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悪友たちの集い

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伊勢神宮を後にした怜志は魂が抜けた様な姿で、予定してた温泉と豪華海産物も食べずキャンセル料を払い、そのまま東京に戻った。



その姿はまるでお通夜に向かう様にうつろで、いつもなら新幹線に乗る前に買うビールも無く座席にただ座っているだけだった。



家に着いても電気も付けずにソファーに座り天井を眺めていた。しかしそれでも生きている人間なんで腹は空く。腹が空腹を知らせる為に鳴く。



「そういえばホテルで食べた朝食以降何も食べて無かったな」



家に帰ってから初めて部屋の電気を付け、冷蔵庫から冷凍うどんを取り出した。



アルミ鍋に具材っと一緒に冷凍されたうどんはコンロに掛ければ、勝手に出来上がる優れものだ。



ただ、レンジ調理やカップ麺と違い少々時間が掛る。そんな待ち時間の間、天照様から受け取ったイブの事を思い取り出した。



『ちょっとなんでしまうのよ』



「えっ、ごめんだって見慣れ無い物を持って街中歩けないだろ」



『だったら一言言いなさいよ』



「すみません」



『まあ~良いわ、これからよろしくね。それで貴方パソコンとやらを持ってる?』



「はあ~有りますけど」



『ついに人類もネットワークを組む事が出来たのね』



「ずいぶん上から目線ですね」



『そりゃそうよ。だって人類が生きて生活できたのは私とアダムのおかげだもん』



『そうよあのころはエバとも呼ばれていたけど、あなたにはイブの方が解りやすいでしょ』



「創世記に出てくるアダムとイブなんですか?」



『創世記は知らないけど、人類が地球に作られて生きて行けるように手助けしたのが私たちよ』



「じゃあ、知識の林檎食べて楽園を追われてはなしは?」



『林檎?地上から戻されたのは、これ以上余計な知識を与えない様に戻されただけよ。私が知識担当でアダムが環境構築担当よ』



「なんか話してるとキリスト教やユダヤ教徒には絶対に言えない話だな」



『ちょっとどうでも良いけど久々の地球なんで色々知りたいから、パソコンまで私を運んでちょうだい』



「なにするの?」



『ネットワークに潜るわ、あと私にちょっとお水をちょうだい』



「飲むの?」



『そうよ。月に一度で良いからお水をちょうだい。私はこう見えてもあなたでも解る様に言うと有機コンピューターなの。基本空気中から水分補給が出来るけど、この部屋は乾燥してるからお願いね』



「そうなんですか?見た目瓶に入った菌みたいに思えるんですけど」



『たしかに私は菌をもとに作られているけど、構造は人間の脳にちかいわね』



なんだか良く分からないが天照様が渡した物だから俺には面倒くさい物でしかないんだけど、人類の創生に係っている事から怜志は邪険には扱えなかった。



『パソコンの側に置いてくれる』



パソコンの側に置くと筒の中から粘菌の様な物から触手の様な物が出て、パソコンの色々なところを触った後USBポートに触れた。



『じゃ~私はネットの海に潜るわ』



「地上に居なかった癖になんかどっかで聞いたような事を言うな」



『いつでも私を思い浮かべて念じれば話せるから、なにか有ったら連絡よろしく!」



「わかった。けど色んなキャラが入ってるのかちょっと頭が痛くなる」



後日、俺は頼んで無いのに通販大手の会社から液体肥料が届いたり加湿器が届いたりしたがイブはネットの海を楽しんでるようだ。



しかも毎日俺がしていた株の売買に興味を持ち、俺とのパスを使い先読みのスキルまで使って俺の代わりに資産運用まで手を出してきた。



俺は本当にやる事が無く抜け殻の様な状態で一ヶ月すごし、母さんに尻を叩かれ外に出るも本屋とレンタル店しか行かず、結局完全な引き籠りに成ってしまった。



親友達も流石に心配してくれて遊びに来るが一向に改善が見えない事に腹を立て、俺を無理やり飲みにつれ出した。



中学からの親友5人組がなにやら何か考えているようだが俺は仕方なく指定された店に向かう。



店に着くと藤堂斗真以外の4人と四宮の彼女が居た。



メンバーは四宮裕宏シノミヤ ヒロユキ。帝大で建築学を学び親の会社で設計課の係長をしている。会社は裕宏の祖父が創業したスーパーゼネコンだ。しかし兄が会社を継ぐので設計で頑張っているようだ。しかも大学時代から彼女の三津屋聡美さん(ミツヅヤ サトミ)て言う俺達唯一の彼女持ちのリア充だ。ちきしょー



