4番目の許婚候補

富樫 聖夜

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1巻

1-3

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 ――去年の舞ちゃんの家出騒動。
 許婚いいなずけ候補になるかも、なんて伯父さんに告げられたのが発端のアレ。


 経過を思いっきり端折はしょると、舞ちゃんの居所はすぐに見つかった。伯父さんの予想通り、大学のお友達のところにいたのだ。
 だけど、本当の騒動になったのはその後の出来事だった。
 舞ちゃんは「好きでもない人とは結婚したくありませんから。就職して一人で生活していくつもりです」と、迎えにきた伯父さんと兄である透兄さんに宣言したのだ。
 許婚云々うんぬんの話を聞かされる前から就職しようと決心していたらしく、内緒でこっそり経理の専門学校に通って資格まで取っていたという。
 これを聞いて、伯父さんとおじいちゃんは大いに慌てた。結婚したくないというのもそうだけど、家を出て就職して一人で生活するなんておじいちゃんたちにしてみれば青天の霹靂へきれきだっただろう。
 でも舞ちゃんの決心は固くて、何日もモメたらしい。
 結局、透兄さんが折衷案せっちゅうあんを出した。
 つまり「結婚は今のところ保留。就職をするなら三条うち系列のところに」という条件を出したのだ。
 ところが、これにも舞ちゃんは反発した。

「コネではなくて自分の力で就職したいの。三条の会社では働きません」

 ……どこかで聞いたような台詞せりふだ……
 まぁ、そんなわけで半月くらい「三条の会社で働け」「嫌です。働きません」とモメていたそうだ。
 最終的にはもう一人の従兄弟いとこ瀬尾せお涼が間に入って、直系の家族よりは少しばかり遠い親戚が経営する瀬尾エンジニアリングに就職し、彼と彼の姉の真綾ちゃんがそれぞれ部屋を借りて住んでいる(持ち主はもちろん瀬尾家)マンションで舞ちゃんも暮らすという話に落ち着いた。
 家事初心者な舞ちゃんのために家政婦を派遣するというのも、この時決められたこと。そして週末は用事がない限り、必ず三条家に戻ってくるというのも条件に加えられた。
 まったく、どこまで過保護なんだろうか。舞ちゃんが一人暮らししている感じがしないっていうのも当然だ。
 セキュリティばっちりの瀬尾家所有のマンションじゃ、訪問客から何まで逐一ちくいち監視されているだろうことは想像にかたくない。
 そんな一人暮らしはゴメンだ。というか、もはやそれは一人暮らしじゃない。
 ……私の時は、絶対そんなことはさせないんだから。
 私はこっそり決意を新たにした。


「おまけに涼ってば、当然のような顔をして、私や舞ちゃんの部屋に入ってくるのよ」

 そう言って苦笑したのは真綾ちゃんだ。
 真綾ちゃんは実家の経営する瀬尾エンジニアリングで、父親でもある社長の秘書として働いている。
 思いっきりコネだけど、コネとは思えないくらい立派に働いているらしい。
 ハキハキしていて面倒見もいいので、一部の女性社員からはこっそり「真綾お姉様」と呼ばれているとか。ちなみにこれは舞ちゃんがこっそり教えてくれたこと。
 舞ちゃんは経理課で働いている。ただし、自分が瀬尾家と親戚関係にあることはオープンにしないで、だ。
 とはいえ、毎日の送り迎えは従兄弟いとこの涼がしているらしい。

「相変わらず過保護だよね、涼は。きっと舞ちゃんは電車で行くって言ったのに、あいつに押し切られたんでしょ」

 とは、真綾ちゃんの妹の真央ちゃんの弁。
 年子の弟だからか、真央ちゃんは涼に容赦ようしゃない。
 もっともそんな辛辣しんらつな態度にも、あの腹黒男はどこ吹く風のようだけど。
 私たち従姉妹いとこが集まると、必ず話題に上るのが透兄さんと涼の過保護ぶりについての悪口だ。
 なぜなら、おじいちゃん以上に私たち従姉妹に対して過保護なのは、従兄弟のその二人なのだから。それはもう過剰といえるほど。


