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公女の縁談
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後宮での大事件から一か月が経った。
ウェランダとルナは、商学校の後期授業が始まったため、バンコの商館に戻り、普通の学生の日々に戻っていた。
表向きはまだ公女として公式発表はされていないのだが、国を支える官吏たちと親しい人間たちには、内々に伝えられた。
それなので他の学生たちにはほとんど伝わっていなかった。
勉学に専念できるように、との大公の配慮だった。
変わったことと言えば、二人で通い始めたことと、在籍学生数が十四人になったことだった。
急にカルテアの王女が学校を退学したということは、少なからず事情を知らない者は驚いたが、それも知らされた当時のことであって、今は噂にもなっていない。
アクートは意識は取り戻したものの、完全に傷が癒えるまでそのまま後宮暮らしが続いている。
本人は、支障がないのならバンコの商館に戻るなり、実家に戻るなりして床上げしたいと申し出ていたのだが、公母に完治するまで後宮から出しません、と言われて大人しく後宮で世話になることになった。
そしてウェランダとルナは、二日おきに授業の内容をまとめては、アクートの元に届けていた。
「何だ? その文は?」
ウェランダが一人で訪れた時、アクートは昼寝をしていた。
寝所脇に授業を筆写した紙の束を置くと、ウェランダは静かに文を開けて読んでいたのだ。
「ああ、ごめんアクート。起こしちゃった?」
「いや別にいい。それよりその文は何だ?」
「星観島の家族からの文だよ。皆、私が急に公女さまになっちゃったもんだから、ビックリしてるみたい」
「そうか。俺も初めて聞いた時は、傷口がまた開くんじゃないか? って思うくらい驚いたからな。家族なら尚更か」
「そうだね」
「でも島の家族も大したものだよ」
そう言いながらウェランダは、文面の最後に目をやった。
「何だ?」
「何と姉さんは星観島の次期島長になるべく修行を開始したんだって」
「え? それはすごいじゃないか」
「そうなの。姉さんったら、前から長に打診されていたらしくって。私の商人を目指す姿に触発されて、自分ももう一度頑張ってみようって思ったんだって。すごいよねえ。そういえば姉さまって、島の学校では一番の成績だったし、特に星読みの授業なんか満点を何度も叩きだしていたもんねえ。下手な星読みより、姉さまの星読みの方が確かだって話してた人もいたっけ」
アクートは、いててっと呟きながらも半身を起こした。
「大丈夫?」
「大丈夫だ。たまに少し痛むだけだ」
「どうしたの?」
「ウェランダにちゃんと謝って置かないと、と思ってな」
「謝るって何を?」
「俺が五大商家筆頭のデナーロの息子っていうのはもう知ってるよな?」
「ええ。大公さまとルナに教えて頂きました。私とルナを守るために遣わした、と」
「そうだ。さほど剣術が秀でていたわけでもない俺が何で選ばれたのかはわからんが、それでも選ばれたのに、守るってことを簡単に考えていた。すまない。あの時、カルテアの王女がナイフを持ったままだったということに気づけいていれば良かったのに。ウェランダを危険な目にあわせてしまった。本当にすまなかった。俺が油断していたばかりに」
アクートはウェランダに向かって頭を下げた。
「アクート、私に謝らなくていいよ。だって後宮は、大公さまの許可なき者は帯剣できないきまりだったし。本当なら剣の一本でも帯びていればナイフぐらい簡単に吹っ飛ばせたのに。私のほうこそ、守ってくれてありがとう」
今度はウェランダが頭を下げた。
お互い同時に頭を上げた。
額がぶつかるくらいに顔が近くて、思わずアクートが頬を赤らめた。
