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大公の思惑
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「なかなか面白いことを考えつかれましたな」
大公とウェランダたちの話を、最後は黙って聞いていたバンコが二人きりになった途端、面白そうな瞳をしている。
やはりバンコも根っからの商人なのだ。
明らかにこの商売の賭けを楽しんでいる。
「果たして公母さまのお気に召すかどうか」
大公は自ら茶を淹れると、バンコの前に置いた。
「私など何度も公母さまの審美眼にやられましたからな。田舎の島からでたことのない娘が選んで持ってくる物をどう思し召されるか」
バンコは湯気を吹きながら、茶を一口含んだ。
「さて、な。それは母上とあの娘次第だ。私の後宮も、公妃が亡くなって以来、すっかり寂しいものになってしまったからな。たまには余興も必要だ」
「お寂しいのでしたら、今からでも艶福家になられたらいかがですか? それを求めている官吏の娘たちが行儀見習いと称して後宮に数多おりましょうに」
公妃が亡くなってからは、一時期、公母も積極的に再婚を勧めたりしたのだが、頑として大公はその全てを断っていた。
最近では、もう公母も息子の頑固さに半ば諦めているかのようだった。
今でも他国から縁談は来るが、大公は一切相手にしていなかった。
そのため近頃では、逆に養子縁組の話が舞い込むようになってきていた。
「ふふ、何を今更。それより重要なのは、母上のお気に召すかどうか、だ」
何が、とは言わなかった。
「そうですな」
「そういうことだ」
謎の含み笑いを残して、大公は仕事の大半をバンコに押しつけると、さっさと後宮へ逃げ出した。
大公とウェランダたちの話を、最後は黙って聞いていたバンコが二人きりになった途端、面白そうな瞳をしている。
やはりバンコも根っからの商人なのだ。
明らかにこの商売の賭けを楽しんでいる。
「果たして公母さまのお気に召すかどうか」
大公は自ら茶を淹れると、バンコの前に置いた。
「私など何度も公母さまの審美眼にやられましたからな。田舎の島からでたことのない娘が選んで持ってくる物をどう思し召されるか」
バンコは湯気を吹きながら、茶を一口含んだ。
「さて、な。それは母上とあの娘次第だ。私の後宮も、公妃が亡くなって以来、すっかり寂しいものになってしまったからな。たまには余興も必要だ」
「お寂しいのでしたら、今からでも艶福家になられたらいかがですか? それを求めている官吏の娘たちが行儀見習いと称して後宮に数多おりましょうに」
公妃が亡くなってからは、一時期、公母も積極的に再婚を勧めたりしたのだが、頑として大公はその全てを断っていた。
最近では、もう公母も息子の頑固さに半ば諦めているかのようだった。
今でも他国から縁談は来るが、大公は一切相手にしていなかった。
そのため近頃では、逆に養子縁組の話が舞い込むようになってきていた。
「ふふ、何を今更。それより重要なのは、母上のお気に召すかどうか、だ」
何が、とは言わなかった。
「そうですな」
「そういうことだ」
謎の含み笑いを残して、大公は仕事の大半をバンコに押しつけると、さっさと後宮へ逃げ出した。
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