【完結】神の巫女 王の御子

黄永るり

文字の大きさ
上 下
16 / 26

大巫女

しおりを挟む
 神殿の大巫女ルシュドゥは、その日も執務室に籠っていた。
 様々な書類に署名をしては、黙々と捺印をしていく。
 側仕えの巫女が先ごろ降嫁した巫女・アーシャの文を持ってきた。
 定期的な便での文ではないだけに、ルシュドゥは少しいぶかしんだ。
 書類を処理していた手をとめて、すぐにアーシャからの文を開封した。
 文面には簡単な挨拶の後、後宮の書庫で見つけた先代巫女ラアナの文章の内容がそのまま書かれていた。
「ラアナ、なんてことを……」
 そこに綴られていた内容に、ルシュドゥは驚きつつも、あの誇り高いラアナならばと妙に納得もした。
 文の最後には、ラアナの企みを知ってしまったことでどうすれば良いかと、アーシャからの切実な問いかけで終わっていた。
 低く呻きながら軽く額に手をあてる。
 アーシャの問いかけに、大巫女の自分ですら今は満足な答えを返してはやれない。
 何とかなるように方法はこちらでも考えてみる、とは返書にしたためられるが。
 すでにラアナの強い意志は、未来へ向けて今も現在進行形で動いている。
(今の私にいったい何ができるのだろうか?)
 ルシュドゥは、大巫女の位についてから幾度目かの無力感に襲われた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

愛する貴方の心から消えた私は…

矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。 周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。  …彼は絶対に生きている。 そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。 だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。 「すまない、君を愛せない」 そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。 *設定はゆるいです。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

聖女召喚に巻き込まれた私はスキル【手】と【種】を使ってスローライフを満喫しています

白雪の雫
ファンタジー
某アニメの長編映画を見て思い付きで書いたので設定はガバガバ、矛盾がある、ご都合主義、深く考えたら負け、主人公による語りである事だけは先に言っておきます。 エステで働いている有栖川 早紀は何の前触れもなく擦れ違った女子高生と共に異世界に召喚された。 早紀に付与されたスキルは【手】と【種】 異世界人と言えば全属性の魔法が使えるとか、どんな傷をも治せるといったスキルが付与されるのが当然なので「使えねぇスキル」と国のトップ達から判断された早紀は宮殿から追い出されてしまう。 だが、この【手】と【種】というスキル、使いようによっては非常にチートなものだった。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

【完結】隣国の王子の下に嫁いだ姫と幸せになる方法

光城 朱純
ファンタジー
王女が幼い頃から護衛騎士として仕えていたアイシュタルト。 王女への想いは既に護衛騎士のあるべきものを越え、王女の結婚すら素直に祝福が出来ない。 姫を忘れることのできないアイシュタルトは思いもよらぬ命令を受け、我慢できずに国を飛び出した。 姫が嫁いだ国とはまた別の国で生きていこうと決めたアイシュタルトが出会ったのは初めての友人。彼との出会いが、城の中という狭い世界で生きてきたアイシュタルトに、たくさんの感情を与える。 彼との旅は楽しくとも、気にかかるのは姫のこと。姫が嫁いだ国の噂はどれも不穏なものばかり。 姫は幸せに暮らしているのか。 もしそうでなければ、この手に奪い返してしまうかもしれない。 姫を忘れるための旅が、姫を救う旅へと姿を変えていく。 魔法も知識もないただの護衛騎士が、その気持ちを貫いていくーー 表紙はAI様に作成していただきました。

【完結】月の行方

黄永るり
ファンタジー
魔法学校の生徒ルナは見習い錬金術師。大切な人を探すために、卒業試験先として選んだ国はめちゃくちゃ危険な国だった。

実家から追放されたが、狐耳の嫁がいるのでどうでも良い

竹桜
ファンタジー
 主人公は職業料理人が原因でアナリア侯爵家を追い出されてしまった。  追い出された後、3番目に大きい都市で働いていると主人公のことを番だという銀狐族の少女に出会った。  その少女と同棲した主人公はある日、頭を強く打ち、自身の前世を思い出した。  料理人の職を失い、軍隊に入ったら、軍団長まで登り詰めた記憶を。  それから主人公は軍団長という職業を得て、緑色の霧で体が構成された兵士達を呼び出すことが出来るようになった。  これは銀狐族の少女を守るために戦う男の物語だ。

処理中です...