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兄弟酒場 前編
屈折家族
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東太助は居酒屋濱衛門の店主である。
年齢は43歳、ちょっと小太りのがちむち、短髪で見る人がみたら直ぐにわかるイカにも系だ。
短く刈り上げた髪型や恰幅の良い体型は白い割烹着の見栄えが良く、清潔感が大事な飲食業には適していた。
居酒屋濱衛門は家族経営で太助の両親が三十年前に開店させた店である。
三年前に急に父親が他界した為に現在は太助が後を継ぎ、母親と古くからいる従業員の源さんとで経営をしていた。
太助には二歳違いの弟がいて名前は健作と言った。
太助と健作は小学生くらいの頃は仲が良かったが、大きくなるに連れて次第に仲が悪くなった。
仲が悪くなった理由は兄弟の出来の違いにあると太助は思っていた。
小さい頃の太助は何をやっても駄目な子だった。
学校の成績は悪く、かと言って運動が出来る訳でもなかった。
太助は中学卒業後、働こうと考えていたが高校くらい行っておけと父親の勧めで学力が一番低い学校にかろうじて入学した。
太助は将来なんて考えず勉強はろくにせずアルバイトや友人との遊びに明け暮れ、朝帰りなども日常茶飯事であった。
太助は高校卒業後に建設会社に就職した。
主には現場仕事で、肉体労働で鍛えられ今の体つきになった。
太助は現場仕事では力を発揮し、会社では高く評価され現場監督を任されるまでになっていた。
その頃の太助は仲間からの信頼は厚く、後輩の面倒見も良い兄貴に成長していたのだ。
それなりに順風満帆になった頃、両親が年老いて、実家の居酒屋営業がキツくなっていた。
仕方なく太助は会社を辞めて居酒屋濱衛門で働くようになった。
一方で、弟の健作は常に学校の成績はクラスで1番、公立の進学高校から名門の大学に進学し外資系保険会社に就職した。
その後は名門私立女子大卒の名家のお嬢様と結婚し、タワマンに住み子どもは二人、いずれも私立の名門小学校と中学校に通わせていた。
健作は世間一般に言うエリートだった。
全く生き方の違う二人の兄弟に、母親の接し方が兄弟で全く違っていた。
出来の悪い兄貴の太助はいつも些細な事で怒られて、弟の健作はいつも褒められ可愛がられていた。
そんな母親の兄弟差別を父は黙って見ていた。
太助が思う父は余計な話は一切しない寡黙な人だった。
因果な事に弟の健作は結婚後、嫁の実家には頻繁に行くようだがウチの実家にはほとんど帰らず、帰って来ても家族では来ずに健作一人で日帰りで来る程度だった。
結局、両親の元には出来の悪い太助が残り一緒に暮らす事になった。
「あんなに可愛がってやったのに・・・嫁の尻に敷かれちまって情けない・・・」母親は健作に対して口癖になっていた。
「何言ってるんだよ、俺とは真逆で母ちゃんが甘やかすから悪いんだろ!」
太助と母親の日常茶飯事のやり取りである。
母親は健作に期待をしていたのだろうと太助は思っていた。
出来の悪い長男太助より、次男の健作を手塩にかけておけば老後も良く面倒を見て貰えるみたいな心情だったのだろうと太助も良くわかっていた。
しかし、それは今だからわかる事で、小さい頃の太助は両親の兄弟に対しての差別対応が面白くなかった。
「しかし、太助、お前はいつになったら結婚するんだい?早く孫の顔を見せておくれよ!健作の子どもたちなんかウチに寄り付きもしないんだからさ・・・」こう言ったのもやっぱり母親の口癖だった。
「母ちゃん、こればっかりは縁なんだからしょうがねぇだろ!こうやって出来の悪い息子だって今面倒見てやってるんだから少しは感謝しろよな!」
「わたしゃ面倒みろなんて頼んだ覚えはないよ!お前が勝手に家に戻ってきたんじゃないのかい!」母親は笑いながら話す。
母は頑固で気が強かった。
太助と母親との間で起こる日常のやり取りは漫才のような掛け合いになってしまう。
今になってとりあえず仲が良い母親と太助だったが太助には懸念があった。