「涼に文句を言ったら『ここの管理を頼まれてるのは僕だよ?』なんて澄ました顔して言うし、透よりタチ悪いよ。……もっとも、透だって同じマンションに住んでいたら、我が物顔で私の部屋に入ってくるに違いないけど」

 ため息をつきながら真綾ちゃんが愚痴る。
 同じマンションに住んでるっていっても、もちろん部屋は別々だ。けれどすべての部屋の合鍵をなぜか涼が持っており、姉弟、従姉弟いとことはいえ女性の部屋に平気で入ってくるというのだから、始末が悪い。
 従姉妹たちの何とも窮屈きゅうくつそうな一人暮らしの実態を聞き、私は深いため息をついた。

「私も一人暮らししようと思っているんだけど、絶対あの二人は反対するよね……」
「まなみちゃん、一人暮らしするの?」

 ため息混じりにつぶやいた私の言葉に食いついてきたのは真央ちゃん。多分、私と彼女だけが親元で暮らしているからだろう。

「そういえば、通勤時間が長いって言ってたもんね」
「そうなの。一時間半以上も通勤に時間をとられるより、一人暮らしした方がいいかなと思って。住宅手当も出るし」
「でも……さ」

 真綾ちゃんが言いにくそうに、口を開く。

「まなみちゃんは瀬尾や三条の世話にはなりたくないんだよね? それだと、ハードル高いよ……おそらく」

 高いハードル。
 それはもちろん、あの二人のこと。
 おじいちゃんは過保護で孫バカでも、一生懸命頼めば何とか折れてくれそうだけど、透兄さんと涼にはまるで通じない……だろうなぁ。

「まなみちゃんの一人暮らし……は、私も兄様と涼が反対すると思う」

 舞ちゃんまでもがそんなことを言う。それほど反対されるのは目に見えているということだ。
 でも負けるもんかっ。

「私も、もう成人した大人、社会人なんだもの。従兄弟いとこの許可がなくったって、一人暮らししたければします」

 勇ましく私が言った直後――


「却下」


 ハモッた男二人の声がダイニングに響き渡った。


   * * *


 その声に目を向けてみれば、ダイニングに透兄さんと涼が入ってきたところだった。
 三条コーポレーションの重役として、おじいちゃんと一緒に新年の挨拶を受けていた透兄さんはスーツ姿で、大学生の涼は正月らしからぬ至ってシンプルなセーターとスラックスという服装だ。
 顔とスタイルだけは良い二人なので、性格のことを考えなければ非常に目の保養になります。そう、性格のことを考えなければ。
 二人は私たちの座る六人掛けの丸テーブルにつかつかと近づき、同席の許可も取らずに空いている席に着いた。三条家の広いダイニングにはまだまだ空いているテーブルがいくらでもあるというのに、だ。
 透兄さんは席に着くやいなや、やれやれというようにネクタイを緩め、隣の席の真綾ちゃんのティーカップに手を伸ばし、勝手に飲んだ。

「ちょっと! 人の紅茶を飲まないでよ!」
「朝から新年の挨拶にいらしたお客さんの対応に追われてて、水分取る暇もなかったからのどが渇いてるんだ」
「だからって、なんで人のものを勝手に飲むの!?」
「紅茶が入るまで待つのが嫌だからに決まってるじゃないか」
「それくらい待てるでしょ!」
「待てないから、お前のを飲んでる」


 皆様どうですか、どう思いますか、この会話。
 お前何様のつもりだ、と思うのは私だけじゃないよね?
 傲慢ごうまん、自分勝手、自己中。
 いわゆる俺様――それが従兄弟いとこの三条透だ。


