【完結】色染師

黄永るり

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希望

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 泣いて泣きまくったあげく、しかしどうにも状況は変わらなかったので若葉は泣くのをやめた。
 とはいえ、今の自分に何ができるかわからないがとりあえず考えることはできるし、意識はまだ正気を保っている。
 何とかなる、そう自分に言い聞かせた。

 もしかしたら、どこからか東慶寺の時みたいに紅太が木刀で一閃して入ってくるのかもしれないし、蒼騎が来てくれるのかもしれない。
 卯花や央色家、関東本部の色染師たちが助けにきてくれる可能性もあるだろう。
 そう思ったら不思議と元気がわいてきた。
(よし!)
 拳に力を入れる。
 手の甲で涙をぬぐった。
 涙の感触が温かい。

(そもそも確かこの制服って特別な糸を使用して作られてるって言ってた。だったら、たとえ色名札を奪われてもこの制服を着ている以上、そう簡単に一体化できないんじゃないかな?)
 今のところ制服が溶けたり、透明になっている様子はない。
 ベストの校章部分が破れているだけだ。
 その破れている部分に両手を重ね合わせた。
 手のひらから自分の鼓動が感じられる。
(私、まだ生きてる)
 その力強い鼓動に勇気づけられるように、さらに強く左胸を手のひらで押さえた。

(こんなところで死ぬわけにはいかない)
 強くそう思った。
(私にはまだやりたいことがある)
 強くそう思った。
「奇跡、まだ起こしていない」
(私は絶対に叶えたい夢があるのに、まだここで死ぬわけにはいかない)
「私は、まだ魔法使いになっていない!」 
 その瞬間、残っていた校章の縁どり部分がきらりと光った。
 
「何?」
『その言葉を私は待っていましたよ』
 どこかで聞いたことがあったようなとても懐かしい優しい声が響いた瞬間、ガラガラと空間の壁が崩れ落ちた。
「ギャー!」
 妙に生々しい色魅の断末魔のような声も同時に響き渡った。

 目の前で鏡が盛大に割れた気がして、若葉は思わず目を閉じた。
 若葉の胸元から凄まじいエネルギーがあふれ出し、若葉を包み込む。
 エネルギーごと若葉の意識はどこかへ連れていかれた。
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