「あの、さ」
アクートの吐息が鼻にかかった。
ウェランダは身をよじって逃げようとしたが、後ろから片腕だけで右肩を掴まれてしまった。
「俺、この前、大公さまと公母さまに妙なことを頼まれてさ……」
「妙なこと?」
「俺の親父殿には、お前さえ良ければ好きにしろと言われたし。どうしようかと思っていたんだけど、俺はウェランダさえ良ければ受けようと思ってるんだ」
「は?」
いまいち要領を得ないアクートの説明に、ウェランダは首を傾げた。
「何のこと?」
「お、俺は、トバルクの第二公女さまの婿になるべく周りから打診されてんだよ!」
勢いよくそう言うと、あっと言う間に頭まですっぽり布団を被ってしまった。
「え? え~!」
ウェランダの大絶叫が部屋中に響き渡った。
「でも、でも、五大商家筆頭の跡取り息子が何言ってんのよ! あなたはデナーロ殿の跡を継ぐんでしょう? それがどうして私の婿候補になんの? 実家はどうすんのよ?」
どうやらウェランダが脇目もふらず勉強ばかりしている間に、周囲は勝手に動いていたらしい。
「どうせウェランダたちが公女として正式発表されれば、それと同時にエリデラード帝国を初め、他国から山のような縁談が降ってわいてくるんだぞ。しかも、国内からも有力商家や大臣たちのような官吏の家から、普通に縁談が来るらしいしな」
布団の中からアクートの声がもれてくる。
「それで正式発表と同時に、それらの縁談を振り切るために婚約発表もしてしまおうってことなの?」
「そうらしい」
「何で、公女発表が即婚約なの?」
「それは大公さまと公母さまに聞けばいいだろう。考えてもみろよ。ウェランダもルナも成人なんだぞ。成人過ぎたら、大概、家同士で即婚約か、早いところは即結婚だろう」
「まあ、確かにそれはそうだけど」
落ち着いて考えてみればそうなのだ。
この世界では、どこの国の貴人でも庶民でも、十五歳で成人の儀を終えれば、即結婚が当たり前のようになっていた。男女ともに二十を過ぎて独身でいると、何かと変な方へ勘ぐられてしまうのだ。
ウェランダも成人の儀を過ぎた頃から縁談が普通に届くような地域に住んでいたのなら、もっと早熟だったのだろうが、いかんせん星観島では娘しか生まれないし、夫は自分で連れて帰ってくるというような方法しかない。
だから庶民の割には、星観島では自然と恋愛結婚率のほうが高いのだ。それに島から出るという『金星の時期』という風習もあったので、ウェランダの頭には恋愛など眼中にもなかったのだ。
そう言えば、ルナも成人の儀を終えて適齢期に入ったからと、おっさん貴族の縁談が持ち込まれていた。
(そうか。世間はそうだったんだ)
よくわからないが、自分はそういう面では、まだまだ子供だったのだ。
そこまで考えが思い至って、今ごろになってウェランダの頬が紅潮してきた。
「だから、さ、アクートの実家はどうすんのよ?」
「いくら長男でも、あれだけ算術と簿記が出来ない俺が、跡取りになれるくらいに克服するのを皆が気長に待ってくれていると思うのか?」
「それは、まあ確かに」
ウェランダは、厳しい商人の世界を垣間見たような気がした。
役に立たないものは、人間でも物でも即座に見切りをつける。
非常に商人らしい話だ。
今までが気長な対応だったのだ。
「昨日、親父殿にはっきり言われたよ。『お前に跡を継がせたらデナーロの家は破綻する。父祖代々の家をお前で潰すわけにはいかない。だから、お前の姉か妹を跡取りに据えることにする。何、デナーロが女性だったことも過去にはあったし、しかも次の大公さまは女性だ。女性が後を継ぐのに何ら不足も文句もあるまいよ』ってな。それで俺は吹っ切れたんだ。どこへでも行けって、親父殿が俺の背中を押してくれたような気がしたんだ」
「そうだったんだ」
「返事は別に急いでないけど。ウェランダも早く自分の意思を大公さまたちに表明しないと、卒業後に勝手に婚約発表されちまうぞ」
