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第一章 馴染みの
家族 ③
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和也と茂は食卓につくと、長女と次女も自分の部屋から出てきた。
「またこんなに高カロリーな物ばかり用意して・・・茂兄ちゃんが来るとお母さんはいつもこうなのよね・・・」次女がテーブルに並ぶ唐揚げとフランクフルトとフライドポテトの盛り合わせを見て溜め息をつく。
「折角茂さんが来たんだからいいじゃない、ねぇお母さん、あんたは食べたくなきゃ食べなきゃいいだけでしょ!」長女は話す。
「そうよ、久しぶりに茂君が来たんだから、茂君にはどんどん食べてもらわないとね、さぁ茂君遠慮しないでね!」嫁は機嫌が良い。
女三人と、和也と茂の五人での食事が他愛のない会話から始まった。
段々と食事も酒も進み、長女が新たなる話題を切り出した。
「ねぇお父さん!ちょっとお願いがあるんだけど・・・」
「やっぱりな・・・嫁や娘達がやたらと機嫌が良かったりする時は何かがある・・・」和也は思った。
「な、何?お願いって・・・」和也は長女に恐る恐る尋ねた。
「来年成人式でしょ?それでね、振り袖が欲しいと思ってね!」
「あぁ、そうか・・・もう成人式か・・・早いものだ・・・そういやぁ女の子は振り袖着るんだっけ・・・」和也は思う。
「あなた、聞いてるの?振り袖欲しいって言ってるのよ、もしかして成人式来年だって言うのを忘れていたの?・・・」嫁は見透かしたかのように和也に言う・・・
「そ、そんな事はない!絶対にない!」和也は必死に弁解をする。
「それでね・・・ちょっと高いのよ・・・だからお願いな・・・」長女は手を合わせて頭を下げる。
「高いって、それで、いくらなんだ?・・・えっ?!そんなにするの?」和也は長女から振り袖の値段を聞いて驚いた。
「あなた、折角の娘の晴れ舞台なのよ!ちょっと高いけどいいじゃない・・・」嫁は長女の肩を持つ。
嫁と長女は始めから結託しているのは和也はわかっていた。
「誰に見せる訳じゃないだろ?どうせそんなに着るものじゃないし・・・」
「振り袖を買っちゃ駄目だと言っている訳じゃないんだ、ちょっと高過ぎるんじゃないねかって言っているだけだ!」和也は嫁と長女と食卓を囲み話し合いになった。
先日嫁と長女で振り袖を見に行って、確かにもっと安いのはあったが、長女と嫁が見立て、意見が一致した振り袖がその値段の振り袖だと聞かされた。
その後長女のお願いの仕草と嫁の説得の嵐は続き、最終的には次女の成人式にも着られると言う事で、和也は振り袖の購入を認めざる負えない状況となった。
長女と嫁はルンルンと嬉しそうな反面、次女はまたお下がりかとやや不満気だった。
食事は終わり、長女と嫁は食器の後片付け、次女は部屋に戻って勉強を始めた。
茂が帰ると言うので、和也は茂を近くまで送っていく事にした。と、言うよりは和也は茂に愚痴をこぼしたかったのだ。
「なぁ茂君、女ってのは何であんなに見栄っ張りな生き物なんだろうな・・・」
「和也さん、どうなんでしょう・・・僕には良くわからないです・・・」
「茂君、買うのはいいけどある程度予算を決めて手頃なのを買えと言っているだけなのに、何でそんなにわざわざ高いのを欲しがるのかが俺には理解できない!」
「どうせ着たって一回、次女が着たら二回、それで終わりじゃないか・・・そんなもんに金掛けて勿体無いじゃないか!」
和也の興奮は収まらなかった。
和也は途中コンビニに寄り、ビールを二本買い、茂と公園で飲む事を提案した。
「すまないね、茂君、突き合わせちゃって・・・」
「いえ、いつも和也さんにも奥さんにもお世話になっておりますので」
「俺はやっぱり納得が出来ない・・・」
「和也さん・・・そう言うのはきっと価値観の違いなんでしょうね・・・」
「茂君・・・そんなものなのか?俺には理解出来ない・・・」
「きっと奥さんにとって、手塩にかけた娘の成人式を納得がいくように祝いたい親心だと思うと、僕は何となく理解出来るますけど・・・」
「俺だって、娘の成人式は祝いたいさっ!」
