【完結】女神の砦

黄永るり

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バーティル

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 夜になってもバーティルは、私室で書き物をしていた。
 背後の扉近くには従者が一人控えていた。
 その従者からの報告を聞いたバーティルは、書き物をしていた手を止めた。
「何? 消えただと?」
「申し訳ありません。ジュフードの隊商に合流したようなので、追いかけたのですが途中で見失ったようです」
「おそらく砦に入ったのだろう。それで出てくるところは見たのか?」
「いえ。元の住処と見失ったあたりとで、見張らせていますが出てきた形跡はありません。ですが……」
 従者は一瞬、言いよどむ。
「何だ?」
「はい。出てくるところはわからなかったのですが。実は、未確認ではございますが、どうやらこちらに向かっているのではないか、との情報が入りましてございます」
「それを早く言え!」
「申し訳ございません」
「それで、いつ頃こちらに来るのだ?」
「はい。もう間もなくかと」
「大至急確認の上、報告せよ」
「わかりました」
 そう言うと従者は静かに下がっていった。
「やっと手にすることができる。かの砦も一族の力も全て我が手に」
 ぐっとバーティルは己の拳を握りしめた。

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