ふしぎの輝石

黄永るり

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少年と島

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 木々の合間からさす木漏れ日に導かれるように、少年は一歩ずつ草をかきわけながら道なき道を進んでいきます。

(こんなにたくさんの木が生えているということは、川か何か水辺がありそうだぞ)
 少年の胸にわずかだが希望が湧いてきました。
 島に吹く風が穏やかに少年を島の奥へと背中を押してくれます。

 しばらく歩くと、突然開けた平地がある場所に辿りつきました。
 そこには少年が望んでいた川のような小さなせせらぎがありました。
 
(良かった)
 透明な水面に思い切って少年は顔をつけて、渇いていた喉を一気に潤します。
 身体に水を得て落ち着いた少年は、あたりをゆっくり見回しました。
 ここまで来ても島には人の気配がありません。

(やっぱり誰もいないんだ)
 もしかしてこの島は、船に乗っていた仲間や親方たちから教えられていた絶対に人間が上陸できない島なのかもしれないと思いました。

(だとしたら、どうして僕だけこの島に入れたんだろう?)
 船が嵐にあうことはよくあることです。

 だけどこの島だけは、どれだけこの近くで船が嵐にあっても絶対に人が流れ着くことはありませんでした。
 そう聞いていただけに、少年は自分の身に何が起きたのか理解できませんでした。
 でも、のどは渇くし、お腹は空いてきます。

 黙ってただここに座っているだけでは、そう遠くはない日に自分が死んでしまうであろうことは少年でもわかりきったことでした。
 そして。

狼煙のろしを上げないと」
 そうしないと、仲間や船長に見つけてもらえません。
 今、この島が自分を受け入れてくれているとしても、そのうち追い出されてしまうかもしれません。

 そうなってしまったら一瞬で海水に放り出されて死んでしまいます。
 とにかく水はここで確保できそうですから、あとは食べ物を得ることと、狼煙をあげて海を行く船乗りたちに助けを求めること、この二つが少年が真っ先にしなければならないことです。

 そう思った少年は、このせせらぎの場所を起点に、まず食べ物になる木の実か何かがないかを探しながら、魚釣りができそうな細い枝と火起こし用の枝もナイフで切り落としていきました。

 ある程度まとまった枝を抱えると、少年は開けた場所まで戻っては、せせらぎの近くにまとめて置いておきます。
 何度か繰り返しているうちに、少年は周辺の場所を理解しました。

(この広場の近くには食べられる物がない)
 そして食料になりそうな生き物、動物もいません。
(海で魚を採ったりするしかないのかな?)
 少年はすっかり疲れた様子で辺りを見回します。

(この島がかなり広そうだということは何となくわかったけど、もっと奥に入っていった方が良いのかな?)
 少年は、ひとまず今日の所はここに留まって休んでから、明日以降、行けるところまで行ってみようと思いました。
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