 透兄さんは舞ちゃんのお兄さんで、年は私より四つ上の二十六歳。
 三条グループの御曹司で、三条コーポレーションという会社の営業企画部課長として第一線でバリバリ働いている。
 会社では次期社長の名に恥じない……というか、それ以上の仕事の鬼として社員の尊敬を集めているらしい。ついでに女性社員の熱い視線も。
 一八〇センチを超える長身で、端整な顔立ち。決して声をあららげたりしないけど、従わずにはいられない声音。どんな時も冷静沈着。
 モテる要素満載な男だけど、身内にとっては単なる俺様野郎だ。
 身内――とくに私たち従姉妹いとこに対してその俺様ぶりは顕著けんちょで、自分に従うのは当然と思っているふしがある。っていうか絶対思ってる。
 首を絞めてやりたいという顔で自分をにらみつける真綾ちゃんを完璧に無視し、透兄さんは今度は真央ちゃんを見て説教を始めた。

「真央、この間外泊したそうじゃないか」
「うっ。そ、それは、冬コミのコピー誌を作るために仕方なく友達の家に泊まっただけで……」
「お前の家でやればいいじゃないか」
「うちだと、みんな広くて落ち着かないって言うんだもん。それに外泊のことだって、ちゃんとお母さんに連絡したよ。文句言われる筋合いないと思う」
「俺は外泊について聞いてない。……前にも言ったはずだ。外泊する場合は俺か涼に連絡しろと」
「い、言ってたけど……。っていうか、どうして外泊するのに透お兄ちゃんと涼の許可が必要なのよ!」

 それは従姉妹いとこ全員が思っていることです、真央ちゃん。
 だけど透兄さんはいつものように聞く耳を持たなかった。

「口答えするな」
「……うー。ハイ」

 いかにも嫌そうな顔をして返事をし、真央ちゃんは自分の外泊を親から聞いて透兄さんにチクッた犯人をキッと睨みつけた。
 だけど、睨まれた涼はどこ吹く風で、柔和な笑みを姉に向けているだけだった。
 ちなみに、私より一歳年下の真央ちゃんはいわゆる腐女子と言われる系統の女の子。
 顔は可愛くて美人で、きっと大学でモテてるんだろうに、興味あるのは男×女の恋愛ではなくて、男×男の恋愛という禁断の世界。つまり、BL。
 友達と同人誌も作っていて、年に二回夏と冬にはイベントに参加してる。
 真央ちゃんが外泊のことで透兄さんにネチネチ言われている間に、そつなくお茶の準備を始めていた舞ちゃんが、三つのカップをお盆にのせてテーブルに戻ってきた。
 透兄さんは新たに自分の前に出された紅茶を一気に半分くらい飲み、ゆっくりとカップをソーサーに戻す。
 そのカチリという陶器がぶつかる音が、私にはまるで何かの合図のように聞こえた。


「さて、まなみ」

 透兄さんの切れ長の目が私を捕らえた。
 あー。次は私の番ですか……


「お前の一人暮らしは認めない」

 いきなり直球キター! 
 前置きもなく、私の意見を聞かず、いきなり自分の考えを押しつけるとはさすが俺様だ。


「俺と涼が選んだ物件でなら一人暮らししてもいいが、お前は三条や瀬尾の世話にはなりたくないんだろう?」
「絶対嫌」
「なら、一人暮らしも認めない」

 透兄さんは話はついたとばかりに、残った半分の紅茶を飲む。
 私はそれを反抗的な目で見つめた。 
 透兄さんたちが認めなくっても、勝手に一人暮らしするんだから。
 幸い、そこそこ良い給料もらっているし、住宅手当も出るから親元を離れても充分暮らしていける。
 お父さんとお母さんをしばらくの間、口止めして、部屋も三条と瀬尾系列の不動産を避ければ、一人暮らしが軌道にのるまで透兄さんたちにはバレないだろう。
 そうあれこれ考えてると、いきなり涼に呼びかけられた。

「まなみ」

 透兄さんからその隣に視線を移すと、笑顔の涼と目が合った。

「無駄だから」
「え?」
「僕たちに隠れて一人暮らし始めちゃえ、って思ってるでしょ? そんなの無理だから」

 ど、どうしてバレてんでしょうか、私が思ってたこと。
 涼は私の引きつった顔を笑顔のまましばらく見つめ、爆弾を落とした。

「部屋が見つかったとしても、その契約、三日以内につぶすよ。何度でも」

「ね? だから無駄でしょ?」と、にっこり笑う涼。でも目は笑ってない。
 その笑顔の向こうに黒いオーラが見えて、私は恐怖に青ざめた。
 見ると従姉妹いとこたち全員が、ドン引きした顔で涼を見つめている。
 そんな中、一人透兄さんだけが涼の言葉を肯定するようにうなずいていた。