「わかった。ねえアクート、私の婚約者候補があなたなら、ルナの婚約者候補もるのよね?」
「ああ」
「誰なの?」
「それを知ってどうすんだよ? 自分の相手と比べんのか?」
「比べないよ。ルナのは単なる興味だよ」
ほっと安心したような声がもれた。
「そうか。だったら教えてやる。俺も親父殿から聞いただけだったんだけど、どうやらこの間の次期大公候補の中にいた、エリデラード帝国の皇子さまらしいぞ」
「え? あの皇子さま?」
「そうだ。大公の相手はエリデラードから出すというのが、もうここ何代も続いてきた決まり事らしいからな」
「そうなんだ。それで、ルナはその話知ってるの?」
「次期大公の相手だからな。水面下で動くにも本人に伝えておいたほうがいいだろうということで、こっそり伝えられたらしい」
「ルナは承諾したの?」
「二つ返事で了承したらしい。一目惚れするような素敵な男性とこれまで出会ったことがなかったから、心には誰もいない。誰かが勝手に住み着く前に決めてくれるのならそのほうがいいって言ったとか。遠目に見た限りでは、特に問題のありそうな皇子ではなかったからかまわないって付け加えたんだと」
「じゃあもう、この話は両国でまとまってるんだよね?」
「らしいぞ。何せ公母さまが、先代皇帝の同母姉で現皇帝の伯母上にあたられるからな。公母さまが仲介されて、さっさと話をまとめてしまったらしいぞ」
「ルナがあっさりまとまったから、次に私ってことなんだ」
「そうみたいだな」
「私の知らないところで、色々な話がどんどん前に進んでいってるのね」
ウェランダは立ち上がった。
そしてそのまま、アクートの部屋を出ていこうとした。
扉の取っ手に手をかけたウェランダは、振り向かずにこう告げた。
「アクート、私、アクートなら勝手に婚約発表されてしまってもかまわないよ。私からは断らないからね」
アクートの返事を待たずに、それだけ言うと素早くウェランダは出ていった。
ウェランダとルナは、商学校の後期授業が始まったため、バンコの商館に戻り、普通の学生の日々に戻っていた。
表向きはまだ公女として公式発表はされていないのだが、国を支える官吏たちと親しい人間たちには、内々に伝えられた。
それなので他の学生たちにはほとんど伝わっていなかった。
勉学に専念できるように、との大公の配慮だった。
変わったことと言えば、二人で通い始めたことと、在籍学生数が十四人になったことだった。
急にカルテアの王女が学校を退学したということは、少なからず事情を知らない者は驚いたが、それも知らされた当時のことであって、今は噂にもなっていない。
アクートは意識は取り戻したものの、完全に傷が癒えるまでそのまま後宮暮らしが続いている。
本人は、支障がないのならバンコの商館に戻るなり、実家に戻るなりして床上げしたいと申し出ていたのだが、公母に完治するまで後宮から出しません、と言われて大人しく後宮で世話になることになった。
そしてウェランダとルナは、二日おきに授業の内容をまとめては、アクートの元に届けていた。
「何だ? その文は?」
ウェランダが一人で訪れた時、アクートは昼寝をしていた。
寝所脇に授業を筆写した紙の束を置くと、ウェランダは静かに文を開けて読んでいたのだ。
「ああ、ごめんアクート。起こしちゃった?」
「いや別にいい。それよりその文は何だ?」
「星観島の家族からの文だよ。皆、私が急に公女さまになっちゃったもんだから、ビックリしてるみたい」
「そうか。俺も初めて聞いた時は、傷口がまた開くんじゃないか? って思うくらい驚いたからな。家族なら尚更か」
「そうだね」
「でも島の家族も大したものだよ」
そう言いながらウェランダは、文面の最後に目をやった。
「何だ?」
「何と姉さんは星観島の次期島長になるべく修行を開始したんだって」