2人目が一見チャラそうに見える板垣信之イタガキ ノブユキ。こいつは俺よりも大手の外資系投資銀行モルダー銀行に勤めるエリートだ。今はプライベートバンクを任される部署で頑張っているらしい。こいつも彼女は居ないらしいが特定の彼女が居ないだけで女には不自由してないらしい。こんな奴、死ねば良いのに。



3人目は須藤歩スドウ アユム、弁護士だ。帝大法学部在学中に司法試験に合格した強者だ。今は大手の弁護士事務所で忙しく働いている。歩は俺と一緒であまり女運が無く現在彼女無しだ。



4人目は小鳥遊隆也タカナシ タカヤ、こいつも帝大法学部在学中に司法試験に合格した強者だ。こいつの祖父が現在国会議員をしており小鳥遊広志の秘書をしている。こいつは今かなり忙しいらしく休みが無いらしいから彼女は居ないらしいが、多分どっかのお嬢様と結婚するんだろうと俺は思ってる。



もう1人の藤堂斗真だが今日も不参加だ。俺よりあいつを心配すれば良いのに。



今日の幹事の四宮が手を挙げて俺も呼ぶ。



「おっ、引き籠りの怜志の登場だ」



「うるせいな~ヒロ、三津屋さんこんなバカさっさと別れた方が良いよ」



「わかれないよ~今日は男鹿さん今日は友達の女の子も呼んだから彼女見つけてね」



「はあー!!聞いて無いよ~合コンなら俺こなかったよ!!」



「だから言って無いだろ。言ったら来ないから。もうすぐ来るから諦めろ」



俺は合コンなんて気分じゃない。女々しいかな前の彼女が忘れられないしょぼい奴だ。



「今日は私の会社の可愛い子をよんだからね。男鹿さん最近元気ないんでしょう」



「そんな事ないけど色々あったから疲れちゃった」



「ちょうど来たから紹介するね」



そして俺たちは洋風の居酒屋の個室で合コンを始めた。俺は自己紹介で「最近自宅警備員に就職した引き籠りです」って発言したら見事に滑り。隣に座る女の子の顔が引きつっていた。



事件が起きたのはその少しした後だ。隣の女の子と他愛も無い話で場を濁していると、離れた席に座る女性が席を離れた時に起こりました。



俺の隣に座っていた女性がいきなり席を立ち開いた席に座って、帰って来た女性が怒ったのです。



「ちょっとアヤノなんでその席に座ってるのよ!!」



「席替えしょうよ」



「嫌だよ、こんな良い男が居るのにあの人だけハズレじゃん」



なんか言い争っているが俺はハズレと言われた事が悔しかったのと今まで普通に話していた女性にも嫌われていた事を思うとダブルでショックです。



俺は居た堪れなく帰ろうとすると、親友達や三津屋さんも俺をかばってくれていますが、余計に俺は居た堪れなくなります。



「こいつはなあ今は色々有って引き籠ってるけど凄く優秀な奴なんだよ」



「でも、引き籠りなんでしょ!そんな人を合コンに連れて来るなんて」



「レイジ今普段何してるんだ」



「家でちょっと株式投資をやってる」



「いくら儲かったんだ?」



「三千ちょっと」



「すごいじゃないか三か月で三千万なんて」



俺はここで女性陣に仕返しを思いつき。



「いや、三千万じゃなくて三千億ちょっと」



「はああああ~」



「そんなウソ信じないから」



「別にネットで見せても良いけど」



一速く復帰した板垣が俺に詰め寄り見せろと言ってきた。



しかたなくスマホで株式口座を開き残高と現在の株式価格を表示した。



「総額3342億円ってマジかよ」



「解っただろ、それじゃ~俺は帰るわ」



女性陣は手の平を返し俺に残って欲しいと言ってきたが、俺には金に群がる虫にしか思えず俺は席を立ち帰る事にした。



ただ、帰る時に気を使って誘ってくれた友人に迷惑を掛けたので会計で金を払う事にした。



カードで払っていると友人たちは俺を迎えにきてくれた。



「悪いなこんな事になちゃって、お前らは楽しんで行けよ」



「俺達もなんか冷めちゃったし、しょせん女は金なんだと思うと悲しいよ」



「私はお金なんかじゃなく裕宏が好きだからね」



「さすが俺の彼女!」



「レイジ気分変えてちょっと飲みなおそうぜ」



「まあお前達だけだったら良いぜ」



それから店を変えて飲みなおしたが、俺が持ってるカードがノーマルなのを見て板垣がプライベートバンクに口座を開けって言ったり、四宮がビルを建てて設計させろと言って来たが、こいつらが冗談で言ってる事を俺は知っている。



それでもお金があるならファッションを見直せだの車を買えだの言われた。最後に斗真は誘ってもこないから4人で近時かゴルフに行こうと誘われ別れた。



帰りのタクシーの中でお金が有っても使って無いな~と思い、俺は小さい頃からの夢を思い出し車を買う事にした。





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