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ライカンスロープ③

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ラウルの怒りは半端ない。どうやらあの男もライカンスロープの細胞を体内に入れているみたいだが、オリジナルには到底及ばない。



「こんな事して俺はロスチャイルズ家の人間だぞ。今ならお前の細胞よこすなら許してやる」



「お前のこの世で最後の言葉はそれで良いんだな」



「ちょ…ギャーーー……」



馬鹿だね。そんな事よりジャン君を助けないと。しかし酷いなこんな子供に惨い事して。体中切られて器具を埋め込まれてる。



俺は回復魔法は使えないが深い睡眠状態を維持できるから、器具を外してポーションを使えば身体は元の状態に戻せるけど、心までは回復出来ない。精神魔法も覚えて置くんだった。



俺は一通りジャン君の傷を治し異世界の高カロリー薬も一緒に投与して、ジャン君の呼吸も安定したのでベッドで寝かせ、奥で拷問してるところにやって来た。



「待ってくれ。俺は上に言われてしょうがなかったんだ。だから俺は細胞取る時は麻酔もしたし手当もした」



「ギルティー」



「おいお前弟はどうした?」



「ちゃんと治したよ。今はベッドでぐっすり眠っている」



「お前あの観測機器を外したのか?」



「まだ生きてるんだ。俺も聞きたい事有るから拷問に参加させて」



「俺は聞くことは無い。ジャンがされた痛みを返したら殺すだけだ」



『イブ、なんかこいつに聞くこと有る?』



『別に有りません』



『こいつロスチャイルズって話が聞こえたけど本物?』



『末端の末端の雇われ研究者ですので本丸には届きませんし、ラウル君の組織を絡ませたのはロスチャイルズ家が絡んでいたからです』



『そうなんだ、そんな組織俺が潰してやろうか』



『そんな事すれば世界中が敵に成りますし家族や友人が消されますよ』



『そこは予知の力を使えばなんとかなるだろ』



『なる訳無いでしょ、予知なんて万能じゃ無いですしちょっとした事で未来なんて簡単に変わるんですから』



『それは分かってるけど』



『色々これからの行動指針を考えてますから』



『行動指針って俺を働かせるの?』



『当たり前です』



マジかよせっかくお金が有って可愛い奥さん貰ったのに世界を救うって。異世界で十分働いただろうが。もう陰謀とか策略の無い平和な世界で暮らしたい。取り敢えず目の前のこの男で憂さ晴らししてやる。



「おい!」



「お前日本人なら俺を助けろ。助けてくれたら金も地位も権力もやる。ロスチャイルズ家の息の掛った人間なら何しても捕まることも無いから好きに生きられるぞ」



「悪役って世界が変わっても同じ事言うんだな。魔王は世界の半分くれるって言わなかったのがちょっと残念」



「お前何言ってるんだ。聞く事無いならさっさと殺して隠蔽部隊呼ぶぞ」



「分かったよ。でもちょっと殺す前に人体実験させて」



「何でも喋るから止めてくれ」



「別に聞くこと無いしラウルに後は任せた」



手足もがれたダルマにどうこうする気に成らないから。俺は別にサドじゃないしな。



最後はラウルの爪を額に刺して終わった。



「終わったぞ」 



「甘いなラウルは」



俺は殺した敵兵を奥の部屋に投げ、魔法で火を付けた。



「ウギャー焼ける熱い」



「まだ生きてたろ」



「なんで分かった」



「死体との違いも分からないのか。気配が違うだろ」



俺は最後に原子を操り完全にすべてを灰にした。



「もうジャンを攫われるなよ」



「当たり前だろ……あ……とう…」



「なんだって?」



「うるせーな、部隊を呼ぶから友達を助けるんだろ」



「顔だけ見て隠蔽部隊に後は任すよ」



「そうしてくれると助かる」



それから俺はラウルと別れ斗真が監禁されている部屋にやって来た。



「お~い斗真~生きてるか~?」



「怜志なんでこんなところに?」



「助けに来たんだよ」



「銃持った見張りが居ただろう」



「うん居たよ」



「じゃーどうして」



「どうでも良いじゃん。それよりこれから有る組織の人間たちが来るけど言われた通りにしてね」



「またどっか連れてかれるのか?」



「大丈夫大丈夫、悪いようにはしないはずだから安心して。嫌疑が晴れれば無事解放してくれるから」



「信じて良いんだな」



「それと俺研究所作って再生医療の研究するから、良かったら一緒に捕まってた人を誘ってくれないかな」



「再生医療ってそんな簡単な物じゃ無いぞ」



「お前顔や腕に痣が有るな、丁度良いから実験しよう。ここに取り出したるは不思議な秘薬、これを患部にちょっとかけて残りを飲め」



「いやいや飲めって言われても」



「良いから俺を信じろ」



俺は患部にポーションを掛け余りを無理やり飲ませた。



「まずい」



「手とか見て見ろ」



「傷が無くなってる。それに体調もすごく良くなった。なんだその薬は?」



「それを研究してもらうんだよ」



「やるやる俺はやるぞ~。この薬が有れば怪我の治療も手術中など使い方は多種多様だ」



「だから研究してもらいたいんだよ。もちろん設備は世界最高峰の物を揃えるから」



「本当か。とんでも無い金が掛かるぞ」



「大丈夫だよ。給料もちゃんと払うから。一緒にさらわれた人で一緒に研究する人をスカウトしてね」



「分かった、この研究所に攫われて来た人は多分皆参加すると思うぞ」



「じゃ俺は帰るから近い内に連絡くれな」



「一緒に帰れないか?」



「悪いんだけどこれから来る人間に研究で知った事を隠さず話して、あの細胞は世に出ちゃいけない物だから」



「俺大丈夫かな、殺されたりしないよね」



「当たり前だろ。そんな事するなら俺が今連れて帰るしな。心配するな」



「分かった。戻ったら連絡する」



「ああ、待ってる」



俺は斗真と別れ山の反対側に駐車した愛車を取りに山を登っていると、研究所に向かってかなりの数の車が上って来るのが見える。



『イブ、登って来る車は味方だよな?』



『そうです。攫われた研究員を丁重に扱えと言っておきましたから心配しなくて大丈夫ですよ。仮に手荒に扱ったり怪我させたら組織ごと地上から消し去るとお伝えしておきましたから』



『それって脅しじゃ無いの?』



『脅しじゃ無いですよ。優しく言いましたから。だから末端までちゃんと指示が届いてます』



『ところで研究所の方はどうなってるの?』



『大丈夫です。製薬会社買収しましたから』



『マジで?』



『はい、関西化学工業ももう少しで買収でしますよ』



『おお流石有能なAI』



『でもちょっと中華の獲物を搔っ攫ったからちょっと嫌がらせがあるかもです、テヘペロ』



『本当に大丈夫なのかよ?』



『スルーされた……大丈夫ですよ。動きが有ったら担当責任者の秘密を暴露して失脚させますから』



『任せた、じゃ~帰ろう』



俺は愛車のアストンマーティンに乗り込み愛妻シルフィーの待つ東京へと車を走らせた。





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