「え? それはすごいじゃないか」
「そうなの。姉さんったら、前から長に打診されていたらしくって。私の商人を目指す姿に触発されて、自分ももう一度頑張ってみようって思ったんだって。すごいよねえ。そういえば姉さまって、島の学校では一番の成績だったし、特に星読みの授業なんか満点を何度も叩きだしていたもんねえ。下手な星読みより、姉さまの星読みの方が確かだって話してた人もいたっけ」
アクートは、いててっと呟きながらも半身を起こした。
「大丈夫?」
「大丈夫だ。たまに少し痛むだけだ」
「どうしたの?」
「ウェランダにちゃんと謝って置かないと、と思ってな」
「謝るって何を?」
「俺が五大商家筆頭のデナーロの息子っていうのはもう知ってるよな?」
「ええ。大公さまとルナに教えて頂きました。私とルナを守るために遣わした、と」
「そうだ。さほど剣術が秀でていたわけでもない俺が何で選ばれたのかはわからんが、それでも選ばれたのに、守るってことを簡単に考えていた。すまない。あの時、カルテアの王女がナイフを持ったままだったということに気づけいていれば良かったのに。ウェランダを危険な目にあわせてしまった。本当にすまなかった。俺が油断していたばかりに」
アクートはウェランダに向かって頭を下げた。
「アクート、私に謝らなくていいよ。だって後宮は、大公さまの許可なき者は帯剣できないきまりだったし。本当なら剣の一本でも帯びていればナイフぐらい簡単に吹っ飛ばせたのに。私のほうこそ、守ってくれてありがとう」
今度はウェランダが頭を下げた。
お互い同時に頭を上げた。
額がぶつかるくらいに顔が近くて、思わずアクートが頬を赤らめた。
「あの、さ」
アクートの吐息が鼻にかかった。
ウェランダは身をよじって逃げようとしたが、後ろから片腕だけで右肩を掴まれてしまった。
「俺、この前、大公さまと公母さまに妙なことを頼まれてさ……」
「妙なこと?」
「俺の親父殿には、お前さえ良ければ好きにしろと言われたし。どうしようかと思っていたんだけど、俺はウェランダさえ良ければ受けようと思ってるんだ」
「は?」
いまいち要領を得ないアクートの説明に、ウェランダは首を傾げた。
「何のこと?」
「お、俺は、トバルクの第二公女さまの婿になるべく周りから打診されてんだよ!」
勢いよくそう言うと、あっと言う間に頭まですっぽり布団を被ってしまった。
「え? え~!」
ウェランダの大絶叫が部屋中に響き渡った。
「でも、でも、五大商家筆頭の跡取り息子が何言ってんのよ! あなたはデナーロ殿の跡を継ぐんでしょう? それがどうして私の婿候補になんの? 実家はどうすんのよ?」
どうやらウェランダが脇目もふらず勉強ばかりしている間に、周囲は勝手に動いていたらしい。
「どうせウェランダたちが公女として正式発表されれば、それと同時にエリデラード帝国を初め、他国から山のような縁談が降ってわいてくるんだぞ。しかも、国内からも有力商家や大臣たちのような官吏の家から、普通に縁談が来るらしいしな」
布団の中からアクートの声がもれてくる。
「それで正式発表と同時に、それらの縁談を振り切るために婚約発表もしてしまおうってことなの?」
「そうらしい」
「何で、公女発表が即婚約なの?」
「それは大公さまと公母さまに聞けばいいだろう。考えてもみろよ。ウェランダもルナも成人なんだぞ。成人過ぎたら、大概、家同士で即婚約か、早いところは即結婚だろう」
「まあ、確かにそれはそうだけど」
落ち着いて考えてみればそうなのだ。
この世界では、どこの国の貴人でも庶民でも、十五歳で成人の儀を終えれば、即結婚が当たり前のようになっていた。男女ともに二十を過ぎて独身でいると、何かと変な方へ勘ぐられてしまうのだ。
