【完結】色染師

黄永るり

文字の大きさ
上 下
8 / 35

休み時間

しおりを挟む
「テストが~」
 休み時間、次の授業のために移動中の若葉から思わずため息がでた。
「若葉って色染師に関わる授業になると途端にやる気出すけど、それ以外は全くだからねえ」
 橙子にそう突っ込まれる。

「そうなの。体育は体力をつけるのにはもってこいだし、今の剣道はめちゃくちゃ好きだし。社会の日本史は色染師の歴史もからめて教えてもらえるから楽しいし、日本地理は卒業後の色染師の仕事に役立つだろうし」
「数学、理科は興味なさそうだよね?」
「うん。あ、でも物理は好きだよ。てこの原理とか戦いに使えそうじゃない?」
「まあそうだけど。それに専門の家庭科も興味ないよね? よくそれで家庭科専攻に入ったわね? 来年からどうするの専攻? 被服か食物に分かれるけど」

 一年次は家庭科専攻も芸術科専攻もそれぞれ共通の授業だが、二年次から家庭科専攻は被服コースと食物コース、芸術科コースは美術コースと工芸コースに分かれるのだ。

「だって家庭科か芸術科ってなったら、絵心のない私としては家庭科しか選択肢がないわけですよ」
「そ、そうなんだ」
 だから芸術選択科目をあえて音楽にしているのか、と橙子は思った。
 橙子は美術にしているが。

「食べることは戦う身体作りにも大事だから、食物コース専攻にしようかと。食べることも好きだし。橙子は?」
「私はファッションとかに興味があるから、被服コース専攻にするつもり」
「そっか。来年は橙子とコンビ組むことは確実にないってことか~」
 若葉は頭を抱えた。

 二年次は同級生で色染師コンビとなるが、専攻ごとにクラス編成もコンビも決められるので、専攻が違うと自然とコンビにはなれないのだ。

「若葉、頭抱えるところ違うと思うけど」
「そうだ! 橙子ノートが~」
「ようやく気付いたか」
 ニヤリと不敵な笑みを浮かべる橙子。
 毎日、若葉は橙子ノートを写メさせてもらっているのだ。

「それも困る! まだ進級まで時間あるから、ぜひ私と同じ食物コースで」
「却下!」
「え~!」
 若葉の情けない叫び声が元気よく廊下にこだました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私の周りの裏表

愛’茶
キャラ文芸
市立桜ノ小路女学園生徒会の会長は、品行方正、眉目秀麗、文武両道、学園切っての才女だった。誰もが憧れ、一目を置く存在。しかしそんな彼女には誰にも言えない秘密があった。

恋より友情!〜婚約者に話しかけるなと言われました〜

k
恋愛
「学園内では、俺に話しかけないで欲しい」 そう婚約者のグレイに言われたエミリア。 はじめは怒り悲しむが、だんだんどうでもよくなってしまったエミリア。 「恋より友情よね!」 そうエミリアが前を向き歩き出した頃、グレイは………。 本編完結です!その後のふたりの話を番外編として書き直してますのでしばらくお待ちください。

いじめ

夜碧ひな
キャラ文芸
ある学校の1クラスでは、1人の女子高生 佐々木 愛唯(ささき あい)を対象にいじめが行われていた。 卒業式の日、彼女は証書授与で壇上に上がり、ナイフを自分に刺した。 数年後、彼女は幽霊となり自分をいじめたクラスの人間を1人ずつ殺してゆく。その行動にある思いとは。 ※この物語はフィクション作品です。個人名、団体などは一切関係ありません。 ※この作品は一部バイオレンスな表現が含まれています。閲覧の責任は負いかねますので予めご了承ください。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

〖完結〗王女殿下の最愛の人は、私の婚約者のようです。

藍川みいな
恋愛
エリック様とは、五年間婚約をしていた。 学園に入学してから、彼は他の女性に付きっきりで、一緒に過ごす時間が全くなかった。その女性の名は、オリビア様。この国の、王女殿下だ。 入学式の日、目眩を起こして倒れそうになったオリビア様を、エリック様が支えたことが始まりだった。 その日からずっと、エリック様は病弱なオリビア様の側を離れない。まるで恋人同士のような二人を見ながら、学園生活を送っていた。 ある日、オリビア様が私にいじめられていると言い出した。エリック様はそんな話を信じないと、思っていたのだけれど、彼が信じたのはオリビア様だった。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

水の失われた神々

主道 学
キャラ文芸
竜宮城は実在していた。 そう宇宙にあったのだ。 浦島太郎は海にではなく。遥か彼方の惑星にある竜宮城へと行ったのだった。 水のなくなった惑星 滅亡の危機と浦島太郎への情愛を感じていた乙姫の決断は、龍神の住まう竜宮城での地球への侵略だった。 一方、日本では日本全土が沈没してきた頃に、大人顔負けの的中率の占い師の高取 里奈は山門 武に不吉な運命を言い渡した。 存在しないはずの神社の巫女の社までいかなければ、世界は滅びる。 幼馴染の麻生 弥生を残しての未知なる旅が始まった。 果たして、宇宙にある大海の龍神の住まう竜宮城の侵略を武は阻止できるのか? 竜宮城伝説の悲恋の物語。

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

ろまけん - ロマンシング剣闘 -

モノリノヒト
キャラ文芸
『剣闘』  それは、ギアブレードと呼ばれる玩具を用いて行われる、近未来的剣道。  剣闘に興味のない少年が、恩人の店を守る為、剣闘の世界へ身を投じる、ザ・ライトノベル・ホビーアクション! ※本編の登場人物は特別な訓練を受けています。 お子様が真似をすると危険な描写を含みますのでご注意くださいませ。 *小説家になろう様にも投稿しています。

処理中です...