16 / 40
第1章 落第勇者の帰還
第15話 落第勇者、身近に異能者を見つける②
しおりを挟む
「…………」
「…………」
『何で黙っている?』
俺と宮園が何て話せば良いか分からず黙っていると、俺の頭の中で破壊剣が痺れを切らしたのかそんな事を宣う。
勿論俺も話さないといけないのだが、大して仲良くも無く、よりにもよって最悪な所を見られてしまったわけで……。
「…………」
「…………」
「「な、なぁ!(ね、ねぇ!)———あっ」」
「「さ、先にどうぞ!」」
ダメだ……どちらもテンパりすぎてタイミングがバッチリ合ってしまう。
『はぁ……これが異世界を救った勇者たちか……情けない……』
それとこれとは違うんだよ。
それと俺は勇者じゃ無いんでね。
ただ破壊剣の言う通りこのままでは埒が開かないので、ここは歳上である俺が話しかける。
「……それで、一体どう言う事だ? もう見られたから言うけど、どうやって俺の感知から逃れたんだ?」
宮園の顔が曇り、口をモゴモゴとして言いにくそうにしている。
いつもクールなら姿しか見ていなかったので、少しその姿は新鮮だ。
俺がそんな結構どうでも良い事を考えていると、宮園がやっと口を開いた。
「わ、私は——貴方から急に異能の力を感じたから……組織に監視を頼まれて……」
「組織……? 監視……?」
俺は聞き慣れない単語に首を傾げる。
「そ、組織って言うのはっ!」
「い、一旦落ち着け……」
「うっ……分かったわ……」
あまりにもいつもと違う様子の宮園に少し可哀想になって来たので話をストップさせる。
とは言え此方も大分頭の整理が出来てなく、時間が欲しかったので丁度いい。
『破壊剣、どう思う?』
『……その破壊剣って言うのやめて欲しいんだが……』
『じゃあ何と言えば?』
異世界でもずっと破壊剣か相棒としか言っていなかったので、何を言えば良いのか分からない。
自慢じゃないが、俺にネーミングセンスはカケラもないので、出来ればそのままがいいんだが。
『……カーラで宜しく頼む』
『どこから取ってきたんだ?』
『我の名前はカラドボルグだっ!』
カラドボルグって……確か聖剣エクスカリバーの原型だった気が……。
そう言えば光輝が使っていた聖剣ってエクスカリバーだったよな。
『お前、エクスカリバーの原型なのか?』
『エクスカリバー? ——ああ、我の下位互換か。あれは我の力を真似した神が危険性を無くして純粋な聖剣にした物だ。あれよりも我の方が強いぞ?』
俺は帰還してからとんでもない事を知ってしまった。
俺の使っていた剣が、聖剣よりスペック高かったとは。
俺が衝撃を受けていると、宮園が平静を取り戻した様で話しかけてきた。
「……まず異能力から話すわね」
そう言って宮園は異能力について話し始めた。
「異能力と言っても、遺伝系と突発系の2つがあるの」
宮園が指を2本立てる。
「遺伝系は、先祖代々同じ異能力を引き継いでいる者の事ね。そして遺伝系には十数種類程しかない代わりに、とても強力な異能を持っているわ。そして結構な確率で2つ持っている人が多いわね」
成程……ならあのサイトの奴もこの遺伝系に入るのか。
だがその人のスキル……この世界では異能だったな。
その異能——【探知】はサイトにも書いてあったが【感知】の下位互換だ。
何故かと言うと、感知は解釈によって何でも感知出来るが、探知は探す事に特化しているため、感知よりも使い所が少ないためだ。
感知でもものを探したりは全然出来るからな。
そんな俺の物と同等並の雑魚スキルがこの世界では強いか……何て平和な世界だ。
それに異能を2つと言うのは、多分異世界転移をした人々は2つスキルが貰えるからじゃないのか?
俺たちも月野さんは分からないが、それ以外の全員は2つ持っていたし。
「どうしたの? いきなりぼうっとして」
「あ? あ、いや何でもない」
俺は考えていた事を悟られない様に誤魔化し、話の続きを促す。
「……それでは次に突発系の異能についてね。突発系は今のはや——斎川君の様な突然発現する異能のことよ。基本的には、物を持ち上げたり、物を少し軽くしたりするくらいの弱い異能しかないんだけれどね。それと、貴方は幾つか持っていそうだけれど、遺伝系と違って普通は1つしか覚醒しないわ」
「じゃあ俺のこの状態は稀って事か?」
俺は異世界転移の事は言えないので、取り敢えず異能力という事で話を合わせておく。
宮園はそんな俺の言葉に頷き、
「ええ。突発系の異能力者が日本には20、30万人くらい居るらしいけれど、その中でも両手で数えるほどね」
「え、30万? そんなに異能力者は多いのか?」
「そうね。近年頻繁に現れる様になっている事もあるのだけれど」
俺はその数に驚きを隠せず、思わず聴いてしまう。
しかし宮園の答えは案外あっさりとした物だった。
もしかして驚く俺がおかしいのか?
何て一瞬思ってしまったが、転移されるまでの17年間で1度も聞いたことがなかったのでそんな事ないだろう。
「それで、その沢山いる異能力者を取り締まるのか組織って事か?」
「その通りよ。組織は異能力者がその力を使って犯罪を起こさない様にするのと、偶に次元を超えてやってくる生き物を退治する2つの役割があるわ」
…………めちゃくちゃ関わりたく無かったな……。
『もう遅い。諦めるのだな我が主』
俺は頭の中でそう言われてガックリと肩を落とすのであった。
勿論宮園には何も聞こえていないので不思議そうな顔をしていたが。
