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番外編
番外編-1
しおりを挟む受け継がれていくもの
――ベッドに裸でうつぶせになった私の身体に、彰人さんの裸体が重なっている。
いつものように身体を重ねた後、明日のためにもう寝たいと訴える私に、彰人さんがこう言った。
『まなみは何もせず、ただ寝ていればいい。後は俺がやるから』
そうしてうつぶせに寝かされ、後ろから挿入されたのだ。
確かに私はただ寝てるだけでいいし、この体勢だといつもより挿入は浅い上に、激しく突き上げられることもない。
けれど、感じてしまうことには変わりなく、おまけに彰人さんが唇と舌を使って背中を愛撫してくるからたまらない。
だから、そこ、弱いんだってば……!
私はシーツをぎゅっと掴みながら、背中を弓なりに反らして嬌声をあげた。
「あ、ああっ……!」
その拍子に、うなじに彰人さんの唇が触れ、私の身体がわななく。
こうなるともう、大人しく寝ているなんて無理だった。だって、彰人さんが腰を押しつけてくるたびに、背中の敏感な場所にキスするたびに、私の身体はビクビクと震え、無意識に動いてしまう。もっと奥深くにある感じる所に、彰人さんを導きたくなってしまう。
……きっと彼は最初からそれをたくらんでいたのだろう。本当に酷い人だ。
「まなみ……」
掠れた声が降ってくる。その色気のある艶やかな声にも私は反応してしまう。
私の中でこのまま達したい気持ちと、眠りたい気持ちがせめぎ合っていた。
「おね、がい。寝かせて……ぁあ、はぁ、ん、ぁ」
「だめだよ、最後まで付き合って。そうしたら寝かせてあげるから」
「いや、お願い、寝かせて……」
ぐずぐずと泣き言を言いながらも、私の腰の動きは止まらない。
眠いのに。寝たくて寝たくてたまらないのに――
「まなみ……」
「……う、ん……おねが、い……」
「まなみ、起きて」
「や……寝かせて……」
だって、私は寝たままでいいんでしょう?
「まなみ」
「……」
「まなみ!」
――彰人さんの声が大きくなり、目の前が急に明るくなった。
「ぐっすり眠っているところ悪いけど、そろそろ起きた方がいい」
少し冷たい指で頬を撫でられ、私の意識はまどろみの中から浮上する。
「ん……」
ぼんやりと薄目を開けたはいいけれど、やけに眩しくて、私――上条まなみはゴロンと寝返りをうつ。その背中にまた声をかけられた。
「まなみ、起きなさい」
まだまだ眠かった私は、その声を意識の外に押しやる。けれど、いわゆる防衛本能というやつだろうか。次にかけられた言葉は、なぜかそれまでの言葉よりしっかりと耳に届く。
「起きないと手加減なしで襲うよ?」
その言葉の意味を脳が理解する前に、私はくわっと目を開けた。そして慌てて上半身を起こしながら言う。
「たった今起きました……!」
「そう。おはよう、まなみ」
目の前で私の恋人兼婚約者――佐伯彰人さんが、にっこりと笑みを浮かべていた。
「お、おはようございます。か……彰人さん」
とっさに課長と言いかけた私は、慌てて取り繕う。彰人さんはもちろんそれに気付いて眉を上げてみせたけど、どうやらお咎めはないようだ。
「ギリギリセーフといったところかな。まぁ、今日は時間があまりないからね」
「時間……」
私はハッとして、ヘッドボードに置いてある目覚まし時計を確認する。
「ヤバイ。もうこんな時間……!」
デジタルの表示時刻を目にして仰天した私は、慌ててベッドから出て、きちんと折りたたんだ状態で置いてある自分の服のもとへ急いだ。
「実家に泊まる時は、日曜日の朝はいつもゆっくり起きてたから! ああああ、彰人さんも、もうちょっと早く起こしてくれればいいのに!」
