チートを貰えなかった落第勇者の帰還〜俺だけ能力引き継いで現代最強〜

あおぞら

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第1章 落第勇者の帰還

第27話 落第勇者、文化祭を襲撃される

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「お嬢様、スフレパンケーキをお持ちしました」
「あ、ありがとうございますっ!」

 優奈さんが目をキラキラ輝かせながらお礼を言ってくれるが、その目はずっとスフレパンケーキに行っている。
 まぁ確かにこのスフレパンケーキ美味そうだもんな。

 清華が作ったスフレパンケーキは普通に店に出せるレベルで見た目も味も良く、パンケーキの大好きな優奈さんならこうなってしまってもしょうがない。
 実際、試食をした男子達は美味すぎておかわりしていたほどだ。

 そして光輝が今学校中を回りながら、このクラスの宣伝をしているのだが、完全に失敗した。
 全く来ないんじゃなく、人が来すぎた。
 廊下には、

「ねぇ、アンタはあの宣伝見てきたの?」
「当たり前よ。あんなイケメンにお願いされたら行くしかないわ」
「それに彼の他にも超絶イケメンがもう1人いたわよね」
「それに超ムキムキの彼! 彼の筋肉は素晴らしいわ!」
「俺も彼の筋肉を見るために来たぞ!」

 大勢の女性と、筋肉を見に来た男性が長蛇の列を作っている。
 メイド目当ての男性客が殆いないので、どうやら1日目は女性を主として行くみたいだ。
 因みにこの学校では文化祭は3日ある。
 
「隼人君! 外見てないで接客をしてくれないかしら?」

 清華が巨大なホットプレートから顔を上げて行ってくる。
 よそ見をしているにも関わらず手が全く止まっていない。
 
「分かりました。いらっしゃいませお嬢様方。お2人で大丈夫ですか?」
「は、はい! お2人で大丈夫です!」
「では此方へどうぞ。テーブルの上にメニュー表がありますので、お決まりになりましたら、お好きな時にお呼びください」
「は、はい! ありがとうございます!」
「決まったかお呼びします!」
「それではお嬢様方、一失礼致します」

 俺は笑顔を浮かべて離れる。
 後ろから先ほど接客した2人の声が聞こえてきた。

「ヤバいわ……微笑も良かったけど、満面の笑みは意識が飛びそうだったわ」
「ほんとそれな。宣伝してた子もめっちゃイケメンだったけど彼もイケメンだったわ……」

 そう言うのは本人の聞こえない所でして欲しいものだ。
 無性にむず痒くなるからな。
 俺が頬が緩まないように意識していると、優奈さんからの視線を感じた。

「……隼人君って人気なんですね」
「そうなんですよ~。ウチの隼人君は光輝君の次に人気ですね。接しやすいですから」
「それはよく分かる気がします」

 何やら優奈さんがクラスの女子と話しているので、余計なことを言うなよと脅――注意しようとしたその時、

「きゃああああああああ!!」
「!?」
「な、何ですか今の悲鳴は!?」

 突然外から女性の悲鳴が聞こえてきた。
 俺は考えるよりも先に異世界と同じ様にクラスを飛び出して【感知】を発動させる。

 明らかに今の悲鳴は何かに恐怖した時に出る物だった。
 異世界では毎日のように聞いていたから分かる。

 俺の頭の中に感知による膨大の情報が入ってくる。
 今回は文化祭と言う行事のため、何時もよりも人が多い。
 そのせいで頭が割れそうなほど痛くなるが歯を食いしばって耐え、何とか感知を終えた。

「……くッ……ゴブリンとオークか……」

 感知の結果はゴブリンが10体とオークが5体、そしてその上位種であるゴブリンキングにオークキングが共に1体ずつ。
 更にゴブリンの最上位種であるゴブリンエンペラーが感知できた。

「チッ……一体どういうことだ……。コイツらが揃ったら異世界でも猛者の部類に入るじゃないか……」

 オークはC級上位の強さを持っており、異世界ではベテランへの登竜門とされていた。
 そしてオークキングはオークよりも圧倒的に強く、冒険者でも単独ではA級冒険者でないと討伐不可能なB級上位。
 しかしここまではまだいい。
 ここまでならこの世界の異能者でも十分に対処可能なレベルだ。
 
 だがゴブリンエンペラーは難しいだろう。
 ゴブリンエンペラーはA級下位の強者で、オークキングとは階級は1つしか違わないが、そこには圧倒的な壁がある。
 このモンスターが相手だと、S級でも下手すれば死んでしまうほどの強敵だ。
 実際に過去にS級冒険者がゴブリンエンペラーに不覚を取って死亡した例もある。

「くそッ……組織は何をしているんだ……こう言うのは事前に気付けない物なのか!?」

 俺がそう悪態をついていた時、電話が掛かってきたので繋ぐと同時に怒鳴る。

「一体組織は何をしているんだ!!」
『耳元で騒ぐな、鬱陶しい! 此方も今丁度感知したばかりなんだ!』
「お前らの所に予知能力者はいないのか!?」

 異世界では予め【予知】のスキルを使って場所や日時をある程度特定していた。

『僕達の組織に所属している予知異能者は場所までしか分からない!』
「その場所が俺たちの学校だったわけか。だが、一体どうして教えてくれていなかったんだ? 俺も組織の一員だぞ」
『そ、それは……』

 電話越しの聞いたことのない声の人間が黙る。
 何かしら理由があるのだろうが、今はその時間は無駄だ。

「もういいから今一体何が起きているのかを話せ。簡潔にな」
『今回のモンスター達は1人の男によって引き起こされたものだ。その男を倒せばモンスターも消えるはずだ』
「…………そうか、もう切るぞ」
『ちょ、少しま――』

 俺は電話を切り、階段を駆け登って屋上へとたどり着いた。
 まず上からモンスターの位置を確認した後、スキルを発動する。

「【身体強化:Ⅵ】」

 その瞬間に全身を赤黒い亀裂が走り、眼は両目とも銀色に変化し、髪が揺蕩う。
 更に体の周りを白銀のオーラが薄く纏われる。
 そして俺の体から強大な威圧が放たれると、気配に敏感なモンスターは俺の存在に気付いたようで動きを止めた。
 これで少しは時間が稼げただろう。

「……ふぅ……」

 大きく1度深呼吸をして気分を落ち着かせる。

 それにしてもこの状態になったのは久し振りだ。
 異世界でもここからはあまり使っていなかった。
 なのでこの体では少々負担が大きいが、そこは我慢するしかなさそうだ。

「よし――行くかッ!」

 俺は屋上からモンスター目掛けて飛び降りた。

 
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