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祖父の話

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「海の男神の末裔は何がどうなったのかは知らんがある時期を境に極端に人数が減ったのじゃ」
 そう祖父は説明してくれた。
「なぜ?」
「それはわしにもわからん。わしら大地の女神の一族と砂漠の女神の一族は、それなりに人数を保っておるが、なぜか海の男神の一族だけは滅びの一歩手前くらいまで人数が減ってしまってそこからなかなか増えんのじゃ」
「そうなんだ」
「だからわしは、海の男神の一族の末裔を探すのにとても苦労した」
「世界中の海を回ったの?」
「そうだとも」
 祖父は世界中の海を商売をしながら回ったそうだ。
 商売をしながらというところが何とも抜け目ない商人らしかった。
「その中で貴人や商人の船を専門に護衛してくれる傭兵集団に出会った」
「それが」
「そうその集団を統率していたのが男神・ビハールの唯一の末裔だった」
 祖父はその男と共に砂漠の女神の一族の者とともに神殿に上がったという。
「文のやりとりは時々していた。あいつが結婚し、娘が生まれたことも聞いた」
 だが娘が生まれてほどなくして母親が亡くなったという。
 男は仕事のかたわら娘を育てることはできないと言って、ジャズィーラ島に住む妻の両親に娘を預けて養育を頼んだという。
 そして時々、仕事の合間に島に立ち寄っては娘を見に行き、妻の両親に多額の養育費を渡していたという。
 そのうち娘は父と同じ傭兵稼業につきたくなったらしく、船に乗せてくれとせがんだが、父親も妻の両親も猛反対した。
 一度は、娘が家出をする形でどこぞの商船に乗ろうとしたらしいが港にいた父親の手下につかまって祖父母の家に連れ戻されたらしい。
(その女の子、確かおじいさまの話によれば私と年はあまり変わらないらしいけど)
 なんせ島のどこに住んでるか、細かい位置までは祖父は話してくれなかった。
「もし、お前がその娘を探すというならこの地図をやろう」
 そういってその時、さらさらと描いて渡してくれたのが、涙の中にブドウの絵という落書きのような紙切れだった。
 それを祖父が亡くなった時に渡された文とともに大切に持っていたのだ。
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