私は素早く服を着ながら、ぶつぶつ文句を言う。すると彰人さんは目を細めて笑った。
「いや、気持ちよさそうに寝ていたから、ギリギリまで寝かせてあげようかなと思って」
「それはありがたいですけど、今日だけは遠慮なくたたき起こしてくれてよかったのにって思います!」
私は服を着終えると、バッグを手に彰人さんを振り返った。彰人さんは藍色のサマースーツに身を包んで、いつでも出かけられる姿になっている。
「私、自分の部屋に戻って急いで仕度してきますね。ちょっと待っててください、彰人さん」
「まだ時間はあるから焦ることはないよ。お祖母さんには昼過ぎに行くって言っただけで、何時までに行くと具体的に伝えたわけじゃないから」
「で、でも、早めにマンションを出て、どこかでお昼をゆっくり食べてから行くはずだったのに、もう正午近いですよ。今から仕度してご飯を食べたら、佐伯邸に着くのが遅くなっちゃいます」
私がそう言うと、彰人さんは優しく微笑んだ。
「大丈夫だよ。多少遅れても構わないさ」
「と、とにかく、急いで仕度してきますね!」
「慌てなくていいからね」
そんな言葉を背に、私は寝室を飛び出し玄関に向かった。
すぐにやってきたエレベーターに乗って、六階にある自分の部屋を目指しながら、ハァとため息をつく。
ちゃんと起きられなかった私が悪いんだけど、幸先が悪いというかなんというか……ううう。
実は今日、私と彰人さんは退院した美代子おばあちゃん――彰人さんのお祖母さんのお見舞いに行く予定なのだ。そのため、いつも日曜日には実家に帰省している私だけれど、今週末は彰人さんの部屋に泊まっていた。
昨日の土曜日は一日中彰人さんと二人で過ごし、そのまま彼の部屋に泊まった――のはいいけれど、彰人さんの寝室で寝て何もされないわけがない。例によって襲われてしまい、ぐったり疲れたまま眠りについたのが、運の尽きだった。
目覚ましはセットしておいたけど、ちゃんとその時間に起きられたのは彰人さんだけで、私はどうやらぐっすり眠り込んでしまっていたみたい。そのわりには夢見が悪かったような気がするけど。
こんなにバタバタじゃなくて、もっとゆっくり仕度したかった……
実は彰人さんと婚約してから佐伯邸を訪れるのは、これが初めてなのだ。もちろん過去には何度も訪れたし、去年だって縁談を白紙に戻すようお願いするためにお邪魔した。でも、それはあくまで眞子お祖母ちゃんの孫としての訪問だ。
でも今回は違う。私は彰人さんの婚約者として佐伯邸に向かう。いわば、恋人の家族に結婚のご挨拶をするためにお宅へ伺うようなものなのだ。
だから、私はどうしても念入りに仕度して行きたかったのに……
「うまく行かないものだなぁ」
私は再びため息を漏らしながら、左手の薬指に嵌まっている婚約指輪に視線を落とした。キラキラ輝く大きなダイヤモンドがついた、いかにも高そうな指輪だ。
……彰人さんに素性がバレてから三ヶ月も経つのに、まだちょっと信じられないでいたりする。私が彰人さんと婚約したことを。舞ちゃんたち従姉妹を差し置いて自分が許婚になったことを。
今にも目が覚めて、全部夢だったなんてことになるんじゃないかって、実は少しだけ思っている。婚約してからも色々あって、しんどい思いだってしたのに。
夜中、ふと真っ暗闇の中で目を覚まし、この幸せな思いも記憶も現実じゃないのかも……そう思ってしまうことが何度もあった。
未だに彰人さんを名前で呼ぶべき場面で、つい課長って呼んでしまうのも、そのせいなのかもしれない。
だって二年以上もの間、私は自分が四番目の許婚候補だと、彼との縁談は私には関係ない話だと、思い込んできたんだよ?