「和也さん、本当ですか?実は忘れていたんじゃないですか?さっきの食卓での様子だと、きっと奥さんもそう思ったと思いますよ」
「いや、そうじゃない・・・忘れてたいた訳じゃなくて・・・成人式はもちろん覚えていたけど、着物を買うとは思っても見なかったんで・・・」
「和也さん、着物って言うか振り袖は和也さんの中では買わないつもりだったんですか?」
「あぁ、そんなのレンタルとかあるだろう?適当に探して写真撮ってでいいじゃないか・・・」
「『適当に探して』って・・・あ~やっぱり、最初から奥さんと和也さんでは温度差があったんですね」
和也はハッとした・・・
「和也さんは、和也さんはきっと奥さんほど娘さんに関心がないんですよ・・・」
「茂君・・・.そ、そんな事はない・・・俺だって娘は大事だと思っている・・・」
「奥さんだってしっかりと働いているし、共働きでそこそこ余裕があるのを娘さんだってわかっているから甘えてくるんじゃないですか?」茂は理路整然と述べた。
「いや、余裕なんてない!娘たちの学費だって、家の住宅ローンだって、車のローンだって・・・うちの家計は火の車だっ!」
「そうですか?そうは見えないですけど、相模家は余裕あるように見えます・・・」
「茂君に何がわかるんだっ!茂君も結婚して家庭を持って、子どもが出来てから言えよ!だいたいいつもわかった風な口振りでっ!何様何だっ!」和也は興奮して茂につい言ってしまった。
茂は和也のあまりの勢いにキョトンとしてしまった。
「『しまった・・・』し、茂君・・・」
「和也さん、僕が言い過ぎました・・・少し頭を冷やさないと・・・」
「し、茂君・・・ご、ごめん・・・」
「和也さん、僕はゲイで相方もいるし、和也さんみたいに器用じゃないから女も男も何て出来ないし・・・今の日本では制度的に結婚は出来ないし、子どもを持つ事も出来ないと思います・・・」
「和也さん、今日はご馳走様でした・・・ではお休みなさい・・・」茂は公園のベンチからスクっと立ち上がり、一礼し帰って行った。
「しまった・・・俺は茂君に何て事を言っちまったんだ・・・俺から誘っておいて・・・」和也は自責と後悔の念に駆られるのだった。
「またこんなに高カロリーな物ばかり用意して・・・茂兄ちゃんが来るとお母さんはいつもこうなのよね・・・」次女がテーブルに並ぶ唐揚げとフランクフルトとフライドポテトの盛り合わせを見て溜め息をつく。
「折角茂さんが来たんだからいいじゃない、ねぇお母さん、あんたは食べたくなきゃ食べなきゃいいだけでしょ!」長女は話す。
「そうよ、久しぶりに茂君が来たんだから、茂君にはどんどん食べてもらわないとね、さぁ茂君遠慮しないでね!」嫁は機嫌が良い。
女三人と、和也と茂の五人での食事が他愛のない会話から始まった。
段々と食事も酒も進み、長女が新たなる話題を切り出した。
「ねぇお父さん!ちょっとお願いがあるんだけど・・・」
「やっぱりな・・・嫁や娘達がやたらと機嫌が良かったりする時は何かがある・・・」和也は思った。
「な、何?お願いって・・・」和也は長女に恐る恐る尋ねた。
「来年成人式でしょ?それでね、振り袖が欲しいと思ってね!」
「あぁ、そうか・・・もう成人式か・・・早いものだ・・・そういやぁ女の子は振り袖着るんだっけ・・・」和也は思う。
「あなた、聞いてるの?振り袖欲しいって言ってるのよ、もしかして成人式来年だって言うのを忘れていたの?・・・」嫁は見透かしたかのように和也に言う・・・
「そ、そんな事はない!絶対にない!」和也は必死に弁解をする。
「それでね・・・ちょっと高いのよ・・・だからお願いな・・・」長女は手を合わせて頭を下げる。
「高いって、それで、いくらなんだ?・・・えっ?!そんなにするの?」和也は長女から振り袖の値段を聞いて驚いた。
「あなた、折角の娘の晴れ舞台なのよ!ちょっと高いけどいいじゃない・・・」嫁は長女の肩を持つ。
嫁と長女は始めから結託しているのは和也はわかっていた。
「誰に見せる訳じゃないだろ?どうせそんなに着るものじゃないし・・・」
「振り袖を買っちゃ駄目だと言っている訳じゃないんだ、ちょっと高過ぎるんじゃないねかって言っているだけだ!」和也は嫁と長女と食卓を囲み話し合いになった。