 もうお分かりだろう。もう一人の従兄弟いとこ――瀬尾涼は腹黒野郎だ。


 涼は真綾ちゃんと真央ちゃんの弟で、私より二つ年下の二十歳。某有名大学の経営学部に通っている。
 瀬尾グループの跡取り息子で、真綾ちゃんによれば学生の身分でありながら、すでに会社の経営に参加しているらしい。
 身長は透兄さんよりちょっと低いくらい。天は二物を与えるのか、これまたくやしいくらいの美青年。
 顔立ちは透兄さんが精悍せいかんなのに対して、涼はもっと柔和な顔立ちをしている。物腰もずっと柔らかい。笑顔が素敵だと女性に大人気……らしい。お腹の中は真っ黒なのに。
 そして透兄さんの俺様同様、その腹黒さは私たち従姉妹に対して主に発揮されている。


「もう、どうしてそんなに私たちの私生活に口だすのよ!」

 私は恐怖から立ち直ると腹立たしさのあまり、過去に何十回、何百回繰り返してきた台詞せりふを叫んだ。
 だけど、返ってくる答えはいつも同じ。

「俺たちには、お前たち従姉妹を守る義務がある」
「そう。だから大人しく僕らに守られててね」

 だからその発想、おかしいってば。


 この調子で私たち従姉妹いとこに近付いてくる男もすべて排除してきた二人。その過保護ぶりは全員が二十歳を過ぎた今でも、付き合った男性も彼氏もいないという異常な状態を招いている。
 しかも、それを本人たちは異常と感じていないところがまた恐ろしい。
 この二人は私たちをどうしたいのだろうか。ゆくゆくは自分たちのお眼鏡にかなう男性でも紹介するつもりなのか、それとも一生未婚のままにしたいのか……?
 どっちかというと後者のような気がしないでもない。
 そういえば、主任との婚約話は、私たち従姉妹にきた初めての寿話なのだと改めて気付いた。
 今の時点では舞ちゃんが筆頭候補として挙げられているけど、本人が嫌がっている以上、話は他の人のところにいくかもしれない。
 聞いたことがなかったけど、舞ちゃん以外の他のみんなはどう思っているのだろうか。


「佐伯彰人氏のことだけど」

 と、いきなり私の心を読んだような話題が透兄さんの口から出て、ビクッとなった。ハッと顔を上げると、私を見ている透兄さんと目が合った。

「お前、同じ会社だろう? お前から見てどういう人物だ?」

 どうやら私に仁科主任の評判を聞きたいみたいだ。……というか全員の前で言わせたいのか。

「え、ええと……」

 チラッと舞ちゃんの顔を見ると、彼女は顔をこわばらせていた。
 他の面々は、どっちかというと興味がある顔をしている。
 これは、当たりさわりのないことを言うしかない感じ……

「い、いい人だよ。仕事できるし。仕事に関しては厳しいけど、それ以外は人当たり良い感じ。それで……ええとイケメンだから女性社員に人気がある」

 恋人をとっかえひっかえなのは言わないでおこう。うん。

「そういえば今度、主任から係長に昇進することが内定しているよ」
「そうか……」

 つぶやいてから、何を思ったのか黙り込む透兄さん。
 私はこれを機にさっき疑問に思ったことを聞いてみることにした。

「透兄さんは、この佐伯さんとの結婚話についてどう思ってるの?」
「気に入らない」

 サクッと言い捨てましたね。
 でもさすがの透兄さんにもどうにもならないことのようで、大きなため息をついて言った。

「じいさんにも何度も白紙に戻すように言っているが、頑固でな。どうあっても佐伯家と縁続きになりたいらしい。今まで聞いた話を総合すると、どうもばあさんの方が向こうの奥さんと仲良くて子供たち、後年では孫たちを結婚させたいと望んでいたようなんだ。で、ばあさん亡き今、じいさんがその夢をかなえてやろうと熱心になってる。間の悪いことに向こうの奥さんもここ何年か具合が悪いみたいで、息子の佐伯社長もうちの親父もその望みをかなえてやりたいとじいさんたちに協力的らしい。白紙に戻すのは難しい状況だ」