大学卒業間際に降って湧いた、三条家と佐伯家の縁談。その筆頭候補に挙げられていたのは従姉の舞ちゃんだ。私はいくら名門である三条家の血を引いてるといっても外孫だし、従姉妹たちと違ってお嬢様じゃない。だから、四番目の――最後の許婚候補だとばかり思っていたのだ。
それが就職してみたら、その会社に佐伯家の御曹司である彰人さんが素性を隠して勤めていて、上司と部下という間柄になってしまった。それだけじゃなくて、一緒に働いている間に少しずつ距離が縮まって、気付いたら恋人同士になっていた。
だけど私は自分が三条家の外孫で、彰人さんが嫌がっていた縁談のお相手候補だとは言い出せず、秘密を抱えたまま付き合っていたのだ。
ひょんなことから素性がバレて、親公認の許婚という間柄になった今もそれを信じきれないのは、どこか気後れしている部分があるからなのだろう。
何しろ相手は巨大企業を経営する佐伯家の御曹司。私だって佐伯家と肩を並べる名家、三条家の親戚だとはいえ、うちは一般家庭に過ぎないのだ。
……そのくせ、なまじ三条家や佐伯家が属しているハイソな世界に片足だけ突っ込んでいる状態だから、そこがどんなに大変な世界か知っている。
何も知らなければ、それこそ気軽に飛び込んでいけたかもしれないのに……
要するに、覚悟が足りなくて何もかも中途半端なのだ、私は。
「覚悟なんて……そう簡単にできれば苦労ないよねぇ」
ため息まじりにつぶやいていると、エレベーターが停まった。扉が開くと同時に、私は早足で部屋へ向かう。
とにかく、今は目の前のことだけを考えよう。どうせこればっかりは、すぐに解決できないと分かっている。そんなに簡単に解決できるようなことだったら、十年前、あんなに傷つかずに済んだのだから。
私は頭を切り替え、出かける仕度のことだけを考えるようにした。
急いで仕度を整え、お昼をファミレスで手早く済ませた私たちは、なんとか予定通りの時間に佐伯邸にたどり着くことができた。
「まぁ、まぁ、まなみちゃん、いらっしゃい!」
「こんにちは、美代子おばあちゃん」
守衛の人から連絡をもらったのだろう。玄関ホールに着くと、美代子おばあちゃんがそこで待っていてくれた。
「美代子おばあちゃん、具合はどう?」
私は美代子おばあちゃんを上から下まで眺めながら尋ねる。
大丈夫だからこそ退院できたのだと分かってはいるけど、つい心配してしまうのは、美代子おばあちゃんの容態が一時はすごく危なかったからだ。
手術予定日を迎える前に容態が悪化したため、緊急手術となってしまった。あの時は彰人さんと二人で万が一のことを覚悟したくらいだ。
幸いお医者さんの腕がよかったのか、手術は無事に成功した。手術の間、体力が持つかどうか不安だったけど、おばあちゃんは持ちこたえた。
『まなみちゃんと彰人さんの結婚式を見届けてからこっちに来いっていう、主人と眞子ちゃんからのお達しなのかもしれないわね』
手術後、集中治療室で目を覚ました美代子おばあちゃんは、駆けつけた私と彰人さんの顔を見てそう言った。
私は安堵のあまり泣き出し、彰人さんはそんな私を慰めるのに忙しくて、美代子おばあちゃんそっちのけになってしまったことは記憶に新しい。
あの後、美代子おばあちゃんは順調に回復し、今は自宅で療養している。
本当はもっと早くお見舞いに来たかったけど、会社が決算月ということもあって、私はともかく彰人さんがすごく忙しかったのだ。その忙しさが落ち着いた今週、ようやくお見舞いに来れたのである。
「術後の経過はいいし、リハビリも順調よ。まなみちゃんには心配かけたけど、もう大丈夫」
おばあちゃんはそう言った後、悪戯っぽく笑った。
「実はね、今お客様がいらしてるのよ」
「えっ? じゃあ、私たちはお邪魔なんじゃ……」
何しろ彰人さんはおばあちゃんにとって身内なのだから、お客様の方を優先するのは当たり前だ。
「いいの、まなみちゃん。邪魔だなんてことは絶対にないから、ぜひ一緒に来てちょうだい」
美代子おばあちゃんがなんだかすごく楽しそうで、それでいて何かたくらんでいるような気もして、私と彰人さんは顔を見合わせる。
誰だろう? 思いつくのは三条家の誰かなんだけど……
美代子おばあちゃんの後について応接室に向かいながら、私はアレコレ予想していた。けれど、そこにいたのは予想外の人だった。
「あら、まなみじゃないの」
「すごい偶然だね」
私は言葉もなくその場に立ちつくし、それから叫んだ。
「お、お父さん!? お母さん!?」
そう、そこにいたのは私の両親だったのだ……!