先日嫁と長女で振り袖を見に行って、確かにもっと安いのはあったが、長女と嫁が見立て、意見が一致した振り袖がその値段の振り袖だと聞かされた。
その後長女のお願いの仕草と嫁の説得の嵐は続き、最終的には次女の成人式にも着られると言う事で、和也は振り袖の購入を認めざる負えない状況となった。
長女と嫁はルンルンと嬉しそうな反面、次女はまたお下がりかとやや不満気だった。
食事は終わり、長女と嫁は食器の後片付け、次女は部屋に戻って勉強を始めた。
茂が帰ると言うので、和也は茂を近くまで送っていく事にした。と、言うよりは和也は茂に愚痴をこぼしたかったのだ。
「なぁ茂君、女ってのは何であんなに見栄っ張りな生き物なんだろうな・・・」
「和也さん、どうなんでしょう・・・僕には良くわからないです・・・」
「茂君、買うのはいいけどある程度予算を決めて手頃なのを買えと言っているだけなのに、何でそんなにわざわざ高いのを欲しがるのかが俺には理解できない!」
「どうせ着たって一回、次女が着たら二回、それで終わりじゃないか・・・そんなもんに金掛けて勿体無いじゃないか!」
和也の興奮は収まらなかった。
和也は途中コンビニに寄り、ビールを二本買い、茂と公園で飲む事を提案した。
「すまないね、茂君、突き合わせちゃって・・・」
「いえ、いつも和也さんにも奥さんにもお世話になっておりますので」
「俺はやっぱり納得が出来ない・・・」
「和也さん・・・そう言うのはきっと価値観の違いなんでしょうね・・・」
「茂君・・・そんなものなのか?俺には理解出来ない・・・」
「きっと奥さんにとって、手塩にかけた娘の成人式を納得がいくように祝いたい親心だと思うと、僕は何となく理解出来るますけど・・・」
「俺だって、娘の成人式は祝いたいさっ!」
「和也さん、本当ですか?実は忘れていたんじゃないですか?さっきの食卓での様子だと、きっと奥さんもそう思ったと思いますよ」
「いや、そうじゃない・・・忘れてたいた訳じゃなくて・・・成人式はもちろん覚えていたけど、着物を買うとは思っても見なかったんで・・・」
「和也さん、着物って言うか振り袖は和也さんの中では買わないつもりだったんですか?」
「あぁ、そんなのレンタルとかあるだろう?適当に探して写真撮ってでいいじゃないか・・・」
「『適当に探して』って・・・あ~やっぱり、最初から奥さんと和也さんでは温度差があったんですね」
和也はハッとした・・・
「和也さんは、和也さんはきっと奥さんほど娘さんに関心がないんですよ・・・」
「茂君・・・.そ、そんな事はない・・・俺だって娘は大事だと思っている・・・」
「奥さんだってしっかりと働いているし、共働きでそこそこ余裕があるのを娘さんだってわかっているから甘えてくるんじゃないですか?」茂は理路整然と述べた。
「いや、余裕なんてない!娘たちの学費だって、家の住宅ローンだって、車のローンだって・・・うちの家計は火の車だっ!」
「そうですか?そうは見えないですけど、相模家は余裕あるように見えます・・・」
「茂君に何がわかるんだっ!茂君も結婚して家庭を持って、子どもが出来てから言えよ!だいたいいつもわかった風な口振りでっ!何様何だっ!」和也は興奮して茂につい言ってしまった。
茂は和也のあまりの勢いにキョトンとしてしまった。
「『しまった・・・』し、茂君・・・」
「和也さん、僕が言い過ぎました・・・少し頭を冷やさないと・・・」
「し、茂君・・・ご、ごめん・・・」
「和也さん、僕はゲイで相方もいるし、和也さんみたいに器用じゃないから女も男も何て出来ないし・・・今の日本では制度的に結婚は出来ないし、子どもを持つ事も出来ないと思います・・・」
「和也さん、今日はご馳走様でした・・・ではお休みなさい・・・」茂は公園のベンチからスクっと立ち上がり、一礼し帰って行った。
「しまった・・・俺は茂君に何て事を言っちまったんだ・・・俺から誘っておいて・・・」和也は自責と後悔の念に駆られるのだった。
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