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41 生まれた家

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 大会参加者であったみなさまは帰途につき、街は落ち着きを取り戻しつつある。しかし、まだ私には、やるべき事が残っていた。目の前にいる、怒れるおじさんと話をつけなければならないのだ。

 立ち上がり、ハゥラスを見つめる。

 街での逮捕劇の黒幕だと彼は暴露しているし、騎士団と自警団が周りを固めているのだから、逃げられるわけがない。

 ならば、少しでも平和的に終われないだろうか。彼が不信感を抱くのは当然だが、ラウル様たちなら、人道的に扱ってくれるはずだ。無駄な抵抗をして、余計な苦しみや痛みを味わうことはない。

「投降してはいかがですか?」

 彼は、侮蔑の眼を向ける。

「はっ! 捕まったら殺されると分かっていて、従うバカはおるまい。これだから、お嬢さん育ちは困る」

 何を言う。ハゥラスがどんな人生を歩んできたか知らないが、お嬢様には、お嬢様の苦労があるのだ。

「……あなたの仰る通りです。しかし、出自というものは、本人の努力ではどうにもなりません。……あなたも、そうではありませんか? 生まれた家は選べませんもの」

「な、何を小癪な! 分かったような口を聞くな!」

 図星を突かれたのか、彼は顔を真っ赤にして怒鳴り声をあげる。彼の心に寄り添おうとしたが、私は失敗したらしい。

「アリス殿を愚弄するな。彼女の優しさが、お前には分からないのか」

 ラウル様の言葉に、ハゥラスは何かを思い出し、狂気を帯びた高笑いを轟かせた。

「ははははは! そうか、お前は『剣の魔人』の子孫だったな! 自ら殺されに来るとは、愚かな娘だ! 先祖の犯した罪は、お前が償え!」

 なぜに。

 生まれた家の業を背負わされ、すでにいっぱいいっぱいなのに、これ以上、私の仕事を増やしてくれるな。
 
 それと、ご先祖様の行った所業の数々は、本人の死をもって不問にしてくれないだろうか。数多のご先祖様がなさった事を全て押し付けられたら、私は生まれただけで大罪人になってしまうではないか。

 ふと、彼の発言に激しい違和感を覚えた。この国の人は、ギルツ家の英雄を『剣の魔人』と呼ぶことは、絶対にない。おそらく、ハゥラスは外国人だ。

「あなた、どこの国から来たの?」

 ハゥラスは、ニタリと笑うと、魔力を一点に集中させ、強制的に圧縮し始めた。その膨大な魔力は圧巻で、私でも何をしているか分かる。

 「キィーン」という耳鳴りのような音とともに、周囲の空気が歪んでいくのを感じた。その場の全員が彼の思惑を察し、信じられないと目を合わせた刹那、ラウル様が叫んだ。

「退避ーっ!」
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