尻凛 shiri 〜 がちむちゲイの短編小説集 〜

くまみ

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激闘の褌寒中水泳大会 前編

弱小水泳部

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 市場聡志いちばさとしは32歳、福島県百高町ひゃくたかまちにある県立百高高等学校で体育教師をしている。

 聡志は地元は東京だったが、教員採用で百高町に赴任した。

 聡志は体育大学での専攻は水泳。国体にも出場経験も持つ。

 得意な水泳を活かして部活動は水泳部の顧問をしている。

 聡志の心根は温かく、親しみやすい人柄で生徒には人気があった。

 ここまでの紹介ではどれだけスタイリッシュでカッコイイ教師と思いきや・・・

 聡志の体型はスイマーとは程遠い、腹も出て全体的に丸くなっていた。

 しいて言えば、・・・

 かつての聡志を知っている人間からはそのように呼ばれていた。

 聡志のその体型から、生徒からのあだ名は「浮きダルマ」

 面と向かって生徒から、「浮きダルマ」と呼ばれた事はないが、聡志は生徒が陰でそう呼んでいるのを知っていた。

 聡志が顧問をしている水泳部だが、大会では予選落ち、また部員が集まらない事を聡志は悩んでいた。

 女子水泳部はなし。部員は男子のみで現在三年生は2人、二年生は2人、1年生は3人いた。

 「部員が集まらないのは俺のせいなんだろうな・・・こんな体型の水泳部顧問はいないよな・・・」

 「他の運動部の顧問になった方がいいのだろうか・・・」

 実際に知らない人に言わせると、「柔道部の顧問ですか?」と良く間違えられていた。

 聡志は体育大学の教職課程で一通り運動競技は経験していたが、水泳以外の科目はギリギリで合格。つまり得意とは言い難い成績だった。

 だからと言って、体育大学出身で文系部活の顧問と言う訳にもいかないのは聡志は百も承知だった。

 「俺が出来るのは水泳くらいだし・・・それも駄目になっちゃって、あぁもう情けない・・・」

 聡志は反省する一方で食欲は激しく旺盛だった。

 つまりは反省したって、痩せる気配はみじんも感じられなかった。 

 しかしながら部員が集まらない理由は実際は聡志のせいかどうかはわからない・・・

 単純に今時の若者は、いちいちパンツを
履き替えて、著しく肌を露出するのが嫌だとか・・・

 過疎化の進んだ地域にある県立高校なので、そもそも生徒数も少ないこと・・・

 プールは屋内ではなく、屋外で温水設備はなしなど、様々な理由が考えられた。

 実際にプールが使えるのは夏のシーズンだけで、冬はプールは凍ってしまう程の寒さで当然使えない。

 仕方なく夏以外の時期はランニングや筋トレ、週に一度温水設備のある隣り町にある町営プールに練習に行くくらいだった。

 当然、練習量は足りず、設備がある都会の公立高校や私立高校には勝てる訳もなかった。

 生徒たちの間では#夏しか活動しないと悪評もたっていた。

 おそらくこう部員が集まらない要因は、環境的な原因が大きいと聡志以外の周囲は思っていた。

 さてさて、今は1月で外は雪が積もっている。

 そして、今日は土曜日、授業は午前中で終わりで午後は部活動の時間だ。

 水泳部の練習は当然屋外プールは使えず、普段は校内の空きスペースで筋トレ、または構内のスロープと階段を用いてランニングをするのだが・・・

 土曜日は町営プールでの練習日だった。

 町営プールでの練習日には、聡志は自分のワンボックスカーに生徒たちを乗せて町営プールまで向かうのだ。

 三年生は既に引退、聡志は二年生と一年生の5人を引き連れて町営プールに向けて出発しようと職員玄関で準備をしていた。

 「先生、ちわっす!たまには俺も練習に連れて行ってくださいよ・・・」三年生の元部長の長田おさだが準備をしている聡志に声を掛けてきた。

 「何だ長田、どうした?進路は決まったのか?」

 「先生、東京にある父ちゃんの友達の店で働かせて貰える事になったんだよ・・・」

 「そうか、長田、就職決まったか!良かったなっ!」聡志は長田の手を握って喜んだ。

 「だから、たまには先生の丸い裸が見たくなったから練習に連れて行ってくださいよ・・・」長田は聡志の腹を摘み笑いながら言う。

 「お前ってやつは、教師の腹を気安く触るんじゃねぇ!」聡志は笑いながら長田の腹を掴み返した。
 

 
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