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星観島
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ウェランダは、世界の南方にある島々の一つ『星観島』と呼ばれている島に家族と共に住んでいた。島は、大陸屈指のエリデラード帝国の飛び地領として、帝国の保護を受けている。但し、保護は受けているものの自治権は島の長に任されている。
元々、この星観島はどこの国にも属すことはなかった。そのため、時によって様々な国に干渉されてはいた。
ところが、何代か前の帝国の時の皇帝付きの占星術師となった島の娘が、幾度も星読みによって皇帝の危難を救ったということで、それを喜んだ皇帝が娘の願いを聞き入れて星観島を帝国の保護領とすることにしたのだ。以来、帝国の権威を恐れてどこの国も干渉しなくなり、島に穏やかな日々が流れるようになった。
そして、優秀な占星術師を輩出するということで、代々島で一番目に優秀な占星術師を皇帝の元に送ることになっている。ちなみに二番目に優秀な占星術師は、後進の育成と島の長の役目を担うために、島から出ないことになっているのだ。
そのために星観島には、古くから一つの風習があった。
十五歳の成人の儀を終えた島の娘を、その娘のもっとも金星の加護が得られる時期に、島のための利益をもたらすようにと島外へ派遣するのだ。
派遣先は、それぞれが自由に選び、学んだり商いの弟子入りをしたりするのだ。派遣期間は、一年~五年の間で決められる。
最初は、島の長が娘しか生まれずに衰退していく一方だった島を憂えて発案したものだったのだが、島の利益よりも金星の加護の別の意味である『恋愛』に走る娘が増えていった。しかも、恋愛に走った娘の半数は、王や貴族に正室とまでは行かないまでも側室として縁付いていったのだ。そして残りの半数は、夫となる者を連れて島に戻ってくるのだ。
そして恋愛に走らなかった娘たちは、商人となって島に利益をもたらすこともあれば、自分の特技や趣味を磨いてそれによって生計を立てていく者もあった。
確率で言えば、恋6:金3:趣味1くらいである。
派遣国は、島の学校での成績順と本人の希望とで決定される。
ウェランダの姉は、島の学校でも成績優秀なほうだったので、帝国本土の商学校へ推薦された。ウェランダの姉も、最初は家の月桃農園から作られる製品を、帝国の市場で売り出そうと息巻いて出ていったのだが、帝都にある商学校の寄宿舎で「田舎者」と馬鹿にされたり苛められたり、散々な目にあって意欲をなくしてしまい、結局は諦めてしまったのだ。
そして、失意の中、慣れない異国暮らしで助け手となってくれた義兄と出会い、二人で帰島したのだ。
だからではないのだが、ウェランダは絶対に自分たちが作るものをもっと島の外へ売り出して、どこかの大商人と提携して販路を持とうと考えているのだった。そのために中位の成績だったウェランダが選んだ国は、トバルク公国という大陸でも商業に特化した国であった。そこの商人育成の学校に、一年滞在して商売のことをみっちり学んで、卒業後は、商人となって大海に乗り出そうということを考えている。
「絶対、大金持ちになってみせるわ!」
というのが、ウェランダの幼い頃からの口癖だった。
元々、この星観島はどこの国にも属すことはなかった。そのため、時によって様々な国に干渉されてはいた。
ところが、何代か前の帝国の時の皇帝付きの占星術師となった島の娘が、幾度も星読みによって皇帝の危難を救ったということで、それを喜んだ皇帝が娘の願いを聞き入れて星観島を帝国の保護領とすることにしたのだ。以来、帝国の権威を恐れてどこの国も干渉しなくなり、島に穏やかな日々が流れるようになった。
そして、優秀な占星術師を輩出するということで、代々島で一番目に優秀な占星術師を皇帝の元に送ることになっている。ちなみに二番目に優秀な占星術師は、後進の育成と島の長の役目を担うために、島から出ないことになっているのだ。
そのために星観島には、古くから一つの風習があった。
十五歳の成人の儀を終えた島の娘を、その娘のもっとも金星の加護が得られる時期に、島のための利益をもたらすようにと島外へ派遣するのだ。
派遣先は、それぞれが自由に選び、学んだり商いの弟子入りをしたりするのだ。派遣期間は、一年~五年の間で決められる。
最初は、島の長が娘しか生まれずに衰退していく一方だった島を憂えて発案したものだったのだが、島の利益よりも金星の加護の別の意味である『恋愛』に走る娘が増えていった。しかも、恋愛に走った娘の半数は、王や貴族に正室とまでは行かないまでも側室として縁付いていったのだ。そして残りの半数は、夫となる者を連れて島に戻ってくるのだ。
そして恋愛に走らなかった娘たちは、商人となって島に利益をもたらすこともあれば、自分の特技や趣味を磨いてそれによって生計を立てていく者もあった。
確率で言えば、恋6:金3:趣味1くらいである。
派遣国は、島の学校での成績順と本人の希望とで決定される。
ウェランダの姉は、島の学校でも成績優秀なほうだったので、帝国本土の商学校へ推薦された。ウェランダの姉も、最初は家の月桃農園から作られる製品を、帝国の市場で売り出そうと息巻いて出ていったのだが、帝都にある商学校の寄宿舎で「田舎者」と馬鹿にされたり苛められたり、散々な目にあって意欲をなくしてしまい、結局は諦めてしまったのだ。
そして、失意の中、慣れない異国暮らしで助け手となってくれた義兄と出会い、二人で帰島したのだ。
だからではないのだが、ウェランダは絶対に自分たちが作るものをもっと島の外へ売り出して、どこかの大商人と提携して販路を持とうと考えているのだった。そのために中位の成績だったウェランダが選んだ国は、トバルク公国という大陸でも商業に特化した国であった。そこの商人育成の学校に、一年滞在して商売のことをみっちり学んで、卒業後は、商人となって大海に乗り出そうということを考えている。
「絶対、大金持ちになってみせるわ!」
というのが、ウェランダの幼い頃からの口癖だった。
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