母親は言わないが最近母親の体調があまり良くないようなのだ。
太助は母親に店には出ずに休むように言うが母親は全く言う事を聞かなかった。
「どうしてウチの家族はこうも頑固なのか・・・」太助は常日頃思うのだった。
年齢は43歳、ちょっと小太りのがちむち、短髪で見る人がみたら直ぐにわかるイカにも系だ。
短く刈り上げた髪型や恰幅の良い体型は白い割烹着の見栄えが良く、清潔感が大事な飲食業には適していた。
居酒屋濱衛門は家族経営で太助の両親が三十年前に開店させた店である。
三年前に急に父親が他界した為に現在は太助が後を継ぎ、母親と古くからいる従業員の源さんとで経営をしていた。
太助には二歳違いの弟がいて名前は健作と言った。
太助と健作は小学生くらいの頃は仲が良かったが、大きくなるに連れて次第に仲が悪くなった。
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小さい頃の太助は何をやっても駄目な子だった。
学校の成績は悪く、かと言って運動が出来る訳でもなかった。
太助は中学卒業後、働こうと考えていたが高校くらい行っておけと父親の勧めで学力が一番低い学校にかろうじて入学した。
太助は将来なんて考えず勉強はろくにせずアルバイトや友人との遊びに明け暮れ、朝帰りなども日常茶飯事であった。
太助は高校卒業後に建設会社に就職した。
主には現場仕事で、肉体労働で鍛えられ今の体つきになった。
太助は現場仕事では力を発揮し、会社では高く評価され現場監督を任されるまでになっていた。
その頃の太助は仲間からの信頼は厚く、後輩の面倒見も良い兄貴に成長していたのだ。
それなりに順風満帆になった頃、両親が年老いて、実家の居酒屋営業がキツくなっていた。
仕方なく太助は会社を辞めて居酒屋濱衛門で働くようになった。
一方で、弟の健作は常に学校の成績はクラスで1番、公立の進学高校から名門の大学に進学し外資系保険会社に就職した。
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そんな母親の兄弟差別を父は黙って見ていた。
太助が思う父は余計な話は一切しない寡黙な人だった。
因果な事に弟の健作は結婚後、嫁の実家には頻繁に行くようだがウチの実家にはほとんど帰らず、帰って来ても家族では来ずに健作一人で日帰りで来る程度だった。
結局、両親の元には出来の悪い太助が残り一緒に暮らす事になった。
「あんなに可愛がってやったのに・・・嫁の尻に敷かれちまって情けない・・・」母親は健作に対して口癖になっていた。
「何言ってるんだよ、俺とは真逆で母ちゃんが甘やかすから悪いんだろ!」
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母親は健作に期待をしていたのだろうと太助は思っていた。
出来の悪い長男太助より、次男の健作を手塩にかけておけば老後も良く面倒を見て貰えるみたいな心情だったのだろうと太助も良くわかっていた。
しかし、それは今だからわかる事で、小さい頃の太助は両親の兄弟に対しての差別対応が面白くなかった。
「しかし、太助、お前はいつになったら結婚するんだい?早く孫の顔を見せておくれよ!健作の子どもたちなんかウチに寄り付きもしないんだからさ・・・」こう言ったのもやっぱり母親の口癖だった。
「母ちゃん、こればっかりは縁なんだからしょうがねぇだろ!こうやって出来の悪い息子だって今面倒見てやってるんだから少しは感謝しろよな!」
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今になってとりあえず仲が良い母親と太助だったが太助には懸念があった。
母親は言わないが最近母親の体調があまり良くないようなのだ。
太助は母親に店には出ずに休むように言うが母親は全く言う事を聞かなかった。
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