チートを貰えなかった落第勇者の帰還〜俺だけ能力引き継いで現代最強〜

あおぞら

文字の大きさ
上 下
19 / 40
第1章 落第勇者の帰還

第18話 落第勇者、組織へ出向く

しおりを挟む
 俺は如何にも高そうな黒塗りのリムジンみたいな車に乗り込む。
 中は小さな家みたいだった。
 
「これは凄いな……」

 この世界にもこんな部屋みたいな乗り物があったとは。
 まぁ異世界ではこれよりもっと広くて快適な馬車には何回も乗ったけど。
 一応S級冒険者だったからな。

 俺が感心していると、既にリムジンに乗っていたまだ小学生程の男の子が俺の所に駆け寄っていて言う。

「ねぇねぇ、お兄さん誰? 僕は三河颯太みかわそうたって言うの!」
「俺は斎川隼人だ。颯太はどうしてここに居るんだ? まだ小学生だろう?」

 俺が目線を合わせて——元々座っているのだが——聞いてみると、

「何か『この車に乗ってみたいかい?』って言われたから乗りたいって言ったら乗せてもらえた!」
「バリバリの誘拐じゃないか」
「ち、違うわよっ! ちゃんと親御さんにも連絡済みよっ!」

 宮園が少し焦りながら言って来るが、正直信用ならない。
 ここは俺がこの子に話をして説得しなければ。
 きっとご家族が悲しんでいる筈だ。

「颯太、お家に帰りな。これから危ない所に行くかもしれないんだぞ?」
「大丈夫! 僕慣れてるからっ! 僕が隼人お兄ちゃんを守ってあげる!」

 そう言ってむんっとドヤ顔をしながら胸を張る。
 その姿はちょっぴり可愛いが、慣れているとはどう言う事だろうか?

 俺は意味を確かめるために宮園の方を向く。

「おい、お前……まさかこんな子供に戦わしてないよな?」
「まだ戦わしてないわ。彼のお姉さんは既にウチの組織の戦闘員だけど」
「そうだよ! だからこれからお姉ちゃんに会いに行くんだっ! 隼人お兄ちゃんにも会わせてあげる! お姉ちゃん『彼氏が欲しい……』って言ってたから!」
「そ、そうか……それは楽しみだな……」

 何て反応したらいいのか分からない。
 ただ、颯太のお姉さんは可哀想だなと切実に思うよ。
 知らない男に自分の事情をバラされたんだからな。

 俺が名も知らぬお姉さんに同情していると、コホンッと咳払いをした宮園が突然真剣そうな顔になり、俺たち2人に向かって話し始めた。

「……そろそろ雑談はお終いにして……それでは2人に何故呼ばれたのかを説明します」
「どうせ勧誘だろ? それか企業紹介的な事か?」

 逆にそれ以外で俺が呼ばれる理由が分からない——いやもう1つあるな。
 俺を抹殺、又は捕縛か。
 もしそうなら全力で抗わせて貰うが。

「もしお前達の組織が俺の捕縛、又はる気なら今すぐ俺は帰るぞ?」

 俺は颯太と運転手以外の異能力者に向けて軽い・・殺気を向ける。
 しかしそれだけで何人かは泡を吹いて気絶し、残りもガタガタと震えている。
 だが俺の良心は全く痛まない。
 
 こちとら異世界で何百人と殺しているからな。
 まぁ全員俺を殺そうとしたから仕方なくだが、それでも人を殺した事には変わりない。
 異世界では生き物の命の価値が軽いのだ。

 颯太はいきなりみんなが気絶したり震えたりし出した事に一瞬首を傾げるも、何かを察した様に「あっ!」と声を上げた。

「もしかして隼人お兄ちゃんが【威圧】の異能使ったの?」
「ちょっと違うけどそんなもんだ。頑張れば颯太も使える様になるぞ」
「本当!? 今度教えてね!!」
「機会があればな」

 そんな風に俺と颯太で仲良く話していると、何も知らない運転手が扉を開けて驚愕に目を見開く。

「斎川隼人様、三河颯太様到着いたしまし———な、何があったのでしょうか……?」
「気にしなくていいぞ」
「気にしなくていいぞっ!」
「いえ、しかし……」

 俺と颯太が気にするなと言うが、流石に異能力者が何人も気絶している事が気になる様で食い下がって来るが、そこで辛うじて俺の殺気から脱した宮園が運転手を止める。

「大丈夫よ……私たちの実力不足だっただけだから……」
「は、はぁ……?」

 イマイチ釈然としていない様だが、自分の立場を弁えているらしく、「失礼しました」と俺たちに謝罪をした後去っていった。

 ああ言う人ほど信用が出来るんだよな。
 余計な事には突っ込まないから気も楽になるし。

 俺はゆっくりと車を降りる。
 降りた先に広がっていた光景は、何処にでもある一軒のマンションの様な所だった。
 しかし、そんな物は俺たちが見ている・・・・光景に過ぎない・・・・・・・