ソファに二人並んで座り、こちらを向いてにこにこ笑っている。
「え? なんで?」
二人も今日お見舞いに来る予定だったなんて、私は聞いてない。まぁ、それを言ったら私の方だって何も言わなかったけど。
「まなみが今日はうちに来ないって言うから、ちょうど時間も空いていたし、お見舞いに行こうかって話になったの。まさか、まなみたちも来るとは思わなかったし」
「そ、そう……」
こんな偶然あるんだ……と思っていたら、彰人さんがふぅとため息をつきながら、美代子おばあちゃんに言った。
「お祖母さん。知っていて、わざとぶつけましたね?」
私は、あっと思った。私とお母さんたちがお互いの予定を知らなくても、当然、美代子おばあちゃんは知っていたわけで……。きっと、わざと私たちが来る時間帯を見計らって、お母さんたちに時間を指定したに違いない。
美代子おばあちゃんは、あっけらかんと笑った。
「だって彰人さんったら、まだ二人に挨拶もしてないって言うじゃない? これは私が一肌脱がないとと思って!」
挨拶というのは、私の両親と彰人さんの顔合わせのことだろう。
でも、それは美代子おばあちゃんの手術のことがあってバタバタしていたし、その後は決算期に入って彰人さんだけじゃなくうちのお父さんも週末返上で仕事をしていたから、都合がつかなかっただけなのだ。
私はそう言おうとした。けれどその前に、お母さんが口を開く。
「それは私たちが、おばさまの手術のことが一段落してからにしましょうって言ったからなのよ。その後もうちの人の仕事が忙しくて都合がつかなかっただけ」
「そうですよ、美代子おばさん。彼のせいじゃありません」
お父さんも彰人さんをやんわりとフォローする。それでも美代子おばあちゃんは不満顔だった。
そんな美代子おばあちゃんに呆れたように、彰人さんは片眉を上げていた。そして、不意に一歩前に出て、お父さんたちに軽く頭を下げる。
「お久しぶりです。ご挨拶が遅れて申し訳ありません。今日はわざわざ祖母のお見舞いにお越しいただき、まことにありがとうございました」
顔を上げた彰人さんに、お父さんが親しみのこもった笑みを向ける。
「うん、久しぶりだね」
そう、お父さんと彰人さんは面識がある。私が実家から今のマンションに引っ越す時に、彰人さんが職場のみんなと一緒に手伝いに来てくれたからだ。その時、妙に和気あいあいと会話をしていた二人の姿は記憶に新しい。
たった半年前のことだけど、あれから色々あって……まさか彰人さんとこうして恋人同士になったり、婚約したりするとは夢にも思っていなかった。
「私のことは覚えているかしら、彰人君?」
お母さんが身を乗り出して、微笑みながら尋ねる。
「あなたが小さい頃に会ったきりだけど、お話ししたこともあるのよ?」
それを聞いて、彰人さんの顔に微笑が浮かんだ。
「もちろん覚えてますよ、お久しぶりです。確か……祖母に連れられて三条邸に行った時にお会いしましたよね?」
それを聞いて、お母さんは破顔した。
「まぁ、よく覚えているわね! そうよ、その時に会ったの。ついでに言うと、あの時あなたが子守をしてくれたのは、うちの娘よ」
いきなり指を差されて私は面食らった。
「は?」
「やっぱりそうでしたか」
彰人さんの顔に苦笑が浮かぶ。
「そうじゃないかなとは思っていたんですが、何しろみんな似たような名前なので、あまり自信がなかったんですよ」
「は?」
彰人さんが何を言っているのかさっぱり分からない私は、みんなの顔を見回しながら首を捻る。美代子おばあちゃんはにこにこ笑っているし、お父さんも笑みを浮かべているから、意味が分からないのは私だけのようだ。
「そうよね、みんな『ま』から始まる名前ですものね」
お母さんはクスクス笑った後、話が見えなくて一人顔をしかめている私にこう言った。
「あのね、彰人君がまだ小さい頃、おばさまに連れられて三条邸に来たことがあるの。その時に、あなたは彰人君と出会っているのよ」
「え?」
私と彰人さんが三条邸で出会っている……?
