33 / 50
兄弟酒場 前編
母
しおりを挟む
翌日の昼過ぎに太助は母親が入院している病院を訪れた。
「母ちゃん、どうだ気分は」太助はベッドに横たわる母親に声を掛けた。
「あぁ、すっかり楽になったよ、それより太助、仕込みはいいのかい?早く仕事に戻んなよ!」
「母ちゃん、今日は日曜日で定休日だろ!」
「あっ、そうだっけ?」
「母ちゃん、それに何かあっても源さんがいるから大丈夫だよ・・・源さんは明日も仕事休んで母ちゃんの側に居ろって言ってくれているし・・・」
「何言ってるんだ、源さんだけじゃ大変だろうよ、私は大丈夫だから店を疎かにしちゃいけないよ!」
「店の事は母ちゃんの様子次第で明日考えるから・・・」
「お話中にごめんなさい、東さんの息子さん、先生がお話しがあるので、診察室まで来られますか?」看護師がやって来て話し掛けて来た。
「は、はい・・・じゃあ母ちゃんちょっと行ってくるから・・・」太助は看護師に連れられてナースステーションの横にある診察室に入った。
「東さん、お呼びだてしましてすみません、どうぞお掛けください」男の医師が優しく太助に話し掛けてきた。
太助は椅子に座った。
「お母様にはまだお話ししていないのですけど・・・お母様の状態なんですが、ちょっとこの画像を見てください・・・この部分におそらく腫瘍が見られます。
「は、はい・・・」太助は緊張しながら医師からの話を聞いた。
「おそらく、お母様はかなり痛かったのではないかと思います・・・それで手術が必要なんですが、ただ・・・」医師は声のトーンが下がった。
「ただ・・・?先生、な、何ですか?」
「ただ、開けてみないと何とも言えないのですが、手術をしてもそんなに長くはない可能性もあります・・・」
「えぇぇっ?先生、長くないって、ど、どれくらいなんですか?!それに腫瘍ってもしかして癌のことですか?!」太助は動揺した。
「東さん、おっしゃる通り腫瘍は癌の事です・・・長くないのは、まだ手術してみないとわからないですけど・・・ただ血液検査と画像からだとあんまり良い状態ではないと言う事です・・・」医師はゆっくりと説明した。
太助は動揺し過ぎて医師の説明が頭に入って来なくなっていた。
ただ、癌である事と余命宣告された事だけは心に残った。
「東さん、東さん?大丈夫ですか?!」ボーっとなった太助に医師は声を掛けた。
「あっ、はい、先生・・・すみません・・・」太助は我に返った。
「東さん、手術は急いだ方がいいです・・・とにかく家族で話し合ってください」
太助は診察室を出て、直ぐには母の居る病室には戻らず、待合室で缶コーヒーを買った。
缶コーヒーを開けて、ボーっとする太助。
「どうしよう・・・俺一人じゃ決められない、源さんに相談しないと・・・健作にも・・・」
時間を費やし気持ちを落ち着けてから太助は病室へと向かった。
「太助、先生の話はどうだったんだい?」病室のベッドに横たわる母親は太助に声を掛けた。
「あぁ、た、大した事はないらしいよ・・・」
「太助・・・お前は昔からわかりやすいんだよ・・・もう長くはないんだろう?」
「何言ってるんだ母ちゃん!手術してみないとわからないって言ってたぞっ!あっ!口が滑った・・・」
「ほら、やっぱり・・・手術したって生きられるかわからないって事だろう?」
「母ちゃん・・・」
「あたしゃ手術は受けないからね!私の体だ!好きにさせてもらうよ!」
「母ちゃん、何言ってるんだよ!手術受けなきゃ駄目だろ!死んだらどうするんだよ!」
「死んだって生きたって私の勝手だろう!太助、あとこの事は健作には言わないでよ!あんな薄情な子に心配されたくないからね!」
太助は病院を後にした。
「本当は健作に心配してもらいたいんだろ・・・」母親の心中を勘ぐり、太助は歩きながら呟くのだった。
