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巫女調べの儀式①

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 その日、朝から神殿は大騒ぎに見舞われていた。
 もっとも大騒ぎしていたのは、神殿の半分である巫女側の宿舎だけであって、神官側の宿舎はいたって静かなものであった。
「アーシャ、あなた本当にその格好で儀式に出るつもりなの?」
 マフルは父親が用意してくれた最高級の絹であつらえて衣装と、色とりどりの宝石がつけられた金銀の腕飾り、耳飾りを身に着けた自分の姿と、目の前のアーシャの姿とを見比べている。
「ええ。だって私にはこれが一番の正装だもの。私にはマフルみたいに色々な物を届けてくれる実家はないし」
「アーシャ」
「ああ気にしないでね。別に嫌味で言ったわけではないから」
 ただアーシャにとっての事実をありのままに述べただけだ。
「それに私は王の側室なんて狙ってないし」
「あれだけ私と一緒にお父さまに衣装や装飾品をあつらえてもらいましょうって勧めたのに」
 それだけは頑としてアーシャは断り続けたのだった。
「いいの。化粧道具を貸してもらっただけで十分よ。巫女の正装なら大巫女さまも姉巫女たちも文句はいわないでしょう?」
 大巫女とは、神殿の巫女たちを統べる最上位の巫女のことである。
「そりゃそうだけど」
 巫女の正装とは、アーシャのような若い巫女なら成人の儀式で仕立てたものだ。
 真っ白い純白の絹製の衣装だ。
 それ以上の年齢になると、巫女として大神の祭儀用にその衣装を手直しするだけだ。
「そろそろ行かないと、マフル」
 アーシャはそれ以上は話したくないと言わんばかりに、マフルを促した。
「ええ。わかったわ」
 二人は儀式が行われる正殿へと向かった。
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