「…………」
『何で黙っている?』
俺と宮園が何て話せば良いか分からず黙っていると、俺の頭の中で破壊剣が痺れを切らしたのかそんな事を宣う。
勿論俺も話さないといけないのだが、大して仲良くも無く、よりにもよって最悪な所を見られてしまったわけで……。
「…………」
「…………」
「「な、なぁ!(ね、ねぇ!)———あっ」」
「「さ、先にどうぞ!」」
ダメだ……どちらもテンパりすぎてタイミングがバッチリ合ってしまう。
『はぁ……これが異世界を救った勇者たちか……情けない……』
それとこれとは違うんだよ。
それと俺は勇者じゃ無いんでね。
ただ破壊剣の言う通りこのままでは埒が開かないので、ここは歳上である俺が話しかける。
「……それで、一体どう言う事だ? もう見られたから言うけど、どうやって俺の感知から逃れたんだ?」
宮園の顔が曇り、口をモゴモゴとして言いにくそうにしている。
いつもクールなら姿しか見ていなかったので、少しその姿は新鮮だ。
俺がそんな結構どうでも良い事を考えていると、宮園がやっと口を開いた。
「わ、私は——貴方から急に異能の力を感じたから……組織に監視を頼まれて……」
「組織……? 監視……?」
俺は聞き慣れない単語に首を傾げる。
「そ、組織って言うのはっ!」
「い、一旦落ち着け……」
「うっ……分かったわ……」
あまりにもいつもと違う様子の宮園に少し可哀想になって来たので話をストップさせる。
とは言え此方も大分頭の整理が出来てなく、時間が欲しかったので丁度いい。
『破壊剣、どう思う?』
『……その破壊剣って言うのやめて欲しいんだが……』
『じゃあ何と言えば?』
異世界でもずっと破壊剣か相棒としか言っていなかったので、何を言えば良いのか分からない。
自慢じゃないが、俺にネーミングセンスはカケラもないので、出来ればそのままがいいんだが。
『……カーラで宜しく頼む』
『どこから取ってきたんだ?』
『我の名前はカラドボルグだっ!』
カラドボルグって……確か聖剣エクスカリバーの原型だった気が……。
そう言えば光輝が使っていた聖剣ってエクスカリバーだったよな。
『お前、エクスカリバーの原型なのか?』
『エクスカリバー? ——ああ、我の下位互換か。あれは我の力を真似した神が危険性を無くして純粋な聖剣にした物だ。あれよりも我の方が強いぞ?』
俺は帰還してからとんでもない事を知ってしまった。
俺の使っていた剣が、聖剣よりスペック高かったとは。
俺が衝撃を受けていると、宮園が平静を取り戻した様で話しかけてきた。
「……まず異能力から話すわね」
そう言って宮園は異能力について話し始めた。
「異能力と言っても、遺伝系と突発系の2つがあるの」
宮園が指を2本立てる。
「遺伝系は、先祖代々同じ異能力を引き継いでいる者の事ね。そして遺伝系には十数種類程しかない代わりに、とても強力な異能を持っているわ。そして結構な確率で2つ持っている人が多いわね」
成程……ならあのサイトの奴もこの遺伝系に入るのか。
だがその人のスキル……この世界では異能だったな。
その異能——【探知】はサイトにも書いてあったが【感知】の下位互換だ。
何故かと言うと、感知は解釈によって何でも感知出来るが、探知は探す事に特化しているため、感知よりも使い所が少ないためだ。
感知でもものを探したりは全然出来るからな。
そんな俺の物と同等並の雑魚スキルがこの世界では強いか……何て平和な世界だ。
それに異能を2つと言うのは、多分異世界転移をした人々は2つスキルが貰えるからじゃないのか?
俺たちも月野さんは分からないが、それ以外の全員は2つ持っていたし。
「どうしたの? いきなりぼうっとして」
「あ? あ、いや何でもない」
俺は考えていた事を悟られない様に誤魔化し、話の続きを促す。
「……それでは次に突発系の異能についてね。突発系は今のはや——斎川君の様な突然発現する異能のことよ。基本的には、物を持ち上げたり、物を少し軽くしたりするくらいの弱い異能しかないんだけれどね。それと、貴方は幾つか持っていそうだけれど、遺伝系と違って普通は1つしか覚醒しないわ」
「じゃあ俺のこの状態は稀って事か?」
俺は異世界転移の事は言えないので、取り敢えず異能力という事で話を合わせておく。
宮園はそんな俺の言葉に頷き、
「ええ。突発系の異能力者が日本には20、30万人くらい居るらしいけれど、その中でも両手で数えるほどね」
「え、30万? そんなに異能力者は多いのか?」
「そうね。近年頻繁に現れる様になっている事もあるのだけれど」
俺はその数に驚きを隠せず、思わず聴いてしまう。
しかし宮園の答えは案外あっさりとした物だった。
もしかして驚く俺がおかしいのか?
何て一瞬思ってしまったが、転移されるまでの17年間で1度も聞いたことがなかったのでそんな事ないだろう。
「それで、その沢山いる異能力者を取り締まるのか組織って事か?」
「その通りよ。組織は異能力者がその力を使って犯罪を起こさない様にするのと、偶に次元を超えてやってくる生き物を退治する2つの役割があるわ」
…………めちゃくちゃ関わりたく無かったな……。
『もう遅い。諦めるのだな我が主』
俺は頭の中でそう言われてガックリと肩を落とすのであった。
勿論宮園には何も聞こえていないので不思議そうな顔をしていたが。
1
お気に入りに追加
498
あなたにおすすめの小説