「もっとも、あなたがまだ赤ん坊の時の話だけど」
「赤ん坊……」
なるほど、それは覚えていないわけだ。
お母さんはその時のことを思い出したのか、またクスクス笑っている。
「おばさまやうちの母には、透君と彰人君を仲良くさせたいっていう思惑があったみたい。でも初対面の子どもを二人きりにしてもどうなのかってことで、まなみを連れてくるように言われたの。瀬尾のお姉さん夫婦のところの真綾ちゃんまで呼ばれて、小さい子たちの世話を透君と彰人君の二人に押し付けたのよ。そうしたら、きっと協力して面倒を見てくれると思って」
「そ、それは……」
従兄の透兄さんと彰人さんは似たような経歴を持ちながら、まるで水と油みたいな関係だ。お互いを認めているくせに、相手をよく思っていない。いくら小さかったからって、この二人が仲良くなれたとは思えなかった。
彰人さんが苦笑していることからしても、その結果は思わしくなかったに違いない。
案の定、お母さんはこう言った。
「まぁ、全然仲良くなれなかったんだけどね。でも、その時に彰人君が主に面倒を見てくれたのがあなたなのよ、まなみ。目を覚ましたあなたを、あやして寝かしつけてくれたの。今から思うと、あの時が初対面じゃないかしら?」
「……全然覚えてない」
初対面は十年前のパーティーの時だと思っていたけれど、本当はもっと前に出会っていたなんて。
「まなみはまだ小さかったからね」
そう言って、彰人さんが私の頭を撫でる。
覚えてないから現実味がないし、正直本当なの? って感じだけど、私がこの話を聞いて少しホッとしたのは事実だ。
だって彰人さんとの初対面が、パーティーであのおばさんに泣かされた時だっていうのは、あまり嬉しくない。あの出来事は彰人さんとの大事な繋がりだし、共通の記憶だっていうのも確かだけど、あれが初対面じゃなければよかったのにって、ちょっと思っていたのだ。
「そっかぁ。もっと小さい時に出会っていたんですね、私たち。……よかった」
私は思わず笑顔になった。すると彰人さんも笑顔になる。
「そうだね」
そんな私たちを他の三人が微笑ましげに見つめていた。
* * *
お手伝いさんが、私と彰人さんのためにお茶とお菓子を持ってきてくれたので、私たちはお母さんたちの横のソファに並んで腰を下ろした。
そのまま五人で雑談をする。内容は昔の話をはじめとして、最近の経済の話とか、会社での仕事の話とかだ。まぁ、仕事の話は主にお父さんと彰人さんの間で交わされてるんだけど。
そうして、最初に運んでもらったコーヒーがすっかりぬるくなった頃。美代子おばあちゃんが、いきなり胸の前で両手をパンと合わせた。
「そうだわ。まなみちゃんに見せたいものがあるの!」
「え?」
「次にまなみちゃんがこの家に来たら、絶対に見せようと思っていたのよ。それを果たさないと死んでも死に切れないわ」
そう言って立ち上がった美代子おばあちゃんに、私は目を丸くする。
「美代子おばあちゃん?」
「美代子おばさま?」
私と同じく怪訝そうに尋ねたお母さんに、美代子おばあちゃんはにっこり笑って答えた。
「七緒さんのベールよ」
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