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46 ユルの変化
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「お、お前、何のつもりだ!」
狼狽したユルが体を硬直させる。正直に話すと怒られそうだから、このピンチを乗り切るための詭弁を探そう。
私は目を閉じ、優しいお嬢様が言いそうな文言を、頭の中にある用語集から引っ張り出した。
「えーと。僭越ながら、あなたへの抱擁を、お母さまの代わりにさせていただけますか? せめて、今だけでも、嫌なことはお忘れください」
主に、私のしでかしたことを記憶から消して!
その時、ヒュッと空気が動くのを感じた。目を開けると、二人の闇がするすると交わり合い、ものすごい勢いで霧散していく。それに伴って、下から吹き上げるような風が生まれ、服や髪を揺らす。
すごい。
禍を転じて福となすとは、こんな感じだろうか。理由は分からないが、昇華するスピードが速い。解呪が進んでいくうちに体調が良くなり、心も晴れやかになるのを感じた。
頭がふわふわする。
どれだけ負荷がかかっていたのか、今なら分かる。若くて体力のある私でもキツイのだから、中年のユルには負担が大きかっただろう。気の毒にと、心から同情する。
「こんな重荷を背負って、あなたは生きていたのですか」
ため息とともに、本音がこぼれ落ちた。
「……分かるのか?」
「はい。同じような呪いをかけられていたそうですよ、私たち。ふふふ、おかしな仲間ですね」
「はは、俺以外にもいたのか。だが、……っ!」
「ユルさん?」
様子がおかしい。
呪いを解いたら終わりではないのか。
「ぐっ! あっ!」
ユルが悶えた拍子にバランスを崩して、私たちは頭から床に倒れ込む。咄嗟に受け身が取れない私は、衝撃が来るのを覚悟したが、ぶつかる直前で、ラウル様とクロードが受け止めてくれた。
「そいつと離れられるか?」
「……無理です」
ラウル様に逆らうわけではないが、ユルにしっかり抱きつかれているため、自力で脱出するのは難しい。彼は、かなり痛みがあるようで、尋常ではない苦しみ方をしている。かわいそうで、とても見ていられない。
「かっ、体がっ! 骨がっ、砕けるっ!」
「これは、呪いの副作用? それとも、解呪された場合の罠が仕掛けられていたのか?」
レオンが顔を青くして分析し、クロードもユルが心配でたまらない様子だ。
「レオン、ユル様の呪いは消えたのか?」
「ええ、問題のないレベルです。なぜ苦痛に襲われるのか、僕には分かりません」
「アリス殿。今、こいつの手を外す」
「……ダメだ」
えっ、誰!?
荒い息とともに耳元で聞こえたそれは、ユルの声ではなかった。驚く間も無く、再び彼が苦しみ出す。
「くっ! うああああ!」
見るに見かねたラウル様は、私からユルを剥がそうとして、なぜか、その手を止めた。
「体が変化している、のか?」
狼狽したユルが体を硬直させる。正直に話すと怒られそうだから、このピンチを乗り切るための詭弁を探そう。
私は目を閉じ、優しいお嬢様が言いそうな文言を、頭の中にある用語集から引っ張り出した。
「えーと。僭越ながら、あなたへの抱擁を、お母さまの代わりにさせていただけますか? せめて、今だけでも、嫌なことはお忘れください」
主に、私のしでかしたことを記憶から消して!
その時、ヒュッと空気が動くのを感じた。目を開けると、二人の闇がするすると交わり合い、ものすごい勢いで霧散していく。それに伴って、下から吹き上げるような風が生まれ、服や髪を揺らす。
すごい。
禍を転じて福となすとは、こんな感じだろうか。理由は分からないが、昇華するスピードが速い。解呪が進んでいくうちに体調が良くなり、心も晴れやかになるのを感じた。
頭がふわふわする。
どれだけ負荷がかかっていたのか、今なら分かる。若くて体力のある私でもキツイのだから、中年のユルには負担が大きかっただろう。気の毒にと、心から同情する。
「こんな重荷を背負って、あなたは生きていたのですか」
ため息とともに、本音がこぼれ落ちた。
「……分かるのか?」
「はい。同じような呪いをかけられていたそうですよ、私たち。ふふふ、おかしな仲間ですね」
「はは、俺以外にもいたのか。だが、……っ!」
「ユルさん?」
様子がおかしい。
呪いを解いたら終わりではないのか。
「ぐっ! あっ!」
ユルが悶えた拍子にバランスを崩して、私たちは頭から床に倒れ込む。咄嗟に受け身が取れない私は、衝撃が来るのを覚悟したが、ぶつかる直前で、ラウル様とクロードが受け止めてくれた。
「そいつと離れられるか?」
「……無理です」
ラウル様に逆らうわけではないが、ユルにしっかり抱きつかれているため、自力で脱出するのは難しい。彼は、かなり痛みがあるようで、尋常ではない苦しみ方をしている。かわいそうで、とても見ていられない。
「かっ、体がっ! 骨がっ、砕けるっ!」
「これは、呪いの副作用? それとも、解呪された場合の罠が仕掛けられていたのか?」
レオンが顔を青くして分析し、クロードもユルが心配でたまらない様子だ。
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「ええ、問題のないレベルです。なぜ苦痛に襲われるのか、僕には分かりません」
「アリス殿。今、こいつの手を外す」
「……ダメだ」
えっ、誰!?
荒い息とともに耳元で聞こえたそれは、ユルの声ではなかった。驚く間も無く、再び彼が苦しみ出す。
「くっ! うああああ!」
見るに見かねたラウル様は、私からユルを剥がそうとして、なぜか、その手を止めた。
「体が変化している、のか?」
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