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捕縛
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南の太守・ダグナルが異母兄弟全員を毒殺しようとした。
この第一報が王宮中にもたらされた時、ルナは当の南の太守の休息所にいた。
最初に控えの間に通される前にセレンからダグナルの休息所の場所を教えられていたのだ。
ルナを追いかけてきた女官たちは、招じ入れてくれたセレンが内側から鍵をかけてくれたために入れない。
さすがに女官たちも太守の休息所を主が不在だからといって、合鍵で開けてしまって良いものか扉の前で手をこまねいていた。
「ルナ、いきなりどうしたのですか?」
「セレン様、申し訳ありません。入れて頂いてありがとうございます」
「太守様に何か御用ですか?」
「はい。とても」
「卒業試験のことでしたら今日の行事が終わり次第、太守様と東の太守様からお話がありますよ」
「いえ。そうではないのです」
部屋にはセレンが一人いるだけで、やはりというか彼はいなかった。
(そうだよね。若さまの側にいるよね)
「しばらくこちらで待たせて頂いてよろしいでしょうか?」
「太守様をですか?」
ルナは黙って頷いた。
セレンとともに部屋の主を待っていると、突然大量の兵士たちがなだれこんできた。
「一体どういうことなのですか? ここは南の太守様のご休息所ですよ!」
「我々は王弟殿下の命により、あなた様を捕縛しに参りました」
先頭に立っていた兵士長がセレンに対して丁寧な礼をとった。
「王弟殿下が?」
「さきほど南の太守様が、他の太守様方の毒殺を企てられました」
「そんな……」
「そんなことあるわけありません!」
ルナは決然と言い切った。
(あの方に限ってそんなことあるわけがない)
「事実だ。すでに北の太守様はお亡くなりになられた。東と西の太守様もお倒れになられてそのまま昏睡状態に陥られた」
「嘘……」
呆然としているセレンを兵士長は、兵士たちに捕縛させた。
「南の太守様に仕える侍女か? ならば共に来い!」
ルナも無理やり引っ張られた。
謁見前に着替えるということで、法衣をまとっていないことが災いした。
法衣をまとっていない以上、ルナの身分は保障されない。
何より、今のルナは公にはされていない存在だ。
トゥナルーンまで倒れてしまった以上、何を言っても無駄だろう。
そこまで考えがいたったところで、ルナは大人しく捕縛された。
この第一報が王宮中にもたらされた時、ルナは当の南の太守の休息所にいた。
最初に控えの間に通される前にセレンからダグナルの休息所の場所を教えられていたのだ。
ルナを追いかけてきた女官たちは、招じ入れてくれたセレンが内側から鍵をかけてくれたために入れない。
さすがに女官たちも太守の休息所を主が不在だからといって、合鍵で開けてしまって良いものか扉の前で手をこまねいていた。
「ルナ、いきなりどうしたのですか?」
「セレン様、申し訳ありません。入れて頂いてありがとうございます」
「太守様に何か御用ですか?」
「はい。とても」
「卒業試験のことでしたら今日の行事が終わり次第、太守様と東の太守様からお話がありますよ」
「いえ。そうではないのです」
部屋にはセレンが一人いるだけで、やはりというか彼はいなかった。
(そうだよね。若さまの側にいるよね)
「しばらくこちらで待たせて頂いてよろしいでしょうか?」
「太守様をですか?」
ルナは黙って頷いた。
セレンとともに部屋の主を待っていると、突然大量の兵士たちがなだれこんできた。
「一体どういうことなのですか? ここは南の太守様のご休息所ですよ!」
「我々は王弟殿下の命により、あなた様を捕縛しに参りました」
先頭に立っていた兵士長がセレンに対して丁寧な礼をとった。
「王弟殿下が?」
「さきほど南の太守様が、他の太守様方の毒殺を企てられました」
「そんな……」
「そんなことあるわけありません!」
ルナは決然と言い切った。
(あの方に限ってそんなことあるわけがない)
「事実だ。すでに北の太守様はお亡くなりになられた。東と西の太守様もお倒れになられてそのまま昏睡状態に陥られた」
「嘘……」
呆然としているセレンを兵士長は、兵士たちに捕縛させた。
「南の太守様に仕える侍女か? ならば共に来い!」
ルナも無理やり引っ張られた。
謁見前に着替えるということで、法衣をまとっていないことが災いした。
法衣をまとっていない以上、ルナの身分は保障されない。
何より、今のルナは公にはされていない存在だ。
トゥナルーンまで倒れてしまった以上、何を言っても無駄だろう。
そこまで考えがいたったところで、ルナは大人しく捕縛された。
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