「母ちゃん、どうだ気分は」太助はベッドに横たわる母親に声を掛けた。
「あぁ、すっかり楽になったよ、それより太助、仕込みはいいのかい?早く仕事に戻んなよ!」
「母ちゃん、今日は日曜日で定休日だろ!」
「あっ、そうだっけ?」
「母ちゃん、それに何かあっても源さんがいるから大丈夫だよ・・・源さんは明日も仕事休んで母ちゃんの側に居ろって言ってくれているし・・・」
「何言ってるんだ、源さんだけじゃ大変だろうよ、私は大丈夫だから店を疎かにしちゃいけないよ!」
「店の事は母ちゃんの様子次第で明日考えるから・・・」
「お話中にごめんなさい、東さんの息子さん、先生がお話しがあるので、診察室まで来られますか?」看護師がやって来て話し掛けて来た。
「は、はい・・・じゃあ母ちゃんちょっと行ってくるから・・・」太助は看護師に連れられてナースステーションの横にある診察室に入った。
「東さん、お呼びだてしましてすみません、どうぞお掛けください」男の医師が優しく太助に話し掛けてきた。
太助は椅子に座った。
「お母様にはまだお話ししていないのですけど・・・お母様の状態なんですが、ちょっとこの画像を見てください・・・この部分におそらく腫瘍が見られます。
「は、はい・・・」太助は緊張しながら医師からの話を聞いた。
「おそらく、お母様はかなり痛かったのではないかと思います・・・それで手術が必要なんですが、ただ・・・」医師は声のトーンが下がった。
「ただ・・・?先生、な、何ですか?」
「ただ、開けてみないと何とも言えないのですが、手術をしてもそんなに長くはない可能性もあります・・・」
「えぇぇっ?先生、長くないって、ど、どれくらいなんですか?!それに腫瘍ってもしかして癌のことですか?!」太助は動揺した。
「東さん、おっしゃる通り腫瘍は癌の事です・・・長くないのは、まだ手術してみないとわからないですけど・・・ただ血液検査と画像からだとあんまり良い状態ではないと言う事です・・・」医師はゆっくりと説明した。
太助は動揺し過ぎて医師の説明が頭に入って来なくなっていた。
ただ、癌である事と余命宣告された事だけは心に残った。
「東さん、東さん?大丈夫ですか?!」ボーっとなった太助に医師は声を掛けた。
「あっ、はい、先生・・・すみません・・・」太助は我に返った。
「東さん、手術は急いだ方がいいです・・・とにかく家族で話し合ってください」
太助は診察室を出て、直ぐには母の居る病室には戻らず、待合室で缶コーヒーを買った。
缶コーヒーを開けて、ボーっとする太助。
「どうしよう・・・俺一人じゃ決められない、源さんに相談しないと・・・健作にも・・・」
時間を費やし気持ちを落ち着けてから太助は病室へと向かった。
「太助、先生の話はどうだったんだい?」病室のベッドに横たわる母親は太助に声を掛けた。
「あぁ、た、大した事はないらしいよ・・・」
「太助・・・お前は昔からわかりやすいんだよ・・・もう長くはないんだろう?」
「何言ってるんだ母ちゃん!手術してみないとわからないって言ってたぞっ!あっ!口が滑った・・・」
「ほら、やっぱり・・・手術したって生きられるかわからないって事だろう?」
「母ちゃん・・・」
「あたしゃ手術は受けないからね!私の体だ!好きにさせてもらうよ!」
「母ちゃん、何言ってるんだよ!手術受けなきゃ駄目だろ!死んだらどうするんだよ!」
「死んだって生きたって私の勝手だろう!太助、あとこの事は健作には言わないでよ!あんな薄情な子に心配されたくないからね!」
太助は病院を後にした。
「本当は健作に心配してもらいたいんだろ・・・」母親の心中を勘ぐり、太助は歩きながら呟くのだった。
10
お気に入りに追加
58
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる