チートを貰えなかった落第勇者の帰還〜俺だけ能力引き継いで現代最強〜

あおぞら

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第1章 落第勇者の帰還

第10話 落第勇者と異形の邂逅③

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 そこはショッピングモールの中でもほぼ人が居ない屋上駐車場の一角にそれ・・はいた。

「ギャギャ! ギャギャギャッ!」

 体長僅か1m程の子供くらいの大きさの人型モンスターで棍棒を持っている———ゴブリン。

 異世界でもゲームなどと同じ様に比較的弱い部類に入ったが、普通の大人では背伸びしても勝てないくらいには強かった。
 そして何より数で戦ってくるので面倒くさく、知能も高いのである程度の実力の冒険者でも殺されることが何度もあった程だ。

 俺も初めの頃は何度もボコられて師匠やパトリシアさんに助けられていたもんだ。
 毎回ゴブリン討伐を受けている師匠達を見て受付嬢は俺を「こんな大物になんて事させてんだ」みたいな目で睨みつけられたが。

「……何でそんな奴がこの世界に居るんだろうな」

 俺は見つからない様に隠れてゴブリンの様子を観察しながらそう呟く。
 感知ではコイツ以外に気配は感じられなかった。
 ゴブリンなら必ず何体かで動いているはずなんだがな……。

 俺は違和感を覚えるが、取り敢えずコイツをどうにかしなければならない。
 今の俺は異世界の頃より確実に弱くなっている。
 しかし俺には長年積んでいた異世界の知識がある。
 それに相手は一体。
 それくらいなら俺でも余裕だろう。

 俺は小声で【身体強化】を発動する。

「【身体強化:Ⅰ】」

 俺の体が強化される。
 この何日間で体も鍛え直している為、何とか身体強化を扱える位には戻っていた。
 俺は全力で疾走し、ゴブリンの後ろから飛び蹴りを繰り出す。

「取り敢えず吹っ飛べッ!」
「ギィギャッ!?」

 俺の飛び蹴りを後頭部で喰らったゴブリンは思いっきり4mほど吹っ飛んで倒れる。
 その後に立ちあがろうとしているが、脳震盪を起こして立ち上がれないままでいた。
 当然そんなチャンスを逃す訳もなく、そのまま今度は頭頂部を狙って踵落としを喰らわせる。

「グギャッ!? ギュ——」
「その手は喰らわん。——そりゃ」

 最後の足掻きで俺に棍棒をぶん回してくるが、異世界でこの行動を何百回も体験しているので棍棒を持っている方の腕を蹴り飛ばして棍棒を奪い取る。
 今度こそなす術なしとなったゴブリンは跡形もなく・・・・・消滅した・・・・

「…………これはこの世界特有のモンスターなのか……?」

 異世界ではモンスターは人間と同じく死んでも消滅しない・・・・・
 モンスターも立派な生き物の一種だからな。
 
 だがこのゴブリンはもしかしたら生き物では無いのかも知れない。
 それか誰かが作ったのか——。
 まぁそんな事は俺には関係ない。

「俺はもう戦うのは懲り懲りなんだよ……。もう2度と会わない事をお互いに祈ろうぜ」

 俺はそう呟き、手を合わせる。
 そして戻ろうとしたのだが……

「あっ———やっべ、早く戻んねぇと。宮園を待たしてたわ! 流石に申し訳ない」

 俺はゴブリンの消えた場所を1度チラッと見た後駆け足で、待たせてしまっている宮園の所へと戻った。

 近くで・・・誰かが・・・見ていた・・・・とは知らずに・・・・・———





☆☆☆





「……やっぱり隼人君には秘密があったのね」

 隼人を監視していたのは——清華であった。
 清華は突然隼人が何処かに意識を向けたかと思うと、自分に少しトイレに行ってくると言い残して何処かへ行ってしまったのを不自然に思っていた。
 なので元々「異能力を手に入れたのでは?」と疑っていたのと相まって余計に不自然さが目立っていたのだ。
 
 そんな清華にとある電話が来る。

「もしもし。今回は何でしょうか?」
『———清華、仕事だ』
 
 電話の先の声を聞いた途端、清華は隼人を追って走り出していた。
 清華は異能力者であり、隠密系異能を所持している数少ない人間であったのだ。
 
 だが探知系の異能は持っていない為、スマホに表示される位置まで急いで移動すると、丁度隼人がゴブリンに踵落としを喰らわせている所に遭遇してしまった。
 その後に隼人が戻っていったのを確認すると、電話を今度はこちらから掛ける。

『……どうした? 討伐したのか?』
「…………はい。最近出る新種でした。強さはそれ程ではありませんでしたが」
『分かった。なら報酬はこちらで用意しておく。ご苦労だった』
「それでは失礼します」

 清華はそう言って電話を切った。
 だがその表情には迷いが浮かんでいる。
 そして普段の強気な態度とは裏腹に、泣きそうな声で呟く。

「私が隼人君の事を言える訳ないじゃない……。だって私は———」

 清華はそこまで言った後に表情を元に戻して何時もの強気な態度に戻る。

「よし、それじゃあまた再開することにしましょう。——隼人君との放課後デートを」

 その表情は先程とは違ってご機嫌な表情であった。
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