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つきあうの?
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それから幾日かして紺乃はカイリと一緒にいつものカフェへ向かった。
もちろんオーナーは驚いたし、紺乃がつきあうことになったと言えば猛反対した。
だが二人の真剣な思いに、ついにオーナーも折れた。
というか折れざるをえなかった。
それはオーナーも見たことのない紺乃の揺るぎない意思を感じたからだ。
(高校すらはっきり行くと意思表示しなかった紺乃ちゃんが……)
変われば変わるものだとも思った。
「どうせつきあうなら、紺乃ちゃん、カイリくんにお勉強を教えてもらえば? 四月から受験生だし。カイリくんの通ってる大学は都内でも有名な偏差値の高い私大じゃない?」
「え?」
途端に紺乃は嫌な顔をした。
どうやら勉強のことになると違うらしい。
「嫌なの?」
「それは……」
「しかもカイリくん理系の学部じゃない。理系科目苦手な紺乃ちゃんからしたら良い家庭教師になるんじゃない?」
オーナーは嬉しそうに勧めてくる。
カイリといえば、別にどちらでも良い感じだ。
「つきあうことと家庭教師に採用することは違うことだと思いますけど」
紺乃は何とか自分の意見を伝えてみた。
この調子だと、絶対に高校に進学させられそうな勢いだ。
「まあまあそう言わずに。ひとまずカイリくんを私の友人の息子さんで家庭教師のバイトを頼まれたから紺乃ちゃんを紹介したということにして、当面はお母さんに家庭教師ってことで紹介するのはどうかしら?」
オーナーはそっと紺乃に囁いた。
「え?」
「いきなり彼氏です、なんて言ったらお母さん卒倒するんじゃないの?」
そうかも。
オーナーの問いに素直に紺乃は頷いた。
何せ離婚後、紺乃を育てるために一人で真面目に頑張ってきた母だ。
紺乃が彼氏ができました。
という報告をしようものなら、一体どんな反応を示すのかはオーナーの予想通りかもしれない。
「でも家庭教師だったら、授業料とかはどうすれば?」
母に新しい負担を依頼するわけにはいかない。
しかも、別に紺乃は高校に行きたくて勉強するわけではないのだから。
「ああ。それは大丈夫よ。実はね」
紺乃をこのカフェで預かる際に、オーナーは紺乃の飲食代だけでそれ以上はいらないと断ったのだが、どうしてもと言って母がオーナーに紺乃の預かり代を、小学生の頃からずっと渡してくれていたらしい。
「さすがに中学生になったらいらないわと言ったんだけど」
それでも紺乃の母は同じ額を渡し続けているらしい。
「ということであなたのお母さんには、そのお金から家庭教師代を支払うってことで話しておくから心配しないで」
そう言われて肩をぽんぽんと叩かれた。
「わかりました。ありがとうございます」
「あなたもそれでいいわね」
オーナーはしっかりカイリにも念押しした。
「はい。よろしくお願いします」
当面の間、表向きはカイリは紺乃の彼氏ではなく家庭教師ということになった。
もちろんオーナーは驚いたし、紺乃がつきあうことになったと言えば猛反対した。
だが二人の真剣な思いに、ついにオーナーも折れた。
というか折れざるをえなかった。
それはオーナーも見たことのない紺乃の揺るぎない意思を感じたからだ。
(高校すらはっきり行くと意思表示しなかった紺乃ちゃんが……)
変われば変わるものだとも思った。
「どうせつきあうなら、紺乃ちゃん、カイリくんにお勉強を教えてもらえば? 四月から受験生だし。カイリくんの通ってる大学は都内でも有名な偏差値の高い私大じゃない?」
「え?」
途端に紺乃は嫌な顔をした。
どうやら勉強のことになると違うらしい。
「嫌なの?」
「それは……」
「しかもカイリくん理系の学部じゃない。理系科目苦手な紺乃ちゃんからしたら良い家庭教師になるんじゃない?」
オーナーは嬉しそうに勧めてくる。
カイリといえば、別にどちらでも良い感じだ。
「つきあうことと家庭教師に採用することは違うことだと思いますけど」
紺乃は何とか自分の意見を伝えてみた。
この調子だと、絶対に高校に進学させられそうな勢いだ。
「まあまあそう言わずに。ひとまずカイリくんを私の友人の息子さんで家庭教師のバイトを頼まれたから紺乃ちゃんを紹介したということにして、当面はお母さんに家庭教師ってことで紹介するのはどうかしら?」
オーナーはそっと紺乃に囁いた。
「え?」
「いきなり彼氏です、なんて言ったらお母さん卒倒するんじゃないの?」
そうかも。
オーナーの問いに素直に紺乃は頷いた。
何せ離婚後、紺乃を育てるために一人で真面目に頑張ってきた母だ。
紺乃が彼氏ができました。
という報告をしようものなら、一体どんな反応を示すのかはオーナーの予想通りかもしれない。
「でも家庭教師だったら、授業料とかはどうすれば?」
母に新しい負担を依頼するわけにはいかない。
しかも、別に紺乃は高校に行きたくて勉強するわけではないのだから。
「ああ。それは大丈夫よ。実はね」
紺乃をこのカフェで預かる際に、オーナーは紺乃の飲食代だけでそれ以上はいらないと断ったのだが、どうしてもと言って母がオーナーに紺乃の預かり代を、小学生の頃からずっと渡してくれていたらしい。
「さすがに中学生になったらいらないわと言ったんだけど」
それでも紺乃の母は同じ額を渡し続けているらしい。
「ということであなたのお母さんには、そのお金から家庭教師代を支払うってことで話しておくから心配しないで」
そう言われて肩をぽんぽんと叩かれた。
「わかりました。ありがとうございます」
「あなたもそれでいいわね」
オーナーはしっかりカイリにも念押しした。
「はい。よろしくお願いします」
当面の間、表向きはカイリは紺乃の彼氏ではなく家庭教師ということになった。
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