ウェランダも成人の儀を過ぎた頃から縁談が普通に届くような地域に住んでいたのなら、もっと早熟だったのだろうが、いかんせん星観島では娘しか生まれないし、夫は自分で連れて帰ってくるというような方法しかない。
だから庶民の割には、星観島では自然と恋愛結婚率のほうが高いのだ。それに島から出るという『金星の時期』という風習もあったので、ウェランダの頭には恋愛など眼中にもなかったのだ。
そう言えば、ルナも成人の儀を終えて適齢期に入ったからと、おっさん貴族の縁談が持ち込まれていた。
(そうか。世間はそうだったんだ)
よくわからないが、自分はそういう面では、まだまだ子供だったのだ。
そこまで考えが思い至って、今ごろになってウェランダの頬が紅潮してきた。
「だから、さ、アクートの実家はどうすんのよ?」
「いくら長男でも、あれだけ算術と簿記が出来ない俺が、跡取りになれるくらいに克服するのを皆が気長に待ってくれていると思うのか?」
「それは、まあ確かに」
ウェランダは、厳しい商人の世界を垣間見たような気がした。
役に立たないものは、人間でも物でも即座に見切りをつける。
非常に商人らしい話だ。
今までが気長な対応だったのだ。
「昨日、親父殿にはっきり言われたよ。『お前に跡を継がせたらデナーロの家は破綻する。父祖代々の家をお前で潰すわけにはいかない。だから、お前の姉か妹を跡取りに据えることにする。何、デナーロが女性だったことも過去にはあったし、しかも次の大公さまは女性だ。女性が後を継ぐのに何ら不足も文句もあるまいよ』ってな。それで俺は吹っ切れたんだ。どこへでも行けって、親父殿が俺の背中を押してくれたような気がしたんだ」
「そうだったんだ」
「返事は別に急いでないけど。ウェランダも早く自分の意思を大公さまたちに表明しないと、卒業後に勝手に婚約発表されちまうぞ」
「わかった。ねえアクート、私の婚約者候補があなたなら、ルナの婚約者候補もるのよね?」
「ああ」
「誰なの?」
「それを知ってどうすんだよ? 自分の相手と比べんのか?」
「比べないよ。ルナのは単なる興味だよ」
ほっと安心したような声がもれた。
「そうか。だったら教えてやる。俺も親父殿から聞いただけだったんだけど、どうやらこの間の次期大公候補の中にいた、エリデラード帝国の皇子さまらしいぞ」
「え? あの皇子さま?」
「そうだ。大公の相手はエリデラードから出すというのが、もうここ何代も続いてきた決まり事らしいからな」
「そうなんだ。それで、ルナはその話知ってるの?」
「次期大公の相手だからな。水面下で動くにも本人に伝えておいたほうがいいだろうということで、こっそり伝えられたらしい」
「ルナは承諾したの?」
「二つ返事で了承したらしい。一目惚れするような素敵な男性とこれまで出会ったことがなかったから、心には誰もいない。誰かが勝手に住み着く前に決めてくれるのならそのほうがいいって言ったとか。遠目に見た限りでは、特に問題のありそうな皇子ではなかったからかまわないって付け加えたんだと」
「じゃあもう、この話は両国でまとまってるんだよね?」
「らしいぞ。何せ公母さまが、先代皇帝の同母姉で現皇帝の伯母上にあたられるからな。公母さまが仲介されて、さっさと話をまとめてしまったらしいぞ」
「ルナがあっさりまとまったから、次に私ってことなんだ」
「そうみたいだな」
「私の知らないところで、色々な話がどんどん前に進んでいってるのね」
ウェランダは立ち上がった。
そしてそのまま、アクートの部屋を出ていこうとした。
扉の取っ手に手をかけたウェランダは、振り向かずにこう告げた。
「アクート、私、アクートなら勝手に婚約発表されてしまってもかまわないよ。私からは断らないからね」
アクートの返事を待たずに、それだけ言うと素早くウェランダは出ていった。
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