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35 回想・クロード②(ラウル視点)
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大会が始まって一週間が過ぎた。ここでの暮らしにも慣れて、充実した毎日を過ごしている。
「なんだか、学校みたいなところだな」
「そうなのか? 俺は学校に通ったことはないけど、こんな感じなんだな。自分の知らなかったことを沢山教えてくれて、すごく楽しいよ。仲間とワイワイやるのも面白いしな」
クロードが目を輝かせて話す。
彼は、頭の回転が早くて、理解する能力も高い。学校へ通っていたら、優等生として進学もできただろう。孤児という生まれによって、彼の才能が埋もれないように願うばかりだ。
「今までは生きることに必死だったけど、家に帰ってからも勉強を続けるよ。みんなとも、たまには会いたいな」
これでお別れみたいに言う、彼が切ない。「次の大会にも出るんだろう」と発破をかけると、自分のレベルでは無理だと笑う。そんなことはないと言ってやりたかったが、俺にはできなかった。
クロードの頑張りは、目を見張るものがあったが、全てにおいて初体験で、みんなのレベルまで追い付くのは難しいように思われたからだ。
「でも、これからアリス様のお話が聞けるだろう? どんな方なのか、すごく楽しみなんだ」
今日は、お父上によるアリス様の講演がある。家族から見た彼女は、どんな姿なのだろう。とても興味深い。ワクワクが止まらないクロードと、講堂へ向かった。
*~*~*~*~
「それでは、みなさんの健闘を祈ります!」
お父上のお話が終わると、クロードは大興奮だった。講堂の中も熱気がすごい。
「なあ、あの絵姿は本当なのか? 可愛すぎるだろう! まるで天使だぞ」
「ああ、本当だ。彼女は、とんでもなく可愛い」
絵師は、よくぞあそこまで忠実に再現したものだと、感心するほどの出来栄えだった。愛らしい彼女の姿に、参加者の士気は上がった。
「たおやかで、物静か、控えめで、心優しくて、大人しい性格なんだろう? それなのに、芯はしっかりしているなんて、理想の姫君だな!」
「……お優しいのと、芯がしっかりしているのは間違いないが、その他は、俺の記憶と多少ズレがある。しかし、お父上が仰るならば、そうだろう」
ハキハキしていて、ものおじせずにお話しされたし、人見知りもない快活な少女だったが、家では違うのだろうか。
「お部屋にいることが多くて、ご趣味は読書と手芸、詩の朗読かあ。街で買い食いなんてしたことないんだろうな~」
「……夢を壊してすまないが、買い食いには慣れておいでだ。街歩きもされていたから、それなりに行動範囲は広い気もする。だが、お父上が仰るならば、きっとそうだろう」
貴族のご令嬢だから、室内でできる趣味も嗜まれるだろうが、どちらかというと、好奇心旺盛で、外へ飛び出して行くタイプに見えた。違うのだろうか。
「俺は、最終審査まで残るぞ! 一緒に頑張ろうな!」
やる気に満ち溢れ、目標を引き上げたクロードは、それから、恐るべきスピードで全ての物事を吸収していき、見事、二回戦を勝ち抜いた。
「ラウル、今度は三回戦で会おうな!」
「ああ、楽しみにしている」
笑顔で手を振って別れてから、半年後。
三回戦の合宿当日、彼は、会場に現れなかった。
「なんだか、学校みたいなところだな」
「そうなのか? 俺は学校に通ったことはないけど、こんな感じなんだな。自分の知らなかったことを沢山教えてくれて、すごく楽しいよ。仲間とワイワイやるのも面白いしな」
クロードが目を輝かせて話す。
彼は、頭の回転が早くて、理解する能力も高い。学校へ通っていたら、優等生として進学もできただろう。孤児という生まれによって、彼の才能が埋もれないように願うばかりだ。
「今までは生きることに必死だったけど、家に帰ってからも勉強を続けるよ。みんなとも、たまには会いたいな」
これでお別れみたいに言う、彼が切ない。「次の大会にも出るんだろう」と発破をかけると、自分のレベルでは無理だと笑う。そんなことはないと言ってやりたかったが、俺にはできなかった。
クロードの頑張りは、目を見張るものがあったが、全てにおいて初体験で、みんなのレベルまで追い付くのは難しいように思われたからだ。
「でも、これからアリス様のお話が聞けるだろう? どんな方なのか、すごく楽しみなんだ」
今日は、お父上によるアリス様の講演がある。家族から見た彼女は、どんな姿なのだろう。とても興味深い。ワクワクが止まらないクロードと、講堂へ向かった。
*~*~*~*~
「それでは、みなさんの健闘を祈ります!」
お父上のお話が終わると、クロードは大興奮だった。講堂の中も熱気がすごい。
「なあ、あの絵姿は本当なのか? 可愛すぎるだろう! まるで天使だぞ」
「ああ、本当だ。彼女は、とんでもなく可愛い」
絵師は、よくぞあそこまで忠実に再現したものだと、感心するほどの出来栄えだった。愛らしい彼女の姿に、参加者の士気は上がった。
「たおやかで、物静か、控えめで、心優しくて、大人しい性格なんだろう? それなのに、芯はしっかりしているなんて、理想の姫君だな!」
「……お優しいのと、芯がしっかりしているのは間違いないが、その他は、俺の記憶と多少ズレがある。しかし、お父上が仰るならば、そうだろう」
ハキハキしていて、ものおじせずにお話しされたし、人見知りもない快活な少女だったが、家では違うのだろうか。
「お部屋にいることが多くて、ご趣味は読書と手芸、詩の朗読かあ。街で買い食いなんてしたことないんだろうな~」
「……夢を壊してすまないが、買い食いには慣れておいでだ。街歩きもされていたから、それなりに行動範囲は広い気もする。だが、お父上が仰るならば、きっとそうだろう」
貴族のご令嬢だから、室内でできる趣味も嗜まれるだろうが、どちらかというと、好奇心旺盛で、外へ飛び出して行くタイプに見えた。違うのだろうか。
「俺は、最終審査まで残るぞ! 一緒に頑張ろうな!」
やる気に満ち溢れ、目標を引き上げたクロードは、それから、恐るべきスピードで全ての物事を吸収していき、見事、二回戦を勝ち抜いた。
「ラウル、今度は三回戦で会おうな!」
「ああ、楽しみにしている」
笑顔で手を振って別れてから、半年後。
三回戦の合宿当日、彼は、会場に現れなかった。
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