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第3章 種族進化

第81話 手加減って難しい!

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 俺はエレノアが打ち漏らしたデュエルクレイターを素材が取れる程度を意識して殴る。

「はっ!!」

 俺の神気が纏われた拳は『ヒュン』と言う風を切る音と共にデュエルクレイターの顔面に当たる。

 その瞬間に『パンッ!』とモンスターが破裂して辺りに血飛沫が散る。

 思わず顔を顰めてしまうが、手を止めている場合ではない。
 
 俺が派手に倒したせいで仲間意識の強いデュエルクレイターがゾロゾロとやってきた。

 エレノアは何をしているんだと思い、エレノアの方を向くと、なんとエレノアが敵のボス達も相手にしていたのだ。

 おっと……これはエレノアが少々危ないな……。

 俺も急いで援軍に行かないと。

 しかし俺を逃さないとばかりに他のモンスターたちが連携して攻めてくる。

「……エレノアが打ち漏らしたのは10頭ほどだから、それくらいなら一気に来られても大丈夫だな」

 俺は先程よりも神気の量を減らして殴ってみるが、今度は倒すことが出来なかった。

 その間にも2頭のモンスターが飛びかかってくる。

 息があっており、隙が殆ど無い見事な連携だった。

 しかしそれは両方がいるときにしか出せない強みだ。
 
 俺は瞬時に片方のモンスターの懐に入り殴り飛ばす。

 今度は破裂こそしなかったもののそれよりももっとグロテスクになっていた。

 全身の骨がボキボキに折れていて……うん言わないほうが良さそうだ。

 しかしどうやら今回は手加減なんて言っている場合でもなくなってきた。

 あまり時間をかけすぎると他の群れまで来てしまう。

「すまないな。お前達に手こずっている時間はないんだ」

 俺は神気を50%程に強化し、白銀の残像を残して一気に敵陣へと駆ける。

 音を置き去りにした速度で相手が動く前に仕留める。

「疾ッッ!!」

 俺は素早く拳を繰り出し、相手が破裂する音がする前にまた違うモンスターに拳を繰り出す。

 モンスター達は声を出す間も無く絶命していく。

 ほんの数秒で10頭のデュエルクレイターは既に消えていた。

 俺は止まることなくこのままの速度でボスを殴り飛ばす。

「はっ!!」

「グルァッ!?」

 ボスがいきなりの強い衝撃に呻き声を上げて吹き飛ぶ。

「エレノア! このボス達は俺が相手をするからエレノアは雑魚達を処理していてくれ!」

「りょ、了解しました!」

 エレノアは一瞬俺を見たかと思うと、すぐさま透明化と隠密を使って暗殺者らしい戦闘を始めた。

 先程まではボスが邪魔で防戦一方だったからな。

 俺はボスの番もエレノアから離すためサッカーの要領で蹴り飛ばす。

 巨体の割には結構軽く、思った以上に吹き飛び、ボスにぶつかった。

 俺は2頭の元に移動する。

 これならエレノアの邪魔になることはないだろう。

「すまないがお前達には俺の練習台になってくれ」

 こんな雑操作だと迂闊に使っていられない。

 2頭は俺を強敵と判断したらしく、突如地面と同化した。

 更に気配がうまく捉えられなくなってしまった。

 そして同化したと同時に俺の立っている地面が無くなる。

 いや比喩じゃなく本当に落とし穴の様に無くなったんだよ。

 俺は飛び上がり回避するが、今度は地面から砂の触手みたいなものが出てきて俺を追撃し出した。

 チッ、ゲームの頃よりも速くなってるな。

 軽く音速くらいは出ている。

 一方で俺は空中と言うこともあり、速度は出せない。

 だが手がないと言うわけでもない。

「———神技【神眼】———」

 世界の視え方が変わった。

 色が細かくなり、世界のスピードが遅くなる。

 しかし流石は音速ということもあってちゃんと神眼の世界でも速度が出ている。

 まぁそれでも秒速2m程で、子供が走る速度より遅い。

 俺は空中で触手を足場とし、避けながら地面へと向かっていく。

 そして拳に神気を溜め、

「擬似神技【破壊神】ッッ!!」

 エイクに教えてもらった神技の真似技を地面に叩きつける。

 すると地面が破壊された。

 半径50mほどの地面が綺麗に無くなっている。

 そしてボス達の気配も完全に消えてしまった。

 神眼を解除してエレノアの方を見ると既に倒し終えており、素材を剥ぎ取っている。

 俺も結構早く倒したつもりだったが、どうやらエレノアはそれよりも早く倒していた様だ。

「強くなったなぁ……俺は嬉しいぞぉ」

 俺は思わずお爺ちゃんみたいに言ってしまう。

 だがほんの数ヶ月で俺と同等並みに強くなったのだ。

 少しは喜んでもいいじゃないか。

 俺はエレノアの元に歩いていく。

 するとエレノアも俺に気付き駆け寄ってきた。

「お疲れ様でしたソラ様!」

「そちらこそお疲れ様エレノア。まさか俺よりも早く倒すなんてな。強くなったな」

 俺はエレノアの頭を撫でる。

 この何ヶ月でエレノアが頭を撫でられるのが好きだと分かったので、褒める時はよく撫でている。

「あ、ありがとうございます……」

 恥ずかしそうにするが頭を動かすことはない。

 何故かそれが猫みたいでこの後も少しの間撫でていた。

 



☆☆☆





「よし、やっと抜けれた……」

「長かったですね……」

 あれから5時間が経ち、無事にオアシスを出ることができた。

 今回は幸運なことにエイク級のモンスターとは合わなかったのが1番だろう。

 俺たちは揃ってオアシスを振り返る。

 すると急に湖から巨大な龍が現れた。

「グルァアアアアア!!」

 龍が鳴くだけで強風が発生する。

 俺たちは目を合わせ、

「会わなくてよかったぁ……」

 合わなかった幸運を味わっていた。

 それから数分し徐ろに立ち上がり、

「それじゃあそろそろ行くか」

「そうですね」

 再び目的地へと向けて歩きだした。

 次はとうとう俺たちが目指していた目的地だ。

 はやる気持ちを抑え警戒しながら進む。


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