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第4章 サラの正体

第110話 正体をすぐに暴いてみた

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 ———ディートヘルム・フォーアラードゥング。

 魔王の側近にして稀代の大召喚術師。

 こいつは頭がいいし、召喚術師と言う後衛の筈なのに前衛の戦闘も普通に強い。

 魔王ですらこいつの考えていることがわからないと言われているほどの狡猾な奴だ。  

 その象徴でもある飄々とした腹立つ態度は人を苛つかせる。

 しかしその態度はどうにかならないのか?

 今目の前にいるのはお前の上司なんだぞ。

 そう声を大にして言いたいが俺は生徒でアイツは教師。

 流石に俺から言うのは不味い。

「それでなんの様ですか?」

 どうせあらかた分かっているだろうにわざわざ聞いてくるディートヘルム。

 本当に性格が悪い。俺は面倒な奴は大嫌いだ。

 それはルイーゼも思っているのか少し口調を強めながら糾弾する。

「こいつは貴方が私に通さずに雇った教師の1人でしょう?」

 ルイーゼは何か不審な点がないかじっくりと観察している様だが、ディートヘルムは全く感情の揺れがないままにこやかな表情を変えることなく返答する。

「……ええ、確かに私が雇った教師ですね。何か問題でも起こしましたか?」

「そんなの貴方も知ってあるでしょう? わざわざ私が言わなくても」

 ルイーゼが怒気を孕んだ声色で言うが、ディートヘルムはどこ吹く風である。

「勿論把握していますよ。この方が生徒に色々としていたみたいですね。これは私の責任です。申し訳ありませんでした」

 そう言って素直に頭を下げてくるディートヘルム。

 それを見たルイーゼは俺の方に目を向けてきた。

 目では『こいつは本当に魔族なのか?』と聞いている。

 確かに世間一般で知られている魔族は傲慢で下等生物である人間に頭を下げる奴などいない。

 しかしこいつは頭がいいのだ。

 こいつは自分が頭を下げれば、知られている魔族の想像と違うため、大抵の本当は人間なんじゃないかと思ってしまう。

 しかしこれが普通の魔族なら頭を下げないだろうが、こいつだけは違う。

 こいつはプライドなど平気で捨てることのできる奴だ。

 だからこう言った人間界での行動が自由なのだが、それは今日で終わりだぞ。

 俺はルイーゼに『後は任せてください』と目線で送る。

 ルイーゼが小さく頷いてくれた。

 それじゃあ俺との話し合いといこうじゃないかディートヘルム。

「それでお前はこいつの正体を知っていて雇ったのか?」

 俺は封印を1段階解き、level:200並の力まで出せる様にする。

 その圧を受けたディートヘルムは少し驚いた顔になるとニヤッと不気味に顔を歪ませた。





☆☆☆






 俺とディートヘルムは向かい合い、俺の後ろにはルイーゼを控えさせる。

 生徒の後ろに学園長を控えさせると言う異様な光景が出来ているが、その場にいる者達は誰も気にしない。

 ディートヘルムはずっと俺の前で笑っている。

「それでどうなんだ? お前は正体を知っていたのか?」

 俺がもう一度聞くと笑いを収めて、

「勿論知っていましたよ。彼の強さも詳しくね」

 呆気なく明かした。

 しかしこれは俺の予想通り。

 よし、これで俺は1つの疑問を解くことができた。

 それは、

 ——魔族はステータスを知っている。

 と言うことだ。

 まずこいつは頭が良すぎるため、人間のことを下に見ている。

 更にこの世界で人間はステータスを知らないと分かっている。

 そして奴は兎に角色々と余計なことを話したがるのだ。

 そんな奴が、強さを詳しく知っている、と言っている。

 それは奴が鑑定を使えるため、詳しい情報をステータスから見ることができると言うことだ。

 俺は新たな発見に少し口角を上げる。

 そんな俺を見て今度はディートヘルムが訝しげな表情になった。

「何が面白いんだい?」

「いやお前は本当に馬鹿だよな」

「…………は?」

 ディートヘルムの言葉に怒気が混ざる。

 まぁ今まで天才ともてはやされていた奴が馬鹿と罵られればキレもするか。

「な、なんだいき、急に……?」

「ああそういうのはいいから。面倒だから素手話してくれ魔王軍幹部、ディートヘルム」

「———ッッ!!??」

 ディートヘルムは自分の正体が呆気なくバレたことにめちゃくちゃ驚いていた。

「……一体何者だガキ……」

 ディートヘルムの口調が変わる。

 ふぅ……これの方が話しやすい。

「さて、今度は人類代表と魔王軍代表として話し合おうじゃないか」

 俺はニヤリと笑い、ディートヘルムは苦虫を噛み潰したような表情になっていた。


 
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