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。
スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。
だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。
それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。
色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。
しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
土曜日以外は毎日投稿してます。

俺だけ皆の能力が見えているのか!?特別な魔法の眼を持つ俺は、その力で魔法もスキルも効率よく覚えていき、周りよりもどんどん強くなる!!
クマクマG
ファンタジー
勝手に才能無しの烙印を押されたシェイド・シュヴァイスであったが、落ち込むのも束の間、彼はあることに気が付いた。『俺が見えているのって、人の能力なのか?』
自分の特別な能力に気が付いたシェイドは、どうやれば魔法を覚えやすいのか、どんな練習をすればスキルを覚えやすいのか、彼だけには魔法とスキルの経験値が見えていた。そのため、彼は効率よく魔法もスキルも覚えていき、どんどん周りよりも強くなっていく。
最初は才能無しということで見下されていたシェイドは、そういう奴らを実力で黙らせていく。魔法が大好きなシェイドは魔法を極めんとするも、様々な困難が彼に立ちはだかる。時には挫け、時には悲しみに暮れながらも周囲の助けもあり、魔法を極める道を進んで行く。これはそんなシェイド・シュヴァイスの物語である。

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~
春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。
冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。
しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。
パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。
そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。
異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。
せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。
そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。
これは天啓か。
俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。
ギフト争奪戦に乗り遅れたら、ラストワン賞で最強スキルを手に入れた
みももも
ファンタジー
異世界召喚に巻き込まれたイツキは異空間でギフトの争奪戦に巻き込まれてしまう。
争奪戦に積極的に参加できなかったイツキは最後に残された余り物の最弱ギフトを選ぶことになってしまうが、イツキがギフトを手にしたその瞬間、イツキ一人が残された異空間に謎のファンファーレが鳴り響く。
イツキが手にしたのは誰にも選ばれることのなかった最弱ギフト。
そしてそれと、もう一つ……。

【完結】憧れの異世界転移が現実になったのでやりたいことリストを消化したいと思います~異世界でやってみたい50のこと
Debby
ファンタジー
【完結まで投稿済みです】
山下星良(せいら)はファンタジー系の小説を読むのが大好きなお姉さん。
好きが高じて真剣に考えて作ったのが『異世界でやってみたい50のこと』のリスト。
やっぱり人生はじめからやり直す転生より、転移。
転移先の条件としては『★剣と魔法の世界に転移してみたい』は絶対に外せない。
そして今の身体じゃ体力的に異世界攻略は難しいのでちょっと若返りもお願いしたい。
更にもうひとつの条件が『★出来れば日本の乙女ゲームか物語の世界に転移してみたい(モブで)』だ。
これにはちゃんとした理由がある。必要なのは乙女ゲームの世界観のみで攻略対象とかヒロインは必要ない。
もちろんゲームに巻き込まれると面倒くさいので、ちゃんと「(モブで)」と注釈を入れることも忘れていない。
──そして本当に転移してしまった星良は、頼もしい仲間(レアアイテムとモフモフと細マッチョ?)と共に、自身の作ったやりたいことリストを消化していくことになる。
いい年の大人が本気で考え、万全を期したハズの『異世界でやりたいことリスト』。
理想通りだったり思っていたのとちょっと違ったりするけれど、折角の異世界を楽しみたいと思います。
あなたが異世界転移するなら、リストに何を書きますか?
----------
覗いて下さり、ありがとうございます!
10時19時投稿、全話予約投稿済みです。
5話くらいから話が動き出します?
✳(お読み下されば何のマークかはすぐに分かると思いますが)5話から出てくる話のタイトルの★は気にしないでください
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

念動力ON!〜スキル授与の列に並び直したらスキル2個貰えた〜
ばふぉりん
ファンタジー
こんなスキルあったらなぁ〜?
あれ?このスキルって・・・えい〜できた
スキル授与の列で一つのスキルをもらったけど、列はまだ長いのでさいしょのすきるで後方の列に並び直したらそのまま・・・もう一個もらっちゃったよ。
いいの?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる