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中間テスト期間中
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本来なら放課後は若葉のバイト開始タイムなのだが、中間テスト期間中ということもあり、バイトは緊急事態を除き校則により禁止されている。
色染師養成学校とはいえ、基本は普通の学業優先体制をとっている。
「今週はバイトなしか~」
ため息が深い。
ふと前方を見ると、ちょうど鎌倉駅に向かっている李蒼騎の姿が見えた。
(李先輩だ!)
若葉は後をつけているつもりは毛頭なかったのだが、いかんせん放課後行くところが今日は李蒼騎と同じ方向らしい。
(ということは、李先輩の家がわかるのかな?)
今までからも今も全く李蒼騎の自宅に興味はなかったのだが、若葉が江ノ電で登校するのとは違い、蒼騎がJRで来ることは朝の待ち合わせの関係上、知っていた。
(今日は私もJRだから方向が同じならついていってみようかな?)
ふふと楽しそうに笑いながら、一定の距離を保ったまま鎌倉駅に向かった。
鎌倉駅からは同じ方向の電車に乗った。
若葉は蒼騎が乗車した隣の車両にさりげなく乗り込んだ。
そのまま大船駅まで一緒で乗り換えもまた同じ電車だった。
(あれ? 同じ横浜方面に乗ったけど、まさか同じ駅で降りないよね?)
さすがに都心から登校してるとは思えない。
若葉の今日の行き先は横浜だ。
しかし、まさかの石川町駅で二人は一緒に降りた。
さすがに通勤ラッシュでもないし、中華街の祭りがあるわけでもない平日の昼下がりなので、若葉は蒼騎にばれるんじゃないかとひやひやしたが、幸い蒼騎は背後を振り返ることはしなかった。
(でもそっか。苗字からして李さんだから中華街関係者の家かもしれないか……)
尾行しているわけでもないが、なんとなくそうなってしまっている感じになってしまっている。
しかも、中華街に行くのは若葉も同じ。
やはり距離を保ったまま若葉は歩く。
のろのろ歩いていると色染師の時と同様に本当に置いて行かれてしまうので、姿を見失わない程度の速さで歩かなければならない。
しかも、静かに素早く。
忍者のように忍びながら。
(私、魔法使い目指してるのに探偵みたいなことしてる)
そう思った若葉はつい、ふふふとにやけてしまった。
「あれ?」
中華街の大門をくぐったところで完全に蒼騎を見失ってしまった。
平日とはいえ観光客は普通に多いので、いつの間にか同じ制服姿の男子は消えていた。
「どこ行ったんだろう?」
きょろきょろしながら、大道を歩いていく。
若葉の目的地もこの先なので、そのまま真っすぐ歩いていく。
「うわっ!」
突然、細い路地から伸びてきた腕が若葉の左腕をつかんだ。
強い力でつかまれたまま路地裏に引き込まれる。
「え?」
「何しに来た?」
そう低い声で尋ねた顔をよく見ると、蒼騎だった。
「李先輩?」
若葉の背中を冷たい汗が一筋流れていった。
(ヤバい! ばれてた)
「学校から俺の後つけてたよな?」
「えっと、はい……」
素直に頷く。
「俺の家まで来るつもりだったのか?」
「いえ、そうではなくて、たまたま……」
「たまたま? たまたま俺のストーカーをしてたのか?」
「ストーカーではないです! 今日は私もこの近くの店に用があってきたんです!」
「嘘つけ!」
「嘘じゃないです!」
そこだけは心外だとばかりに、若葉は叫んだ。
「じゃあ、新堂の目的地とやらを教えてもらおうか?」
「それこそ、李先輩が私のストーカーじゃないですか?」
「違うわ!」
「私も違います!」
思いっきり否定する若葉を見て、蒼騎は嘘の匂いがしないことを嗅ぎとる。
「まあいい」
ため息をつくと、若葉の腕を離した。
「このまま目的地とやらに行け。二度と俺の後をついてくるな」
静かにそういうと蒼騎は大通りに出ていった。
「ついていきません!」
若葉はその背中に思いきり舌を出した。
「ああ、痛かった」
左腕をさすりながら若葉も大通りに出た。
色染師養成学校とはいえ、基本は普通の学業優先体制をとっている。
「今週はバイトなしか~」
ため息が深い。
ふと前方を見ると、ちょうど鎌倉駅に向かっている李蒼騎の姿が見えた。
(李先輩だ!)