「……【感知】」

 その瞬間に周りの物の全ての情報が入って来る。
 そこにはここ一体を覆っている結界の様な物も勿論感知済みだ。

「……幻影結界か」
「よく分かったわね。これはウチの最高の実力者が張った物なんだけれどね」

 いつの間にか復活していた宮園が少し眉尻を下げて言う。
 どうやら相当この結界を張った人を尊敬しているらしい。
 ここで空間拡張結界が張ってあることにも気付いたが、それは話さないでおこう。
 何故なら幻影結界よりも厳重に隠されていたからな。

 ——が、異世界ではこれくらいなら張れる人間などごまんといる。
 パトリシアさんの結界は、異世界の時の俺でも本気で集中しないと見つけられないほどの隠密性だったからな。

 しかし幻影が解かれると、先程とは比べ物にならないほどの広さを持った土地で、そこには巨大な建物が立ち並んでいた。
 公園もあればマンションもあるし一軒家も何十軒かは確実にある。
 
 ふむ……これは1つの団体じゃなくてもはや街だな。
 確実にもっと大きなものも絡んでいるだろう。

「ようこそ、私たち異能者の組織———《異端の集まり》へ」

 宮園の歓迎の声を聞きながら、俺は警戒度を何個か上げる事にした。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

スキル:浮遊都市 がチートすぎて使えない。

赤木 咲夜
ファンタジー
世界に30個のダンジョンができ、世界中の人が一人一つスキルを手に入れた。 そのスキルで使える能力は一つとは限らないし、そもそもそのスキルが固有であるとも限らない。 変身スキル(ドラゴン)、召喚スキル、鍛冶スキルのような異世界のようなスキルもあれば、翻訳スキル、記憶スキルのように努力すれば同じことができそうなスキルまで無数にある。 魔法スキルのように魔力とレベルに影響されるスキルもあれば、絶対切断スキルのようにレベルも魔力も関係ないスキルもある。 すべては気まぐれに決めた神の気分 新たな世界競争に翻弄される国、次々と変わる制度や法律、スキルおかげで転職でき、スキルのせいで地位を追われる。 そんななか16歳の青年は世界に一つだけしかない、超チートスキルを手に入れる。 不定期です。章が終わるまで、設定変更で細かい変更をすることがあります。

収納大魔導士と呼ばれたい少年

カタナヅキ
ファンタジー
収納魔術師は異空間に繋がる出入口を作り出し、あらゆる物体を取り込むことができる。但し、他の魔術師と違って彼等が扱える魔法は一つに限られ、戦闘面での活躍は期待できない――それが一般常識だった。だが、一人の少年が収納魔法を極めた事で常識は覆される。 「収納魔術師だって戦えるんだよ」 戦闘には不向きと思われていた収納魔法を利用し、少年は世間の収納魔術師の常識を一変させる伝説を次々と作り出す――

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

悪役令息の三下取り巻きに転生したけれど、チートがすごすぎて三下になりきれませんでした

あいま
ファンタジー
悪役令息の取り巻き三下モブに転生した俺、ドコニ・デモイル。10歳。 貴族という序列に厳しい世界で公爵家の令息であるモラハ・ラスゴイの側近選別と噂される公爵家主催のパーティーへ強制的に行く羽目になった。 そこでモラハ・ラスゴイに殴られ、前世の記憶と女神さまから言われた言葉を思い出す。 この世界は前世で知ったくそ小説「貴族学園らぶみーどぅー」という学園を舞台にした剣と魔法の世界であることがわかった。 しかも、モラハ・ラスゴイが成長し学園に入学した暁には、もれなく主人公へ行った悪事がばれて死ぬ運命にある。 さらには、モラハ・ラスゴイと俺は一心同体で、命が繋がる呪いがオプションとしてついている。なぜなら女神様は貴腐人らしく女同士、男同士の恋の発展を望んでいるらしい。女神様は神なのにこの世界を崩壊させるつもりなのだろうか? とにかく、モラハが死ぬということは、命が繋がる呪いにかかっている俺も当然死ぬということだ。 学園には並々ならぬ執着を見せるモラハが危険に満ち溢れた学園に通わないという選択肢はない。 仕方がなく俺は、モラハ・ラスゴイの根性を叩きなおしながら、時には、殺気を向けてくるメイドを懐柔し、時には、命を狙ってくる自称美少女暗殺者を撃退し、時には、魔物を一掃して魔王を返り討ちにしたりと、女神さまかもらった微妙な恩恵ジョブ変更チート無限を使い、なんとかモラハ・ラスゴイを更生させて生き残ろうとする物語である。 ーーーーー お読みくださりありがとうございます<(_ _)>

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

処理中です...