思考に耽っているとヤガナは先手を取ってきた。

「来ないならこっちから行くぞ!」

 黒玉が通じないとわかった俺は"破壊"を両手に纏い、奴を迎え撃とうとした。

「"発砲"の構えじゃないな、てことは"破壊"か!」

 超スピードで近づきながらそう叫ぶ奴は、なぜか俺の両手にわざと触れてきた。

 (なに!?)

 俺の手に触れた奴の両方の手は当然粉々になった。

 (ということは……足か!?)

 手がないことから体の他の部位での攻撃が来ると思った俺は真っ先に足を警戒した。

「残念だったな、俺の狙いはこれだ。」

 俺が足に気を取られていた時、そう言って奴は失くなったはずの手で再び俺の頭を触った。そして、また距離を取る。

「なぜ失くなったはずの手がある?」

「俺は機械だぜ?手や足の替えなんていくらでも内蔵してあるんだよ。」

 またもや前の世界での常識が覆えされた。まさか機械が自給自足で手足を補充してしまうとは思うまい。

 (それにまた奴に頭を触られた。確実に頭を触るという動きが操作の条件に違いない。触る秒数か、それとも回数か。)

 秒数ならばまだ一秒にも満たないほどしか触られていない。しかし、回数で言えば二回だ。

「警戒しているな、上之手よ。まあ、あれだけ頭を触られればそうなるだろうがな。」

「貴様、ペドフィリアなのか?」

 俺が煽るとヤガナは怒った様子で言葉を返した。

「餓鬼が舐めた口を聞きやがって。まあいい、どうせもうすぐお前の体は俺のものになるんだからな。」

 奴はもうすぐと言った。つまりは操作対象になるまでの猶予はあと少しということだろう。

 (それにしても感情的になって会話からボロが出るというのも本当に人間そのものだな。)

 俺は感情を持った機械に感動しつつも、内心奴への対策を決めあぐねていた。

 (黒玉での防御はネジ飛ばしのような攻撃で対策される。"破壊"をしてもすぐに新しい部位が出てくる。"断罪"は奴が誰かを操っているというような罪悪があるときしか使えない。まさか機械が天敵とは……。)

「これで決める。」

 奴は三度駆動音を鳴らしながらの突進をし、俺の頭をめがけて手を伸ばしてきた。俺は無数の黒玉による防御を展開したが、全て奴のネジで相殺された。

 (これならどうだ。)

 "伸縮"で奴の背後に回り、俺は奴の頭に"破壊"の拳を当てた。奴の頭が粉々になる。

「……」

 (倒せたのか?)

 ガシャン!と音がした。すると奴の顔から新しい頭が出てきた。

「人間にはその攻撃は致命的かもしれないが、俺には効かないな。」

 (くそっ、やはりそうか。)

「じゃあそろそろ貰おうか、お前のその体を!」

 奴が俺に近寄ってきたとき、俺はある人に"通話"しながら地下通路の天井に向かって一メートル級の黒玉を連射した。

「なんの真似だ?」

 奴は警戒して距離を取った。奴が警戒する中、俺は空が見えるまで俺は天井に穴を開け続けた。

「散々裁くと言っておいて逃げるつもりか?」

 俺は穴を開けた場所から"飛翔"で外へ出た。

「待て!」

 奴は俺を追って地上へ出てきた。地上に出るとそこは闘技場の入り口付近だった。周りに人は誰もいない。

「地上に出てどうするんだ?何か作戦でもあるのか?」

「ああ、あるさ。」

 (俺はさっき自分の攻撃が通用しない機械は天敵だとわかった。だが逆に機械の天敵は何だろうか。そう、機械の天敵は水だ。そして俺は水に関する強化を持っている。)

 もちろん、この世界での機械づくりの際に水攻撃への耐性を付与している可能性はあるし、第一に奴の元に正確に水を、いや、雨を降らすことができるかもわからない。だが、俺の最初に手に入れた強化がこの都の長を倒せる可能性は十分にある。

 (ダメでもともとだ。信仰、強化対象共に上之手福、強化内容"雨乞い"!)

 俺は手を合わせて"雨乞い"と勝利を自らに願った。
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