若葉は後をつけているつもりは毛頭なかったのだが、いかんせん放課後行くところが今日は李蒼騎と同じ方向らしい。
(ということは、李先輩の家がわかるのかな?)
今までからも今も全く李蒼騎の自宅に興味はなかったのだが、若葉が江ノ電で登校するのとは違い、蒼騎がJRで来ることは朝の待ち合わせの関係上、知っていた。
(今日は私もJRだから方向が同じならついていってみようかな?)
ふふと楽しそうに笑いながら、一定の距離を保ったまま鎌倉駅に向かった。
鎌倉駅からは同じ方向の電車に乗った。
若葉は蒼騎が乗車した隣の車両にさりげなく乗り込んだ。
そのまま大船駅まで一緒で乗り換えもまた同じ電車だった。
(あれ? 同じ横浜方面に乗ったけど、まさか同じ駅で降りないよね?)
さすがに都心から登校してるとは思えない。
若葉の今日の行き先は横浜だ。
しかし、まさかの石川町駅で二人は一緒に降りた。
さすがに通勤ラッシュでもないし、中華街の祭りがあるわけでもない平日の昼下がりなので、若葉は蒼騎にばれるんじゃないかとひやひやしたが、幸い蒼騎は背後を振り返ることはしなかった。
(でもそっか。苗字からして李さんだから中華街関係者の家かもしれないか……)
尾行しているわけでもないが、なんとなくそうなってしまっている感じになってしまっている。
しかも、中華街に行くのは若葉も同じ。
やはり距離を保ったまま若葉は歩く。
のろのろ歩いていると色染師の時と同様に本当に置いて行かれてしまうので、姿を見失わない程度の速さで歩かなければならない。
しかも、静かに素早く。
忍者のように忍びながら。
(私、魔法使い目指してるのに探偵みたいなことしてる)
そう思った若葉はつい、ふふふとにやけてしまった。
「あれ?」
中華街の大門をくぐったところで完全に蒼騎を見失ってしまった。
平日とはいえ観光客は普通に多いので、いつの間にか同じ制服姿の男子は消えていた。
「どこ行ったんだろう?」
きょろきょろしながら、大道を歩いていく。
若葉の目的地もこの先なので、そのまま真っすぐ歩いていく。
「うわっ!」
突然、細い路地から伸びてきた腕が若葉の左腕をつかんだ。
強い力でつかまれたまま路地裏に引き込まれる。
「え?」
「何しに来た?」
そう低い声で尋ねた顔をよく見ると、蒼騎だった。
「李先輩?」
若葉の背中を冷たい汗が一筋流れていった。
(ヤバい! ばれてた)
「学校から俺の後つけてたよな?」
「えっと、はい……」
素直に頷く。
「俺の家まで来るつもりだったのか?」
「いえ、そうではなくて、たまたま……」
「たまたま? たまたま俺のストーカーをしてたのか?」
「ストーカーではないです! 今日は私もこの近くの店に用があってきたんです!」
「嘘つけ!」
「嘘じゃないです!」
そこだけは心外だとばかりに、若葉は叫んだ。
「じゃあ、新堂の目的地とやらを教えてもらおうか?」
「それこそ、李先輩が私のストーカーじゃないですか?」
「違うわ!」
「私も違います!」
思いっきり否定する若葉を見て、蒼騎は嘘の匂いがしないことを嗅ぎとる。
「まあいい」
ため息をつくと、若葉の腕を離した。
「このまま目的地とやらに行け。二度と俺の後をついてくるな」
静かにそういうと蒼騎は大通りに出ていった。
「ついていきません!」
若葉はその背中に思いきり舌を出した。
「ああ、痛かった」
左腕をさすりながら若葉も大通りに出た。
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