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船上にて

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 地平線の彼方、島影がまだかけらも見えない水平線をシャアラは見つめていた。
(早く!)
 一刻も早くジャズィーラ島に到着しないと、大選挙期間に突入してしまう。
 気が急いて仕方がなかった。
 あれから砂漠を抜けて到着した港で、シャーティに協力してもらったのだが、結局シャヒールの親方や乗組員に関する情報を得ることはできなかった。
 次の仕事があるシャーティに感謝の気持ちと別れの言葉を告げて慌ただしく別れて、最後の手がかりのジャズィーラ自治領行きの船に飛び乗ったのが昨夜のことだった。
(島にいるのかな? 本当に見つけられるのかな?)
 一人で考えていると、すぐに不安が頭をもたげてくる。
 ジャズィーラ自治領は島国とはいえ、それなりに広かったりする。
 祖父が文とともに残してくれた手書きの絵地図を何度も眺めてみた。
(多分、ジャズィーラのどこかの町か村を現してるんだろうけど)
 絵心があったはずの祖父なのだが、この絵だけは子供の落書きみたいにひどいできだった。
(おじいさまがこんなへんてこな絵を描くってことは何かあるのだろうけど)
 ジャズィーラ島の形のような水玉を描き、そして真ん中にブドウの絵が描かれている。
(ジャズィーラにブドウって聞いたことないけど。自治領の誰かの館の庭にでも生えてるのかな?)
 ブドウはむしろシャアラたちの故郷アジュジャール王国の特産物だ。
(なぜブドウ?)
 答えは現地で探すしかない。

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