 そうか、急に許婚いいなずけの話が出たと思ったら、おばあちゃんがらみだったのか。
 納得と同時に、三条の外孫に過ぎない自分が許婚候補の一人にカウントされる理由も分かった。
 結婚させたかったのは三条と佐伯との縁を強固なものにしたいという理由ではなく、親類になりたいというおばあちゃんたちの希望のため。
 だから結婚する人には三条の名も佐伯の名も必要ない。ただ自分たちの血を引いていればいいのだ。

「こんな風に押しつけられるのは気に入らない。気に入らないが……ただ、家柄等を考えれば申し分のない相手だというのは認める。だから反対に聞きたい。お前たちはこの結婚話をどう思ってる?」

 そう言って透兄さんは舞ちゃんを見る。

「わ、私は前から言っているように、全然知らない人と結婚するなんて嫌です」
「真綾は?」
「私も押しつけられるのは嫌……かな。そもそも、その佐伯さんって人と会ったことないから判断できないんだけど」
「真央は?」
「お姉ちゃんと同じく、判断不能」
「それじゃ、唯一彰人氏を知っているまなみは?」

 だ・か・ら、どうして私だけそんな風に聞くのかな!
 私にこの結婚話を押しつけたいのか? それとも単なる意地悪なのか?
 と、とにかく、ここは慎重に答えねば。

「……結婚とか判断できるほど、仁科主任と親しいわけじゃないから分からない。そ、それに、私は一般庶民だから大会社の社長の奥さんとかにはなりたくない……です」

 これは紛れもない本音。私自身は庶民だけどセレブな親戚がいるおかげでそういった世界も垣間見てるからこそ、その中に入りたくないのだ。絶対に。

「そうか……」

 そう言ってまた透兄さんは黙り込んだ。
 かわりに涼が口を挟む。

「その理由じゃ白紙に戻すのは難しいね。人となりを知らないから嫌だというなら、会ってみろとか付き合ってみろと言われるだけ。そもそも舞がダメでもこっちには他に三人も候補がいるから断りにくいし」

 そこまで言うと、涼はいきなり笑顔になった。綺麗な――だけど、背後に黒いものを背負った笑顔に。

「一番いいのは、佐伯彰人氏がよそで女性をはらませて責任とって結婚とかしてくれることだよね。向こうは孫一人しかいないわけだから、三条の顔をつぶさないでこの結婚話をなかったことにできる」

 孕ませて責任とってって……どこまで発想がよこしまなのでしょうか……
 この腹黒い台詞せりふに、またもや引き気味の女性陣。
 それにしてもこの発言。仁科主任がひっきりなしにいろんな女性とお付き合いしていることを知ってるのは確実だ。
 だけど残念ながら涼の腹黒い願望通りにはならないと思う。だって、そのあたり仁科主任はしっかりしてそうだもの。
 歴代の彼女の中には彼との結婚を望んで妊娠という手段を取ろうとした人もいるハズ。
 何しろ佐伯のうしろだてがなくても美味しい物件だもんね、主任は。
 でも成功したためしはない。

「まぁ、そうなってくれればおんの字だけどな。……とにかく、引き続きじいさんと親父を説得してみるよ」

 透兄さんがそう締めくくって、この話題は終わった。
 そうこうしている間に透兄さんと涼がおじいちゃんに呼ばれて席を外し、私たち四人で盛大に従兄弟いとこどもの悪口を言っているうちに帰る時間になった。


 みんなと別れの挨拶を交わした後、おじいちゃん付きの運転手さんが車で家まで送ってくれるというので、玄関先で車が来るのを待っていると、おじいちゃんの所から帰ってきた透兄さんと涼に声をかけられた。

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